ドイツ13生産地域の心臓部 ナーへ、ラインヘッセン、ラインガウの旅

  日本から飛んでドイツでワイナリー巡りをする際、多くの場合はフランクフルト空港ゲートウェイとなる。日本からの直行便が多く、ワインの生産地域へのアクセスも良い。フランクフルトから最も近いのがラインガウ。東端のフレアスハイムまで空港から車なら20分、電車とバスでも行ける。ライン川を挟んで南側に隣接するのがラインヘッセン、その西に隣接するのがナーエ。ラインガウ側からはフェリーに乗ってエストリッヒ・ヴィンケルから渡れば赤ワインの名産地インゲルハイムに、リューデスハイムからならナーエ川がライン川に注ぎ込む河口の町ビンゲンに着く。アウトバーンを飛ばして行けば早いのだが、ライン川の両岸沿いには名所史跡・銘醸が立ち並び、鉄道も通っているから、時間があればゆるりと電車とバスの旅も良い。 (Text&photo by 近藤さをり)

 

■ナーエ Nahe

ライン川支流のナーエ川沿いにある地域。栽培面積は4,205haで13地域中7番目。栽培ブドウの白ワイン品種の比率は75.6%と、ドイツ全国平均の65.9%よりやや高い。品種別ではリースリング28.6%、ミュラー・トゥルガウ12.8%、ドルンフェルダー10.2%、グラウブルグンダー7.2%、ヴァイスブルグンダー6.7%、シュペートブルグンダー6.6%、ジルヴァーナー5.4%。

ドイツで最も生物多様性を持つ土壌を持つ生産地域で、180種類以上の異なる土壌があるため、歩くと何メートルかごとに土壌が変わる。ドイツワインのショウケースとも言える地域だ。

 

■ジンス Sinß

ヨハネスは31歳。若い醸造家たちで構成されるジェネレーション・リースリング*1の一員だ。父の代で名前は一度変わっているが、1791年より続く家族経営のワイナリー。地元ナーエとファルツの他、ソノマのウィリアムズ・セリエムやマールボロのワイラウ・リヴァーでもワインづくりの研鑽を積んだ。

認証はまだ取得していないが、2016年よりオーガニックに転換。この辺りの作付面積はシュペートブルグンダー65%、リースリング35%だが、ジンスもこの2品種が主力。スレート土壌の比率がより高いモーゼルと比べると、シャイで特徴が出るまでに時間を要するから、とシュペートブルグンダーは2015 年のバックヴィンテージを紹介した。

ヴィンデスハイムは10~15%全房発酵することで、クリーンなタンニン、ニュートラルなストラクチャーに。ローゼンベルクは、よりインテンス。1960~70年代にガイゼンハイムで開発された小ぶりの房のリッタークローンが主流。ブルゴーニュのマサールセレクションから、より房が大きく果粒の多い、pH値が少し高くて早めに生育する新しいクローンも導入。90~96エクスレ程度で収穫し、繰り返しブドウの味を見ながら、ナーエの赤色土壌と品種の相性のポテンシャルをいかに引き出すかに取り組んでいる。

*1: ドイツワイン生産地域の35歳以下の若手生産者に国内外の活躍の舞台を提供することを目的として、DWIが2006年に立ち上げた団体。現在580名だが、ワイナリーではなく個人による加盟で、35歳に達すると退会案内が届くため会員数は変動する。

 

■ラインヘッセン Rheinhessen

総栽培面積26,628haとドイツ最大のワイン生産地。栽培ブドウの白ワイン品種の比率は70.6%。品種別ではリースリング17.0%、ミュラー・トゥルガウ16.4%、ドルンフェルダー12.7%、ジルヴァーナー8.6%、グラウブルグンダー6.3%、シュペートブルグンダー5.5%、ヴァイスブルグンダー4.7%、ポルトギーサー4.5%、ケルナー3.1%。世界最大のジルヴァーナーの産地でもある。

大量生産の安価なワインばかりであるかのように言われてきたが、ゴー・ミヨのワインガイドなどで高い評価を獲得し続けるワイナリーが複数出て来るようになってからは、リーズナブルからプレミアムまですべてが揃う地域と認められるようになっている。

 

■ヴァーゼム Wasem

オーバー・インゲルハイムは、ライン川の船着場から南に6kmほど入ったところ。小高い丘にある教会の下に中世の建造物が点在する可愛らしい田舎町だ。温度の上がりやすい

砂岩土壌と夜間の保湿性の高さがブドウの色付きを助け、赤ワインの生産地として知られる。

多くのワイナリーが中心部にある中、ヴァーゼムは1726年の創立以来、丘を下りて行った南外れ、エンゲルタール修道院跡地にある。谷間に位置するため、微小気候と土壌の違いから、白ワイン各種のラインナップも充実。しかし、メインのフォーカスはピノ系赤品種。特にフリューブルグンダーは3代目のユリウス・ヴァーゼムが1964年にこの品種の保存に貢献したことからも重要性が高い品種だ。

ゾンネンハング・シュペートブルグンダーはアロマティックで余韻が長く、ホルン・フリューブルグンダーは90エクスレの厚みを感じさせるまろやかな果実味。

4代目のホルガ―とブルクハルト兄弟の管理の下、彼らの妻たちがレストランとホテルを、その息子ユリウスとフィリップが5代目を継ぐべくワイナリーの実務担当と、家族内での多角経営を行っている。ホテルはこの田舎町にありながらモダンで機能的、料理も舌の肥えた日本人が美味しいと思える水準で、ワインツーリズムを楽しむには打ってつけのアコモだ。(以下略)

つづきはWANDS 2018年5月号をご覧下さい。
ウォンズのご購入・ご購読はこちらから
紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る