年初に発表された総合酒類企業のワイン事業方針をみると、いずれの企業も2019年のワイン総需要を「前年並」と控えめに見ている。
その最大の理由は、今年10月に消費税増税が予定されていることだ。増税が景気や株価に悪影響を及ぼすのは、これまでの経験則から確実なので、ワイン販売も間違いなくその影響を受ける。だからこれは、10月増税以前にある程度の貯金をつくっておいて、それを増税後のマイナス分に充て、通年で均すと販売量は前年並になる、という読みだろう。
その10月以前にワイン需要が増える要素は幾つか考えられる。
ひとつはすでに2月1日に発効した日欧EPAである。これでEU産ワインの関税が撤廃され、それが販売価格に反映されて安くなり、EU産ワインの販売が活性化するという見立てである。実際、関税撤廃でワインはいくら安くなるのか。関税額はスティルワイン1本(750ml)あたりで最大93.75円である。低価格ワインに及ぼす効果は大きいが、CIF価格約625円以上のワインは一律93.75円の減税なので高額ワインへの効果は小さい。
EUワイン関税撤廃から2か月が過ぎた。
1月のEUワイン輸入量は当然ながら大きく減少したが、2月は前年同月比約40%増(スパークリングワインは60%増)を記録した。量販店の店頭価格は平均約10%安くなっている。2月1日にいち早くEUワインの値下げを実施したサントリーは、
「3月後半時点のPOSデータをみると、欧州ワインは600円前後(の価格帯)も1000円前後も(販売量が)前年を上回っている。関税撤廃の市場への影響は、爆発的ではないが芽はあると感じていて、およそ想定どおり」と言っている。
大方のインポーターは、3月1日の値下げ実施なので、3月末時点でまだ顕著な効果は見えないという。さらにニューワールドワイン(チリ、オーストラリア、カリフォルニア)主体の商品構成をもつインポーターの場合は、EUワイン増加のあおりを受けて販売量がやや減少している。また、この関税撤廃は量販店で販売する低価格ワインに効果は大きいが、業務用市場に及ぼす効果は極めて限定的である。
ただ、スパークリングワインの減税額は1本136.50円なので、撤廃効果はスティルワインよりずっと大きい。実際、1月31日からスパークリングワインの店頭価格を200円値下げしたやまやの売上げは、大幅に増加したという。
つづきはWANDS 2019年4月号をご覧ください。
4月号は「日本のワイン市場を読む、拡がるウイスキー市場」特集です。
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