地理的表示「山梨」ワイン シンポジウム2019

ワインについての初めての地理的表示「山梨」(GI Yamanashi) が2013年7月16日に誕生してから今年で足掛け7年目を迎える。このほどワイン愛好家やワイン産業に従事する人々300名を対象に、“地理的表示「山梨」ワイン シンポジウム2019”が開催された。

主催者である東京国税局の藤城眞国税局長は、「2017年6月には、地理的表示の生産基準の見直し(厳格化)も行われ、消費者にとってはより適正な商品選択に資する存在となりつつある。近年、海外での日本ワインの受賞は増えているものの、まだ十分にブランディングに結びついているとは言えない。こうした中、今年2月の日欧EPA発効に伴い、GI 山梨がEUでも保護されることになった。日本ワインへの関心の高まりのなかで、GI山梨をさらにアピールする必要がある」との認識を示した。

当日はシンポジウムを前に、明治学院大学法学部・グローバル法学科教授の蛯原健介氏が“『地理的表示』ワインは、ここが違う”と題して基調講演を行った。

蛯原教授は、①日本には「ワイン法」がない?、② GIは何の略か、③ GIワインは全部「日本ワイン」か、④ GIワインと地名表示ワインは同じか、⑤ GIワインは「山梨」だけか、⑥山梨県産ワインは全部GIワイン?、⑦(GI認定にあたり)認められた品種を使えばOKか?、⑧GIのメリットとは、などの設問にしたがってGI山梨の規定の概要と意義をかみ砕いて説明。

その上で、今後の方向性と課題について、① EUではAOP/IGP など生産量の約65%がGI 認定されているが、日本ではGIをもつ山梨と北海道を合わせても日本ワイン全体の47.9%にとどまっている。②清酒の場合、GIは日本酒(全国)、山形(県)、白山(市)、灘五郷(市・区)と重層的に広がりをみせている。しかし、ワインの場合、GI Yamanashiでは「山梨」は保護されているが、「勝沼」「鳥居平」などの地名は保護されていない。いず

れ、市町村名、字名なども保護が必要だろう、と指摘。さらに、「現状で品質要件をもたない(国産ブドウ100%で造られる)“日本ワイン”の品質向上、ブランド強化のためにはいずれGI『日本ワイン』を認定していくことが可能かつ必要だろう。また、日本ワインの海外進出とともに、海外市場での保護の推進や、OIVへの正式加盟により日本がワインの国際基準づくりに積極的に関与することが求められている」と、問題提起した。

 

この日の第2部は「山梨ワインを語るパネルディスカッション」。造り手を代表して出席した安蔵正子(丸藤葡萄酒工業・栽培醸造家)、野沢たかひこ(くらんぼんワイン代表取締役社長)の両氏に加え、小笠原結花(Koshu of Japan プロデューサー)、河合香織(ノンフィクション作家、「ウスケボーイズ」著者)、信国武洋(フォーシーズ エグゼクティヴディレクター)、稲垣敬子(ヴィノテーク編集長)、基調講演をおこなった蛯原健介の7氏がパネリストとして登壇。モデレーターを務めた後藤奈美酒類総合研究所理事長の進行により、故浅井宇介氏が指し示した日本におけるワイン造りの方向性やワイン造りの現状、日本ワインにたいする海外の関心やサービスのあり方などについて語り合った。

 

続きはWANDS 2019年5月号をご覧ください。

5月号は「カクテル」「イタリアワイン」特集です。
ウォンズのご購読・ご購入はこちらから
紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る