オリヴィエ・フンブレヒトに聞く ビオディナミが今後さらに重要性を増す理由

オリヴィエ・フンブレヒトは、1620年まで歴史を遡れるツィント・フンブレヒトの12代目当主で、MWでもあり、アルザスのグラン・クリュ委員会の会長も務めている。2年ぶりに来日したオリヴィエに、ビオディナミについてインタビューした。これまで複数のビオディナミ実践者に、ワインの香味にどのような影響を及ぼすと感じているか? と質問したことがある。大半の人は答えなかった。数人は、酸が高く保ててpHが低くなり味わいのバランスがよくなった、というが、その理由については誰も言及しなかった。オリヴィエは、実に明快で情熱的に語ってくれた。

話を聞いて、フンブレヒトのワインがどれもバランスが秀逸なことに納得し、温暖化が危惧される今後ますますビオディナミに注目が集まるのではないかと感じられた。試飲セミナーの様子も併せてお伝えする。

図を描きながらビオディナミについて解説

 

ビオディナミはなぜ酸を高く保てるのか

ブドウは、日照と水により光合成を行い、ヴェレゾンの後から果実の糖分が増していく。そして、土中の水分が多かったり暑かったりすると酸はすぐに落ちる。まず、8月初旬のヴェレゾンの時期にどのぐらい酸があるか、酒石酸とリンゴ酸の比率が重要だ。果実の成熟により消えていくのはリンゴ酸だけだから。

ビオディナミで育つブドウは、生理的により早く成熟する。だから、酸が高い時点で収穫できるとも言えるが、それだけではない。

(中略)

1990年の初めに堆肥を使いたいと思ったことから、ビオディナミに進んだ。ビオディナミは、ひとつの農業システムで、人間が栽培している作物をよりよくするためにある。よい環境を整えば、人が作物を守る必要がなくなるが、そこに至るまでには、畑だけでなく周囲の環境も含めて、植物、動物、人の習性を理解しなければならない。よく観察すること。これが重要。公式にあてはめて四角四面にしか考えない数学者にはビオディナミはできない。アーティストのように右脳をフルに使えば、より理解しやすいだろう。

 

<試飲セミナー>

アルザスにアロマティック品種が多い理由は、特別な立地と気候条件があるからだ。とても寒いが、西からの悪天候をヴォージュ山脈が遮り、半大陸性気候で寒暖の差が大きくドライ。収穫期のインディアンサマーも特徴的で、成長期を長く保てるためアロマティック及びセミ・アロマティック品種に大いに恵みがもたらされる。ここ15年間、コルマールがフランスで最も降雨量が少ない場所だ。6、7、8月がアルザスで最も雨が降る時期で、短期間ではあるが一度に多量に降り雷も伴う。これは、私たちにとって恵みの雨である。

多様性に富んだ地理や土壌も大変重要で、土壌は大きく分けると3種類。

(中略)

Pinot Gris Rangen de Thann Clos Saint Urbain Grand Cru 2016

「火山性土壌でミネラルが豊かな花崗岩。アルザス南部の標高が高く南向きの急斜面の畑。ランゲンは20haあり、このクロは5.5haのモノポール。2016年は遅めに収穫したが、ボトリティスがつく前に行った。パワフルで、スモーキーで、ソルティー、そしてフリンティ。ローテンベルグの柑橘類のフレッシュさとは反対。ゆっくりと行う圧搾により、果皮に由来するタンニンも感じるだろう。白ワインにおいてもタンニンはとても重要だと考えている。ストラクチャーを形成し、寿命を長くするからだ。2016は成熟が遅く、エレガントでドライなワインが多く、これは典型的。リースリングはよりデリケイトな料理と合わせるが、ピノ・グリは家禽類や鴨、豚、仔牛とよく合う」。力強く華やかな香りで、蜂蜜、熟した桃、柑橘、金柑など。粘性あるが酸もとてもフレッシュ。深みがあり、ほんのり苦味や収斂性も。グリップがある。 (Y. Nagoshi)

輸入元:日本リカー株式会社

 

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