世界をめぐる樽

各酒類間での樽循環で新商品が続々誕生 飲み手側もボーダレス化し活性化へ

 酒の貯蔵・熟成がアンフォラから樽に移ってから1500年以上経過し、ワイン産地は旧世界から新世界へと広がり、蒸留酒の世界も拡大した。どの酒にどの樽が合うかある程度確立されてきていたが、近年は酒類間のボーダレス化が進んでいる。

 

樽が世界をめぐるとは?

米国から始まった樽の2次利用

樽がワインやビールの貯蔵に使われ始めたのはローマ時代の3世紀頃からだと言われている。それまで古代エジプトから数千年の間、ワインの貯蔵と輸送には粘土のアンフォラが使用されていた。主にメソポタミア文明ではヤシの木の樽を使う文化があったそうだが、ヤシの木は曲げにくかったためアンフォラの代わりにはならなかった。地中海を離れヨーロッパを北上していくローマ人にとっていよいよアンフォラでの輸送が困難になってきた時、オーク樽を使ってビールを貯蔵しているガリア人に出会った。ヨーロッパの森林に豊かに茂るオークの木は、曲げやすく素早く樽に加工できる上、防水性にも優れた保存媒体として最適だった。ローマ人のアンフォラから木製樽への移行は迅速だった。その後2世紀経たずして、数千万のアンフォラが廃棄されたという。

 

ワインや蒸留酒の熟成に有益だと考えられているオークは3種類ある。

(中略)

樽のバリエーションや熟成によって新しいスタイルのワインやスピリッツが生まれている。いくつか例を挙げるが、トレンドとして広まるにはその酒に絡む法律の進化も必要だ。

  • :アメリカから始まる熟成樽の自由な選択

ここ数年、ワイン雑誌の見出しによく登場するようになった「バーボン樽熟成ワイン」。先陣を切ったのは2011年からコンチャ・イ・トロ社が所有するカリフォルニアのFetzer Vineyardsだ。2014年にリリースを始めた「1000 Stories Zinfandel Bourbon Barrel Aged」は、初年度5,000ケースの出荷から2018年には15万ケースに急増した。(中略)

フレンチオークの小樽醸造をいち早くカリフォルニアに取り入れたロバート・モンダヴィも、2015年から「ロバート・モンダヴィ プライベート・セレクション バーボン・バレルエイジド」をリリース。さらにカリビアンラム樽熟成や、ライ・ウイスキー樽熟成のワインも登場した。米国のワイン法は当初ワイン生産者に、スピリッツ樽の使用をラベルに書くことを禁止していたが、先駆けてバーボン樽熟成がトレンドとなっていたクラフトビールの動きにより規則のラインがぼやけ、ラベル表記の承認が降りるようになった。

  • :焼酎の長期熟成と酒税法の柵

(中略)

  • :スコッチウイスキーの新・熟成ルール

(中略)

 

カテゴリーを超えた樽使用をした新製品の一部。酒類間での樽循環で新商品が続々と誕生するとともに、飲み手もそれまで飲み慣れていたカテゴリーから新カテゴリーへと手を伸ばす機会が増え、飲み手側のボーダレス化も起こっている。(Rie Matsuki)

中略部分やつづきはウォンズ2019年2月号をご覧ください。
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