既成概念にとらわれない柔軟さが生んだコラボレーション シーバスリーガル×満寿泉

スコッチウイスキー樽熟成 純米大吟醸酒「リンク 8888」

 

数々の革新的な銘柄を創出する「満寿泉」ブランドで知られる桝田酒造店の桝田隆一郎 5代目蔵元に、昨年12月より正式に発売開始された「リンク 8888」の開発経緯について聞いた。

 

フレンドシップ&クラフトマンシップ

富山の東岩瀬町にある桝田酒造店から海のかなた8,888kmに、スコットランドのキースがある。そこには、ブレンデッドスコッチウイスキー「シーバスリーガル」が蒸留所を構えている。この2社の出会いに一役買ったのは、日本酒のプロモーターとしても知られる中田英寿。シーバスリーガルが主催するビジネスアワードを2017年に受賞したことがきっかけとなった。

桝田酒造店は長年ワイン樽熟成、ワイン酵母発酵、シャンパーニュ酵母発酵、多麹仕込み、マルチ・ヴィンテージ・キュヴェなど様々な試みを行ってきている。銘柄数の多い蔵だ。シーバスリーガルからのアイデアにも賛同し、とんとん拍子で話が進んだ。スコットランドへマスターブレンダーのコリン・スコットを訪ねた時も「昔からの友人のような親しみを覚えた」と、すぐに意気投合したという。両者が内包する職人魂の感覚が似ていたのだろう。友情と熟練の技の融合で「リンク 8888」チームが結成された。

ブレンドの妙と樽の影響

シーバスリーガルは世界中で愛飲されるブレンデッドスコッチウイスキーだ。毎年のモルトウィスキーの出来が異なることから、数多くの異なる個性をブレンドすることで、より美味しく親しみやすいハウススタイルを提供することが可能となった。今回の「リンク 8888」にも、その手法を取り入れることにした。

寒仕込みが終わる頃、スコットランドから複数の樽が到着する。原酒や熟成年数が異なるアメリカンオーク樽だ。性質が異なる樽で、米や酵母などが違う「リンク8888」のために仕込んだ特別な純米大吟醸を、半年ほど寝かせる。そして、4名のテイスティング・パネルがブレンドと試飲を重ねる。名文化されたものはないが、自然と同じ方向へ導かれ意見が重なったところがゴール。「ザ・ウイスキーであり、ザ・日本酒でもある」。面白いことに両方の特徴を半分ずつ持ち合わせているという。

オーク樽熟成の特徴のひとつは「ブレンドした後、火入れして半年ほど置いておくと樽の香りが上がってくる」こと。また、ワイン樽は1、2年だけワインに使用したものだからオーキーさが残っているが、バーボンもスコッチも熟成した後の樽にはオーキーさは皆無だが「蒸留酒の力」を感じるという。加えて、2018年末に披露した試作品を最近試飲すると「驚くほど若さを感じた」という。瓶詰め後の、熟成のゆくえも気になるところだ。 (Y. Nagoshi)

 

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