全房発酵と低温浸漬によりアロマの抽出に意を払うドメーヌ・シャンソン

1750年創業のシャンソンはボーヌに本拠を置く老舗のメゾンのなかでも最古の一つだが、1999年にシャンパーニュ・ボランジェの傘下に入って以降、栽培・醸造面での革新が進み、昔日の名声を取り戻しつつある。

自社所有畑は延べ43ha。ペルナン・ヴェルジュレスからサントネまでまたがっているが、ほとんどボーヌ1級畑に集中し、全生産量の25%を賄っている。残りのネゴスワインは、その85%がブドウや果汁を買い付けて自ら醸造を行っているのが特長だ。また、自社畑では2009年から全て有機農法を実践している。

「醸造面におけるシャンソンの特長は二つ。赤では75~100%の割合で全房発酵を行い、長期の発酵前低温浸漬を行っていることだ」と、ジェネラル・ディレクターのヴァンサン・アグネル氏。

除梗機が開発される前、1950年代以前のブルゴーニュではほとんど全てのドメーヌが除梗・破砕をしないで醸造を行ってきたが、いまでも全房で仕込んでいるのはトップドメーヌではDRCやルロワ、デュジャック、ランブレなど数えるほどしかいない。除梗をすれば梗が熟していなくとも収穫し発酵を行うことができるし、タンクの容量が30%は節約できる。一方、全房を行うためには、梗が熟すまで通常より1週間収穫を遅らせる忍耐が必要だし、タンクも数が要る。ルモンタージュのポンプも使えないので、重力を使い上から移動させる設備も必要だ。そして、当然、ブドウはすべて手摘されなければならない。手間もコストもかかる作業だが、あえて梗を残して発酵させる狙いの一つは、香りの複雑性。ワインに出てくる花の香りやスパイシーさは梗の中から生み出されている。また、ポリフェノールがもたらすテクスチャーの滑らかさや凝縮感なども梗がもつ自然のタンニンから得られるものだ。さらに、梗の中にはわずかに水分が残っているので、これを入れることでアルコール度数が平均で1.5%ほど下がり、フレッシュかつ円やかで飲みやすいワインに仕上げることができる。

白ワインの場合も梗がついた房を丸ごといれて3時間かけて圧搾している。梗があることで圧搾が均一かつスムーズに進み、青臭い香りが出にくくなるのだという。

シャンソンでは、一般的には3日間ほどしかかけない発酵前低温浸漬を8~10日もかけて行っている。

「発酵前低温浸漬はシャンソン以外のドメーヌもやっていることだが、全房と組み合わせて行っているのはシャンソンだけ。これは自然酵母を使った発酵と関係している。アルコール発酵に関与しているのは主にカーヴ由来のサッカロミセス・セレヴィシエだが、畑由来の酵母はカーヴ由来のものとは異なる酵素を持っており、醸しに時間をかけることによってこの酵素が徐々にブドウの細胞を分解し、香りの前駆体を取り出すことができる」からだという。(M. Yoshino)

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トップ画像:ヴァンサン・アグネル氏。ションソンの前はフェヴレやブシャールにも在籍していたという、ブルゴーニュワインのエキスパートだ。

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