「ラ・ランコントル」世界初 山梨&ボルドーのコラボレーション/中央葡萄酒の三澤彩奈&チボー・デスパーニュ

収穫が始まった畑を案内してくれた、チボー・デスパーニュ

今年9月末に訪問した際、収穫が始まった畑を案内してくれた、チボー・デスパーニュ

2014年の3月初旬に、面白い会に参加した。ボルドーのシャトー・トゥール・ド・ミランボーやシャトー・モンペラを造るチボー・デスパーニュの最高峰「ジロラット」と、ボルドー格付けシャトーなど、2001年の10アイテムをブラインド・テイスティングする、というものだった。ちょうどその試飲会の前に、チボー・デスパーニュは山梨へ行っていたという。近い将来、中央葡萄酒の三澤彩奈とのコレボレーションで、山梨とボルドーのワインをブレンドして特別な赤を造る、と聞いて驚いた。

 

そして、「ラ・ランコントル  La Rencontre」と名づけられたそのワインの一部は、今年2015年の11月20日に、ネパール大使公邸でのチャリティ・オークションにかけられる。どのようなワインなのか、2人にそれぞれ話を聞いた。

 

10月半ばに明野を訪問すると、ちょうどメルロの収穫が始まっていた。選果中の風景や、甲州の畑を案内してくれた三澤彩奈

10月半ばに明野を訪問すると、ちょうどメルロの収穫が始まっていた。選果中の風景や、甲州の畑を案内してくれた三澤彩奈

三澤彩奈は2005年に渡仏し、ボルドー大学ワイン醸造学部に通った。その際、ワインの輸入元に務める人物から、チボー・デスパーニュを紹介してもらい意気投合した。滞在中に何度かデスパーニュのワイナリーにも訪れていたという。彩奈が山梨に戻ってからも、2人の親交は続き、2009年に今度はチボーが来日し中央葡萄酒を訪問した。

2009年の醗酵が終了した赤ワインを樽から試飲しながら、明野のワインの出来にチボーは感激した。彩奈も、既に名前の通っているボルドーのワインメーカーから、メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンなどボルドー品種に讃辞をもらい、日本の造り手として誇り高い思いだった。

その時、「いつか一緒にワインを造れたらいいね」と、夢のようなアイデアが出た。

チボーは「僕たちはシャイだから、自分たちで言い出したわけではない」という。どうやら、その場にも居合わせた件の輸入元の人物がふと漏らした言葉が、その後に大きな実りをもたらす種になったようだ。

 

ただ、中央葡萄酒では何世代にも亘って日本固有の品種である甲州にこだわりをもってきた。彩奈にとっても、最も大切にしている葡萄品種だ。だから、はじめは山梨の甲州と、ボルドーのソーヴィニヨン・ブランかセミヨンとのブレンドも頭をよぎったという。検討はした。しかし、いくつもの甲州を試飲しながら、甲州は今まで通りに単一品種のままでいたほうがよいだろう、という結論に至った。

「ピノ・ノワールではないが、ブレンドすると他の品種の個性が、甲州の良さを隠してしまう可能性のほうが高いから」。

その結果、赤ワインを造ろうと決めた。

 

まず、山梨もボルドーも天候に恵まれた年を選んだ。「2010年、2011年は、日本にとってはそれほど素晴らしい年とはいえないので、2012年にすることにした」。

お互いに、複数のボトルサンプルを送り、それぞれに試飲して意見交換を繰り返し、ある程度のめどをつけた。

そして2014年の3月、チボーが再び来日し山梨を訪問し、更に試飲を重ねた結果、ブレンドの組み合せが決定されたのだ。

明野からは、渾身のキュヴェ三澤用のカベルネ・フランとプティ・ヴェルド。デスパーニュからは、メルロ。しかも、ジロラット用。どちらも、最高峰のキュヴェのためのひと樽を選んだ。

ちょうどカベルネ・フランとプティ・ヴェルドは、どちらも量が少ないため、既にブレンドして熟成中の樽がひとつあった。他にもカベルネ・ソーヴィニョンやメルロもあった。ボルドー側の選択肢としては、シャトー・モンペラ用のメルロもあった。しかし、両者が気に入った組み合せの中で、共通していたセレクションが「キュヴェ三澤のカベルネ・フラン&プティ・ヴェルド×ジロラットのメルロ」だった。

 

そしてまた1年が経過した。フランスから船便で送られてきた一樽225ℓのメルロと、明野の一樽がブレンドされた。そして5月下旬には、チボーが最終確認のために再来日。8月に瓶詰めが行われた。750mlボトル300本、マグナムボトル150本が完成した。

「まさか、こんなことになるとは思わなかった。本当に、友情の賜物」だと、彩奈も感無量だ。

特に販売については考えていなかったようだが、彩奈のたっての願いで、一部をネパール大地震へのチャリティーオークションにかけることにした。大学時代にネパールの小学生に日本文化を伝えるボランティア活動のため、1か月滞在したことがある。美しい自然があり、人がとても優しかったのが特に印象に残っているという。

 

ブレンドしたものを試飲して、2人ともとても満足した。

チボーの造るワインは、ピュアながら力強い。それに対して、彩奈のワインもまたピュアなのだが反対にエレガントだ。ボルドーの赤が、しかもデスパーニュの最高峰のメルロなのだから、清楚な明野の個性を隠してしまわないかと懸念するかもしれない。彩奈も「彼のワインは、男性的で革新的で、骨格もある」という。

しかし、ブレンドした結果「互いにないものを補完し合い」新しい姿に変わった。

「とてもいい経験ができた」と、満面の笑みをたたえていた。

 

チボー・デスパーニュは、ボルドーのアントル・ドゥー・メールに拠点を置いている。ボルドー全体からみれば、いわゆる格付けシャトーが偉大なワインとされ、彼らの地域は手頃な価格でいわば底辺を形成するワインの産地と認識されてきた。それを覆したのがチボーだ。アントル・ドゥー・メールにも優れたテロワールがあり、偉大なワインが生まれるのだと、世界のワイン界に知らしめた。

 

一方三澤彩奈は、かつて国際的にはワイン産地とは認められていなかった日本でワイン造りを継承した。甲州についても、海外ではほとんど知られていない葡萄品種だった。しかし、昨年イギリスのデキャンタ誌による権威あるワインのコンクール “Decanter World Wine Award (DWWA) 2014” で「キュヴェ三澤 明野甲州 2013」が日本ワインで初めてのゴールドメダル受賞の快挙を成し遂げ、一気に注目度をアップさせた。

 

どちらも、何世代にも亘る智恵と努力の蓄積を世に知らせたい、いつかは革新を起こしたい、という願いを背負ってきた、という点で共通している。生まれ育ったそれぞれの産地への誇りと愛情と、今できる限り高い品質のワインを造りたいという探究心が、この特別なワインを創り出したのにちがいない。

命名された「ラ・ランコントル」とは、「出会い」というフランス語だ。

(Y. Nagoshi)

追記:11月20日のチャリティ・オークションについては、追ってウォンズ12月号に掲載予定。

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