
ヒューゴ・カサノバ・ワインズは、マウレ・バレーに拠点を置いている。19世紀末、北イタリアからチリに移住したエリセオ・カサノバは、当初イタタ・バレーのバトゥーコとビューティフル・バレーにエステートを取得し、ワイン造りの夢実現のために歩み始めた。その後、息子のアルドが現在の拠点であるマウレ・バレーにエステートを購入。今でも所有する自社畑のプリシマがある場所だ。数年後、ドン・アルドの息子ヒューゴ・エリセオが継承し、新たな醸造技術を導入するなど改革し、海外への輸出も開始した。さらに、1999年にはドン・アルドの孫にあたるヒューゴ・アンドレスが加わり、ブティック・ワイナリーのコンセプトを打ち出した。
マウレ・バレーの85haの自社畑には、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カルメネール、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネが植えられている。植樹年は1956年、1976年、1989年、1997年で、古木も残っている。その他に、いくつかの栽培農家と長期契約を結んでおり、緊密な情報交換を行なっている(5つの畑と地図上の番号、栽培品種)。
プリシマ畑 Purisima マウレ・バレーでマウレ川近く(カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、カルメネール、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ)
- サン・クレメンテ畑 San Clemente マウレ・バレーでマウレ川近く (マルベック、シラー)
- メロザール畑 Melozal マウレ・バレー南部 マルベック、シラー
- サグラダ・ファミリア畑 Sagrada Famiia クリコ・バレー (マルベック、シラー)
- パレドネス畑 Paredones コルチャグア・バレー海に大変近い場所 (ソーヴィニヨン・ブラン、ピノ・ノワール)
栽培は、環境に配慮したサステイナブルな方法で行なっており、ほぼ有機栽培に近い状態にある。
* 肥料は、鶏糞とマールを使用。
* 病気への対策に化学薬品はほとんど使っていない。
* 灌漑用の水は、アンデス山脈から自然に(機械的にではなく)もたらされたもの。
* 醸造においても自然のものだけを使用。
* 醸造過程で発生する水は、瓦礫処理プラントで再利用し、その後ブドウ畑への灌漑用に使用。
* ワインの70%は軽量のエコボトルを使用し、製造・輸送時のCO2排出量を削減。
栽培はオーナーのヒューゴ・アンドレアスが統括し、ワインメーカーはモニカ・マダリアガが担当している。また、コンサルタント・ワインメーカーは、コンチャ・イ・トロのエノロジカル・マネージャーを務めたカルロス・ハラビー(1990年から27年間勤務)。
<マウレ・バレー>
マウレ・バレーは、チリでワイン用のブドウ栽培の歴史が最も長い産地のひとつでありながら、マイポやコルチャグアのような華々しさがない。かつて、パイスやカリニャンで知られていた場所だからだろうか。しかし今では、カルメネールによるスパイシーなワインが有名になりつつあるようだ。
マウレ・バレーは、沖積土壌で粘土が少なく、砂が多い土壌。そして、マイポやコルチャグアよりもやや冷涼で、冬に降雨量が多いのが特徴のひとつに挙げられる。さらに、日較差が大きく生育期間が長いため、熟度と酸度のバランスが取れたワインになる。
1月:日中30.8℃―夜間11.2℃
2月:日中28.4℃―夜10.9℃
3月:日中27.9℃―夜9.1℃
4月:日 中24.9 ℃―夜 7.1℃
<ヒューゴ・カサノバ4つのラインの8銘柄>
ヒューゴ・カサノバのワインを、LINAJE、ANTANO、RESERVE COLLECTION、FAMILY RESERVEの4つのラインの数銘柄と最高峰のDON ALDOを、ロオジエ(L’Osier)のソムリエ井黒卓氏のコメントとともに紹介する。
LINAJE Cabernet Sauvignon 2020 (Alc.12.5%)
NOSE: カシスやブラックベリーなど黒系果実中心の香り。他にもスミレやインク、リコリスと続く。特筆すべきはユーカリのような爽やかな風味。全体的に凝縮感がありながらカベルネ特有の爽快さがあるノーズ。
PALATE: 色味と香りから予想するより軽快なアタック。スレンダーなボディ。アルコール12.5%が関係しているのかもしれない。タンニンも2020年ながらよく溶け込んでいる。余韻の抜けが良くベリー系の風味が残る。
畑:マウレ・バレーのプリシマ畑
醸造:ステンレスタンク
ANTANO Pinot Noir 2018(Alc.14%)
NOSE: 華やかでいてチャーミング。可愛らしいベリー系のアロマ、牡丹などのフローラルさもあり親しみやすさを感じる。フルーツ・フォワード。
PALATE: 優しい口当たり、果実味由来のほのかな甘味を感じる。ふくよかなボディとしなやかなタンニンからくるまろやかな食感。コンパクトながらまとまっている。
畑:コルチャグア・バレー
醸造:早朝に、10kgの箱で手摘み。60%は4か月フレンチオーク樽で、残りはステンレスタンクで10℃で貯蔵。
RESERVE COLLECTION Chardonnay 2019 (Alc.13.5%)
NOSE: 第一印象はフレッシュ&トロピカル。パイナップル、ハニーサックルなどの蜜っぽいフローラルな香り。樽由来のほのかなグリルしたようなスモーキーなタッチが現れる。
PALATE: みずみずしい口当たり。生き生きとした酸味により全体的に引き締まっていて、メリハリのあるボディ。ミッド・パレットでふくらむ果実の風味が心地よい。リニアな酸味が余韻を引っ張り伸びやかなフィニッシュ。
畑:マウレ・バレーのプリシマ畑
醸造:3月第2週に10kgの箱で手摘み。50%は6か月フレンチオーク樽で、残りはステンレスタンクで貯蔵。
RESERVE COLLECTION Malbec 2019 (Alc.14%)
NOSE: 華やか、フラグランスな第一印象。フルーツは赤系と黒系果実が混ざっていて、ボイズンベリー、プラムとフレッシュな果実主体。ほのかにブラックペッパー。香水のようなフローラルさが支配的。
PALATE: まろやかなエントリー。ふくよかなボデイ。酸味が穏やかでタンニンの渋みが控えめ。熟した果実により豊満な雰囲気がある。フローラルなフレーヴァーとともに広がるようなフィニッシュ。
畑:クリコ・バレー
醸造:4月第2〜3週に10kgの箱で手摘み。60%は10か月フレンチオーク樽で、残りはステンレスタンクで貯蔵。
RESERVE COLLECTION Cabernet Sauvignon 2019 (Alc.13.5%)
NOSE: ジェネラスで力強さを感じるトップノーズ。ブラックチェリー、ブラックベリー。他にも丁子やシナモンなどのベイキングスパイス。上品な樽由来の香りと果実がうまく調和している。
PALATE: しっかりとした強靭なアタック。筋骨たくましいがっしりとしたボディ。タンニン量は多いものの、磨かれたような洗練された印象を受ける。マルベックとは違った収斂味を伴った味わいで、全体的に引き締まりがあるタイトなフィニッシュ。
畑:マウレ・バレーのプリシマ畑
醸造:4月第2〜3週に10kgの箱で手摘み。60%は10か月フレンチオーク樽で、残りはステンレスタンクで貯蔵。
FAMILY RESERVE Malbec Carmenere 2016 (14%)
外観:中心は黒いガーネットでエッジにやや退色がみられ綺麗なグラデーションが見える。
NOSE: 緻密で洗練されたトップノーズ。2つの品種のブレンドに由来するハーモニーが美しい。マルベックの持つ華やかさとカルメネール特有のセイヴォリーさが共存している。牡丹や芍薬、森の下生え、シダなど果実以外の複雑な風味がある。
PALATE: ストレート・フォワードで伸びるようなアタック。しっかりとした味わいながらも酸味のバックボーンが支えているため重くなりすぎない。しなやかでスムーズなテクスチャーがブドウの上質さを物語る。余韻もクレッシェンドのように徐々に長く伸びていく。
畑:マウレ・バレーのプリシマ畑
醸造:4月に10kgの箱で手摘み。60%マルベック、40%カルメネール。12か月フレンチオーク樽で貯蔵。
FAMILY RESERVE Cabernet Sauvignon Syrah 2017 (14%)
外観:艶のあるガーネット。エッジの紫が強く若々しさを保った外観。
NOSE:2つの品種が主張し合うような個性的なトップノーズ。カベルネのシダのようなハーブっぽさの後に、シラーの黒胡椒のようなスパイシーさが現れる。とてもユニーク。後から樽熟成由来のヴァニラやスモーキーさが加わり、マルチ・レイヤード(多層的)な香りに変化する。
PALATE:ジューシィで快活なアタック。果実の凝縮感を感じるグラマラスなフルボディながら、下支えする酸味があるので上品にまとまっている。カベルネ特有のファイン・グレイン(きめの細かい)タンニンが味わいの中盤の充実感を形成。複雑なアフターフレーヴァーでフィニッシュ。
畑:カベルネ・ソーヴィニヨンはマウレ・バレー。シラーはクリコ・バレー。
醸造:4月に10kgの箱で手摘み。70%カベルネ・ソーヴィニヨン、30%シラー。12か月フレンチオーク樽で貯蔵。
DON ALDO 2017, CS, Carmenere, Syrah (Alc.14%)
外観:艶のあるガーネット。エッジの紫が強く若々しさを保った外観。
NOSE: 3品種の特徴がはっきりと感じられる香り。果実味優先タイプではない。ユーカリ、樹皮、サンダルウッド、ほのかにブラックペッパーが加わる。そこにフレンチオークのスモーキーな風味が混じる。プレミアム・レンジにふさわしい複雑さがある。
PALATE: 丸みを帯びた柔らかいアタック。しっかりとしたボディながらアルコール感は抑制され、バランスの取れた構成となっている。丸みを帯びた緻密なタンニンがミッドパレットにおける滑らかなテクスチュアを形成。苦味を伴ったグリップのあるフィニッシュはこれからの長期熟成のポテンシャルも感じさせてくれる。すでに複雑さを兼ね備えた、まだまだ若々しさを保ったワイン。
畑:カベルネ・ソーヴィニヨンはマウレ・バレー。カルメネールとシラーはクリコ・バレー。
醸造:4月に10kgの箱で手摘み。収穫量は8,000kg/ha。カベルネ・ソーヴィニヨン67%、カルメネール15%、シラー18%。15か月フレンチオークとアメリカンオーク樽で貯蔵。
日本未輸入<問い合わせ先>export@hugocasanova.cl
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