この夏はプロヴァンスのロゼ! ロゼワインのトレンドに火をつけたプロヴァンスの魅力とは

世界で辛口のロゼワインの人気が止まらない。中でも牽引役となっているのはプロヴァンスロのゼだ。プロヴァンスのロゼワインの魅力を探るため、実際に販売しているプロに話を聞いた。

 

パレスホテル東京「グランド キッチン」 〜グラスワインで幅広い層にプロヴァンスのロゼをアピール〜

「グランド キッチン」ソムリエ 山田琢馬氏。2020年に開催された「第9回J.S.A.ソムリエ・スカラシップ」で優秀者に選ばれた。次世代の日本のソムリエ会を担う人材として期待されている。

2012年5月、3年間かけた建て替えを経てリニューアルオープンした「パレスホテル東京」。経済や金融の中心地である丸の内にありながら、緑と水に恵まれた立地にある。1階のオールデイダイニング「グランド キッチン」は、広々とした空間で、四季の変化を楽しめるテラス席もある。ここでソムリエを務める山田琢馬氏は、「リニューアルオープンしてからずっと、プロヴァンスのロゼをグラスワインとしてお出ししています」と言う。

数あるロゼの中でも、プロヴァンスのロゼには明確な特徴を見出せる。

「黒ブドウがベースであることに由来する、エントリーの柔らかさ、中盤からのボリューム感、そして後味のしっかりとしたミネラル感。口中での立体感、後味のタイトさや塩味があるため、お食事にもとても合わせやすいですね」。

朝食からディナーまで様々な時間のニーズに応えるオールデイダイニング「グランド キッチン」では、メニューもフレンチ、洋食、和食の要素を取り入れている。来店客の幅も広く、「ワインラバーの方は1割ほどでしょうか」と言う。だから、中でも、幅広い層に受け入れられる、バランスの良いロゼを選んでいる。

海外からのゲストも多く、プロヴァンスのロゼを飲み慣れた欧米客など、テラス席で男性数名でロゼを数本、というケースもあるようだ。日本ではまだそれほど浸透していないが、繊細さとバランスの良さ、華やかな色合い、様々な料理に合わせやすい点に加え、海外のセレブリティもプロヴァンスにワイナリーを構えるなど注目度も高まり、売り文句の多さがメリットのひとつでであるため、まだアピールの余地が十分あると考えている。

パレスホテル東京 オールデイダイニング「グランド キッチン」 東京都千代田区丸の内1-1-1  1F    03-3211-5364

 

 

 

 

 

++++山田琢馬氏、AOP別3銘柄を試飲++++

①Château des Sarrins Rosé 2020  – コート・ド・プロヴァンス

色調は輝きのある淡いオニオンカラーで非常に若々しい印象。

香りはフレッシュで清涼感ある印象、マイヤーレモンや洋梨など清涼感と甘さを連想させる香りが折り重なる、軽やかなアロマ。

レモングラスのようなハーバルな香りがアクセントになっている。

丸みを感じさせるソフトなエントリー。酸は直線的且つシャープな輪郭で、果実のボリュームとのバランスを取っている。アフターに感じる心地良い苦味が全体を引き締める。嫌気的なスタイルでフレッシュ&クリーンなワイン。

酸が印象的なワインなので、酸を基調とした爽やかな料理や、油脂分のある料理と合わせたい。

・ガスパチョ

トマトの酸とニンニクの力強い味わいに、ワインのシャープな酸とボリューム感が調和。

・紫蘇餃子

ワインのフレッシュな酸とハーバルなトーンが、紫蘇の風味を引き立て、餃子の油脂分をスッキリさせてくれる。コンディメントをユズポン酢やチリソースにする事でワインの違う表情も楽しめる。

・牛肉のカルパッチョ

牛肉の野生的なニュアンスとワインのボリューム感がマッチし、バジルのハーバルなトーンと同調する。

 

②La Coste Rosé 2020    – コトー・デクス・アン・プロヴァンス

輝きのあるコーラルピンク。やや強い粘性。

熟れたイチゴやスイカなど、瑞々しさと甘さを連想させる香り。フェンネルなどのハーブやアニスのようなエキゾチックスパイスのニュアンスが複雑なアクセントに。

丸みを帯びたボリューム感ある口当たり、フレッシュでクリスプな酸、余韻にかけて広がる苦味と渋味で構成されたパレット。

果実味が全面に出た、充実感のある味わい。

しっかりとした凝縮感とボリュームを感じるワインなので、味付けのしっかりした煮込み料理を合わせても良い。

・メカジキのバスケーズ

ワインのもつ凝縮感が、煮込んだトマトの凝縮感とメカジキの厚みを引き立てる。アクセントとしてバジルを上から散らす事でより清涼感と季節感を演出できる。

・豚の角煮

ワインの厚みやエキゾチックスパイスのトーンと、豚のうま味を伴った脂や、八角のフレーヴァーがマッチ。

 

③Estandon <Lumière> Rosé 2020 –  コトー・ヴァロワ・アン・プロヴァンス

透明感のあるサーモンピンク。若々しい外観。

ピンクグレープフルーツや赤スグリなど、清涼感と熟度をバランス良く感じる。ピンクペッパーやセージなど、スパイスからハーブまで様々な香りが幾重にも重なりリッチな印象。

柔らかい口当たり。広がりのあるフレッシュな酸がワイン全体を軽やかな印象にしている。アフターにしっかり感じる苦味や塩味を伴ったミネラルによって立体的な印象に。

果実味、酸味、ミネラル感がバランス良くまとまった高品質なワイン。

調和の取れた綺麗なワインなので、ガストロノミックで洗練された料理との相性が良い。

・真鯛のソテー デュグレレソース

ワインの爽やかさとミネラル感が真鯛の塩気、トマトとニンニクを使ったソースの風味にマッチする。

・穴子の白焼き

ワインの柔らかい口当たりを穴子のフワッとした食感に合わせて。梅肉を添える事で酸が同調して相性が深まる。

・仔羊のグリル

塩とハーブをふんだんに使った仔羊をシンプルにソテーして。ワインのボリューム感とハーバルな香りが、仔羊の野生的なトーン、ハーブの香りとマッチする。

 

3つを比較すると

3銘柄の試飲を終え、地域や生産者による個性の違いを大変面白いと感じた山田氏。プロヴァンスの歴史や料理も、調べていくうちに興味が増し、他国のロゼとの違いも明確になったと言う。

①は軽快で爽やかなスタイル、②は凝縮感が前面に出た、アプローチャブルなスタイル、③は、すべての要素がバランス良くまとまったスタイルだと思います。

この事からレストランのスタイル/ニーズを考えると、

①ピンチョスやタパスを中心に揃えたカジュアルダイニング(スパニッシュやイタリアン)/ロゼワインに対して「甘口」の印象を持ったゲスト、あるいは反対にスッキリドライなワインが好きなゲストへ。

②様々なニーズがあり、且つワインビギナーの多いレストラン/日常的にワインを飲まないゲスト、飲みやすいワインを求めるゲストなど幅広い層に。

③星付きレストランのような洗練された印象のあるお店/ワインを飲み慣れたゲストやお料理とのペアリングを期待しているゲストへ。

 

 

 

 

 

 

ワインショップ・エノテカGINZA SIX店 〜年間通してロゼワインを推す〜

(現在、スティルロゼワインは常時最低でも50種類以上を揃え、その2割ほどがプロヴァンスのロゼ。ディスプレイで目を引くだけでなく、併設のカフェ&バーで試飲して納得してもらえば、確実に購買に繋がる。)

 

昨年9月から GINZA SIX店の店長を務める濱口裕子氏。

2017年の春、ラグジュアリーブランドの集合体GINZA SIXに、エノテカがオープンした。ロゼワインがずらりと並んだ棚は壮観であった。今ではロゼ推しの店としても知られるが、当初社内からは賛同ばかりではなかったと言う。

しかし、エレガントなアロマと華やかな色合いのロゼは、この館のターゲット、上質なライフスタイルを求める30~40代女性を中心とした層にぴったりっとハマった。加えて、ロゼ普及を願い続けてきた業界関係者も歓喜した。

「視覚的に華やかなので、気になってロゼのコーナーに立ち止まられるお客様が予想以上に多いです。お声掛けして丁寧にご説明します」と、店長の濱口裕子氏。

まだ「ロゼは甘くて初心者向け」と思い込んでいる人がとても多いと言う。だから、「辛口」で「料理との相性もよく」、リーズナブルな価格が多いことを知らせ、バーコーナーでの試飲を促すこともある。一人一人にきちんと伝えることで、ともすると親の代から聞いた「ロゼは甘い」という伝説を払拭し、むしろ「夏のリラックスタイムに、あるいは季節に関係なく天候の良い日に飲むことで、明るい気分になれる」と提案している。

近年様々なロゼがリリースされているが、やはり主流はプロヴァンス産まれのロゼだと言う。青みがかったサーモンピンクで、フルーティーで辛口の味わい。そしてロゼに特化した唯一の産地だからだ。エノテカのスタッフは濱口氏をはじめ、昔からロゼ通であったわけではなく、皆で試飲を重ね、各国でのロゼのトレンド背景などの情報も共有してきた。ロゼを知り、ロゼのファンになってこそ、ロゼ販売のプロになる近道だと納得する。

ワインショップ・エノテカ GINZA SIX店  東京都中央区銀座6-10-1 GINZA SIX B2F    03-6263-9802

取材協力:プロヴァンスワイン委員会

(Photo: Yuji Komatsu, text: Yasuko Nagoshi)

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「テイスト・ピンク! プロヴァンスのロゼワイン2020年10選&ペアリングフード」

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