- 2022-5-10
- Wines, 南アフリカ South Africa
と巡る 壮大な南アフリカワインの世界」の後編をお届けする。前編はこちらから。
ワイナリー現地レポート4 フィルハーレヘン Vergelegen
この農園は1700年に父シモンの後を継いでケープ総督となったヴィルム・アドリアン・ファン・デル・ステルによって、サマーセットウエストに設立された。20世紀には様々な所有者によって散発的に植樹が行われたが、1962年までに一旦全てのブドウが抜かれ、フィルハーレヘンの土地は1987年まで休耕状態となった。その後30年以上にわたり外来植物の除去、土地の修復、農園の歴史的な部分の修復といった数々の大規模なプロジェクトが実施され、ブドウ畑が再確立された。1992年にボルドーのシャトー・ラフィットのオーナーであるエリック・ド・ロートシルト男爵によって、素晴らしいワイナリーが建設された。現在のフィルハーレヘンは、ケープの文化遺産を現代に伝えるリーダー的存在として位置づけられている。
G.V.B.レッドは「GROWN, VINIFIED AND BOTTLED」を意味している。2010年以降フィルハーレヘンはエステートとなり、自社ブドウ100%でワインを生産し瓶詰めまで自社で行っている。複雑さとストラクチュアのあるワインで、カベルネの黒系果実の風味とメルローのフレッシュさ、フルーティな赤系果実の特徴、またカベルネ・フランのフレッシュハーブのニュアンスが、バランスよく調和されカベルネの特徴が綺麗に表現されている。
<Tasting Wine#3>
フィルハーレヘン シャルドネ 2017(Vergelegen Chardonnay)
生産者:Vergelegen Wine Estate (est.1700年)
ワインメーカー:André van Rensberg
地域:W.O. Stellenbosch
品種:シャルドネ100%
解析:Alc; 14.06%, RS; 2.0g/L, TA;6.3g/L, pH; 3.33
価格(税抜):2,890円
Note:全房プレス、樽発酵(20%新樽)、澱と共に10ヶ月間熟成
輸入元:Mikuni Wine
(井黒ソムリエのコメント)
すごくスモーキー(薫香)。その後ろに、しっかりよく熟した黄桃やアプリコットがあって、樽熟成しているニュアンスもしっかり感じます。シャルドネは澱と熟成させることによって香ばしい風味となめらかなテクスチャーが生まれ、厚みを作ります。このワインもミッドパレットに厚みがしっかりと感じられます。あゆ、いわし、ほたて、さんまなど、海鮮系のBBQは絶対合うと思いますし、こういうシャルドネのリッチなタイプには、あえてスパイシーな中華や、生姜の効いた広東料理も合うと思います。
<Tasting Wine#4>
フィルハーレヘン フラッグシップ(Vergelegen Flagship G.V.B. Red 2012)
生産者:Vergelegen Wine Estate (est.1700年)
ワインメーカー:André van Rensberg
生産者:W.O. Stellenbosch
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン65%, メルロ21%, カベルネ・フラン5%, プティ・ヴェルド9%
解析:Alc; 14.52%, RS; 2.1g/L, TA;5.4g/L, pH; 3.65
価格(税抜):9,000円
Note:標高180-220m、深い粘土と石が混ざった花崗岩質土壌、野生酵母による発酵醸し5週間、フレンチオークの小樽で16ヶ月間熟成(100%新樽)
輸入元:Mikuni Wine
(井黒ソムリエのコメント)
複雑。ドライフルーツも通り越して、土っぽい。ターシャリーのお手本のような香り。フルーツは、ブラックカラント、ブラックベリー、つぶしたプラムのニュアンスも感じます。あとは樽の香りですね、クローブ、リコリス、甘いデザート系で使用するスパイスの香りもあり、いい樽を使っているなぁと感じます。100%新樽とは贅沢!腐葉土、針葉樹的な香り、キャンプで森の中を探索しているような香り。きのこっぽい香り、スモークの香りもありとても魅惑的な香り。
味わいはしっかりしたグリップのあるタンニンがあって、それが良いアクセントになっています。タンニンが強いというより、10年の熟成を経ているので溶け込んでいる、パウダリーなテクスチャーで、上質なボルドー系の南アフリカらしいワインですね。リッチなボディですが、グッと引き締めるようなアフターがあって、最後フレッシュに感じさせてくれます。肉は合うので、あえてチャレンジングに、ロブスターのココナッツカレーソースなど合わせてみても良いと思います。
キャシーMW、南アフリカワインの「ブランド(Brands)」の歴史を語る
南アフリカのワイン業界の「先駆者」たちの中には、「ブランド」として存在しているものがあり、ワイン業界の形成に大きな役割を果たして来た。共同組合や商人だけがワインを製造し、一般消費者に直接販売できた時代、多くのブランドが、ステレンボッシュ・ファーマーズ・ワイナリー(SFW)によって生み出されてきた。いくつかのブランドは現在も存続し、オークションではオールドヴィンテージが高く評価されている。SFWは現在「DISTELL(ディステル)」と名を改め、1960年代、1970年代、1980年代の栄光の時代のワインの多くの貴重なヴィンテージをタバナクルと呼ばれる地下ワイン貯蔵庫で保管している。今日タバナクルは南アフリカワインの長い歴史が詰まったかけがえのない重要かつ大変貴重なライブラリーとなっている。
初めて生産されたピノタージュ;ランゼラックのラベルで「1959年ヴィンテージ」を1961年にリリース
ランゼラック ピノタージュ 2019(Lanzerac Pinotage 2019)
生産者:Lanzerac Wine Estate (est.1692年)
ワインメーカー:Wynand Lategan
地域:W.O. Stellenbosch
品種:ピノタージュ100%
解析:Alc; 14.4%, R.S.; 2.3g/L, TA;5.78g/L, pH; 3.48
品種(税抜):3,700円
Note:標高400-420m、深く赤い風化した花崗岩質土壌。手摘み、収量は5.2トン/ヘクタール、選果し除梗。ステンレスタンクでポンプオーヴァーをしながら発酵。フレンチオークの新樽、2、3年目の樽で15ヶ月間熟成。
輸入元:株式会社GSA Japan
(井黒氏のコメント)
赤系果実もあれば黒系果実もあり、ボイセンベリーを感じるフルーツフォーワードなワイン。スミレっぽさや若干ブラックペッパーのタッチもあり、すごく洗練されています。チーズと合わせるのももちろん良いと思いますが、僕はファインダイニングのガストロミックなワインだと思いますので、スパイス使いが多用な南アフリカで、ラムシャンクや炭火でグリルしたラムチョップに甘いデーツのチャツネを添えて、このピノタージュを飲んだら最高だと思います。
ワイナリー現地レポート5 ムラティMuratie
コースタル地域のステレンボッシュ地区、シモンズバーグ山の麓にある美しい農園、ムラティ。1685年にローレンス・カンファーによって設立され、多くの人の手を経て、1987年に現在の所有者であるメルク・ファミリー・トラストがこの農場を取得した。ムラティは「すべてを可能な限りシンプルにすること」をワイン造りの哲学に掲げ、発酵から瓶詰めまでの全工程においてワインメーカーの直感、伝統的なプロセス、最新技術をバランスよく取り入れたワイン造りをしている。ブドウ畑では、常にアヒルやガチョウの群れが害虫を寄せ付けないようにしており、環境に配慮した殺虫剤を使う必要もない。
「アンセラ・ファン・デ・カーブ」は、ここで暮らした初代オーナー夫人の名前で、奴隷の身から自由を手にし、夢を叶えたムラティのフラッグシップワインだ。ムラティの豊かな歴史は敷地内の至るところに息づいており、過去から受け継いだ美しさや伝統が感じられる。
<Tasting Wine#7日本未輸入ワイン>
アンセラ・ファン・デ・カーブ 2019(Ansela van de Caab 2019)
生産者:Muratie Wine Estate (est.1685年)
ワインメーカー:Rijk Melck
地域:W.O. Stellenbosch
品種:カベルネ・ソーヴィニヨン59%, メルロ20%, カベルネ・フラン15%, プティ・ヴェルド6%
解析:Alc; 14.48%, RS; 2.1g/L, TA;6.5g/L, pH; 3.76
価格(税抜):R 585.00(日本未輸入)
Note:除梗・破砕し開放式発酵槽で発酵、フレンチオークの小樽で16ヶ月間熟成(50%新樽)、ブレンド後さらに6ヶ月間樽熟
(井黒氏のコメント)
ボディがしっかりある。伝統的なボルドーブレンド。しっかりとした熟度とボディと骨格のあるワイン。まだ若いけどしっかりとバランスのとれたワインです。熟成させても美味しくなりそうですね。私の中ではOld World寄りのイメージのワインです。価格もカジュアルで、つまりバリューが高い。これもオススメのポイントです。みなさんもカベルネのセレクトのひとつに、ボルドーやナパや、オーストラリアのマーガレットリヴァーの他に、ステレンボッシュをぜひ入れていただきたいと思います。
text by Rie Matsuki
<WOSA Japanプログラムの案内>
今回のこのプログラムは、シリーズ化をしてお届け予定。キャシーMWはこれからエピソード2のビデオ製作に入られます。エピソード2は、今年の後半 11月か12月頃の開催を予定しております。ぜひ次回もお楽しみに、みなさまのご参加をお待ちしております。
過去の「ウェンズデー・ウェビナー」はWOSA Japan Facebookのアーカイブから閲覧可能
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