「キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る 壮大な南アフリカワインの世界」エピソード1:~ The Elders 先駆者たち~ 前編

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2022年4月25日、WOSA Japan(南アフリカワイン協会)はヴィノテラスワインスクールと共催で「キャシー・ヴァン・ジルMWと巡る 壮大な南アフリカワインの世界」と題したオンラインセミナーを実施した。モデレーターはWOSA Japanプロジェクトマネージャーの高橋佳子DipWSETが務め、ゲストテイスターには、日本最優秀ソムリエであり、三ツ星フレンチレストラン銀座ロオジエ・シェフソムリエの井黒 卓氏が、トップソムリエの視点からも南アフリカワインの魅力を語った。

これまでの2年余り、コロナ禍で様々なオンラインプログラムを思考錯誤してきた中、今回はその集大成ともいえる企画となっている。南アフリカのステレンボッシュ在住のマスター・オブ・ワイン、キャシー・ヴァン・ジル(Cathy van Zyl)MW(*)が現地ガイドを務め、南アフリカの美しいワイナリーの魅力をお届けしてくれるという贅沢な機会となった。

(*)キャシー・ヴァン・ジル(Cathy van Zyl)MW

世界で最も権威あるワインの資格マスター・オブ・ワインを2005年に取得。現在は南アフリカワインのバイブルとも言える「プラッターズワインガイド(Platter’s South Africa Wine Guide)」の共同編集者とメインテイスターを務め、南アフリカワインの研究をしている専門家。日本とも親交は深く、親日家としても知られており、世界中に南アフリカワインの魅力を発信している。

 

以下、内容をサマリーする。

世界最古のワイン生産地 南アフリカ「ケープ・ワインランド」の成り立ち

南アフリカは、360年を超える長い歴史を誇るワイン生産地で、世界最古、かつ最も痩せた土壌を持つと言われているワイン産地だ。「ケープ・ワインランド」と呼ばれるその土地は度重なる地殻変動と地表侵食を繰り返し、多様でダイナミックな地形が形成された。この長い地形の成り立ちの歴史の中に、高品質で熟成に値する興味深いワイン産地である理由が秘められている。南アフリカで幅広い多様なスタイルのワインを産出できるのは、長年の時を経て雄大な山脈が連なり、海風の恩恵を受けられる地形的な条件が揃っているからであり、その複雑なテロワールは、現在につながる礎を築いた生産者たちによって、大切に守られ継承されてきた。

 

ワイナリー現地レポート1 クライン・コンスタンシア(Klein Constantia)

「W.O. Constantia コンスタンシア」は、コースタル地域のケープタウン地区にある小地区で、コンスタンシアバーグ山の麓に位置し、コンスタンシア・ヴァレーとフォルス湾の素晴らしい景色が見渡せる場所にある。もともとはケープ州の初代総督シモン・ファン・デル・ステルが設立した「コンスタンシア」という広大な敷地の一部であったが、急勾配な傾斜や丘陵地帯の花崗岩が風化した土壌、そして海風による冷却効果というワイン産地に理想的な条件があったために、ブドウ栽培が始まった。

1712年のファン・デル・ステルの死後、土地は3分割されて売却された。最も広い「ベルグフリート」は家畜の飼育用に、残りの2つ「グルート・コンスタンシア」と「クライン・コンスタンシア」で、コンスタンシア・スイートワインが生産されるようになった。1700年代後半には、プロイセン皇帝フリードリヒ大王、ルイ16世とマリー・アントワネット、ジョージ・ワシントン、トーマス・ジェファーソンらがこのスイートワインを寵愛した。

1872年、コンスタンシアの黄金時代は終わりを告げ、1世紀以上にわたりワイン造りは途絶えてしまう。時は流れ、1980年代になると現代的な辛口ワインが生産されるようになり、更に神話となったコンスタンシアの甘口ワインを再現した「ヴァン・ド・コンスタンス」が発売され、世界的な高い評価を獲得し華麗なる復興を果たした。極甘口コンスタンシアワイン生産の伝統はこうして復活を遂げ、ヴァン・ド・コンスタンスは現在もなお製造され、世界中で高い人気を誇っている。

クライン・コンスタンシアは、優れた辛口のソーヴィニヨン・ブランも生産している。率先して優れたテロワールを表現するソーヴィニヨン・ブランを造り、業界をリードし、新世界と旧世界のギャップを埋めるスタイルを南アフリカとして担っている。

 

<Tasting Wine#1>

クライン・コンスタンシア ソーヴィニヨン・ブラン 2017(Klein Constantia)

生産者:Klein Constantia (est.1685年)

ワインメーカー: Matthew Day

地域:W.O. Constantia

品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%

解析:Alc; 13.3%, RS; 1.0g/L, TA;5.9g/L, pH; 3.36

価格(税抜):3,000円

Note:自社畑の複数の区画を個別に醸造しブレンド。ステンレス発酵、7ヶ月間澱と共に熟成。

輸入元:株式会社ラフィネ

(井黒ソムリエのコメント)

香りはハツラツとしていて、スモーキー(火打ち石的なフリント香、マッチを擦った香り)なフレーバー。トロピカルな風味(グレープフルーツやパッションフルーツ)の中にソーヴィニヨン・ブラン特有のピラジン物質からくる清涼感、シダー、グーズベリーの香り。クリーンでブドウ品種本来の香りです。

みずみずしい口当たりから、ミッドパレットに滑らかでやわらかい食感(テクスチャー)が広がります。これがいわゆる澱と熟成させることによって生まれるテクスチャー。アフターを引き締める苦味があり、爽やかでタイトな酸が作り出している引き締まったスリムなボディのワインです。花崗岩土壌のソーヴィニヨン・ブランということで、エネルギーがあり凝縮感も感じられ、旧世界・新世界との中間的な特徴を持った絶妙なスタイルですね。

(サービスの)温度帯は、冷やしてフレッシュでも楽しめるが、このワインはポテンシャルもあるので、あえて12度くらいで楽しんでもお料理との接点も生まれると思います。今の季節だとアスパラ。シンプルにホタテとアスパラをソテーしたお料理や、レモンをしぼった生牡蠣ともすごく合いそうです。

 

<Tasting Wine#6>

ヴァン・ド・コンスタンス 2016(Vin de Constance 2016)

生産者: Klein Constantia (est.1685年)

ワインメーカー: Matthew Day

地域:W.O. Constantia

品種:ミュスカ・ド・フロンティニャン100%

解析:Alc; 14.0%, RS; 164.8g/L, TA;6.5g/L, pH; 3.7

価格(税抜):12,000円 (500ml)

Note:3ヶ月間かけて収穫、半年から一年かけて発酵。50%は新しい仏オークフードル、残りは500Lのハンガリーオークとフレンチアカシアで3年間熟成、瓶詰め前に6ヶ月間タンクで貯蔵

輸入元:ピーロート・ジャパン

(井黒ソムリエのコメント)

蜜蝋や、アプリコット、オレンジマーマレード、アカシアの蜜のような雰囲気もありすごく複雑。貴腐ワインではないということで軽やかさがワインに感じられます。甘さと複雑な風味のバランスが絶妙。あえて、生春巻きなどに合わせてみたいですね。スイートチリソースのフレッシュなエビや生春巻きに合いそうですし、台湾しじみの醤油紹興酒漬けのような、しょっぱい系のおつまみにも合うと思います。ちょっと贅沢なワインではありますが、色々なお料理と試していただければと思います。

 

ワイナリー現地レポート2 グルート・コンスタンシア(Groot Constantia)

シモン・ファル・デル・ステルの死後、分割・売却され誕生したグルート・コンスタンシアは300年以上の歴史を経た現在でも、稼働し続け、南アフリカで最も訪問者の多い観光地の一つでもある。広大なブドウ畑は、急峻な谷間に位置しており、南アフリカの多くのワイン農園と同様、あらゆるレベルでサステイナビリティに取り組んでいる。ブドウ畑では可能な限り生物学に基づいた管理を行い、広大な敷地の半分は手付かずで残し自然保護している。南アフリカ固有の生態系を保護しながらブドウ栽培を行うことは今や南アフリカでは当然の取り組みだ。

近隣のクライン・コンスタンシアが白ワイン中心の農園であるのに対し、グルート・コンスタンシアの栽培率は70%が赤、30%が白だ。グルート・コンスタンシアは、1700年代から1800年代に栄えた甘口のコンスタンシアワインを独自に製造し「グランド・コンスタンス」と呼ばれ、今日でもワイン愛好家の間で高い人気を誇っている。

 

ワイナリー現地レポート3 ディーマーズダル(Diemersdal)

コースタル地域のケープタウン地区の小地区であるディーマーズダルは、コンスタンシアほどフォスル湾とその海風の影響は強くないものの、テーブルマウンテンを背にしたドルストバーグの涼しい斜面に位置し、わずか数キロ先の海風(大西洋)の恩恵を受ける産地だ。午後になると、大西洋から涼しい霧が立ち込め、定期的にブドウ畑に冷却効果をもたらしてくれる。

ディーマーズダルは、南アフリカで偉大な家族経営のエステートのひとつ。6世代にわたってLOUW家がワイン造りを行っており、南アフリカで最古の家族経営のワインファームだ。敷地面積は340ヘクタールで、そのうち180ヘクタールにブドウが植えられており、残りは放牧地と、世界で危機に瀕している植生のひとつであるレノスターフェルトが広大なエリアに原生しており、LOUW家はその保護に努めている。

 

<Tasting Wine#2>

ディーマーズダル・ソーヴィニヨン・ロゼ 2021(Diemersdal Sauvignon Rose)

生産者: Diemersdal Estate (est.1885年)

ワインメーカー:Tyth Louw

地域:W.O. Durbanville

品種:ソーヴィニヨン・ブラン93%, カベルネ・ソーヴィニヨン7%

解析:Alc; 13.39%, RS; 4.1g/L, TA;5.8g/L, pH; 3.40

価格(税抜):2,800円

Note:ソーヴィニヨン・ブランをステンレスタンクで嫌気的に醸造し、瓶詰め3週間前に若いカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンド

輸入元:Cape Cellar

(井黒ソムリエのコメント)

色は(フランスの)プロヴァンス・ロゼのような淡目のサーモンピンク。トップノーズがとても華やかで、赤すぐり、クランベリーなどの酸味のある赤系果実を感じます。スイカ皮のようなフレーバーもあり、清涼感のある香り。品種特徴が綺麗に表れています。

味わいはとてもユニークで、まさに食欲とそそるロゼ!このワインのポイント後味に爽やかな酸味と共に感じる塩味。海風の影響を感じます。魚介と合いますね。軽く炙った水タコをフレッシュなトマトと玉ねぎとマリネしたり、そこにパクチーを添えてもいいですね。シンプルな素材を楽しむような料理も良いですし、メインディッシュでも楽しめると思います。チキン系にもトマトソースにもよく合いそう。汎用性のあるフードフレンドリーなロゼで、様々なお料理と合わせてお楽しみいただけると思います。

text by Rie Matsuki

(つづく)後編はこちら

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<WOSA Japanプログラムの案内>

今回のこのプログラムは、シリーズ化をしてお届け予定。キャシーMWはこれからエピソード2のビデオ製作に入られます。エピソード2は、今年の後半 11月か12月頃の開催を予定しております。ぜひ次回もお楽しみに、みなさまのご参加をお待ちしております。

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