ヴーヴ・クリコ創業250周年を記念した「ソレール カルチャー」が残したメッセージ

明治神宮前で開催された「ヴーヴ・クリコ ソレール カルチャー 〜太陽のように輝く250年の軌跡〜」は、多くのメッセージを伝えた。まるでこの展示が太陽光を日本に集めたかのように、今年2022年は真夏が早くやって来た。太陽のような輝きとともに世界を巡回してほしい。

 

ヴーヴ・クリコ創業250周年を記念した「ソレール カルチャー」は、日本を皮切りにアメリカ、オーストラリア、南アフリカ共和国、イギリスなどすべての大陸を巡回する壮大な企画展だ。しかも、女性だけで創り上げられたもので、シャンパーニュにおけるクリエイターであったマダム・クリコへの敬意を表している。今回の企画展に携わったヴーヴ・クリコのインターナショナルコミュニケーション&マーケティングディレクターのキャロル・ビルデさんと、ワインメーカーで研究開発およびワインコミュニケーション責任者のガエル・グーセンスさんに話を聞いた。

 

太陽を表す「ソレール」という言葉とともに、印象的な太陽の色がこの展示を象徴している。ヴーヴ・クリコと言えば「イエローラベル」を思い浮かべるが、それはそもそも「太陽の色」だとキャロルさんは言う。

インターナショナルコミュニケーション&マーケティングディレクターのキャロル・ビルデさん。

「マダム・クリコが1877年からずっと用いている色で、太陽の色、しかも夕日ではなく日の出であることが重要です。一日が新しく生まれ変わる時間であるとマダム・クリコは強く信じていました。そして、すべてを可能にしてくれるオプティミズムの色であり、朝日が昇ると『すべてが私のもの』だと感じられたと言います。ですから、日本が重要なマーケットであると言うことだけでなく、『日いずる国』日本から始めると決めました」。

 

フランス人のキューレーター、カミーユ・モリノーさんと、空間デザイナーのコンスタンス・ギセさんが監修した展示で最初に出会うのは、現代アートの巨匠、草間彌生氏が再解釈したマダム・クリコの肖像画だ。ヴーヴ・クリコは草間氏とのコラボレーション「ヴーヴ・クリコ ラ・グランダム2012 草間彌生」で大きな成功を収めている。

キューレーターのカミーユ・モリノーさん。

「この2年間の厳しい環境の中で、草間氏はファクトとしてのコラボレーション以上のことをして下さいました。楽しみや活力、オプティミズムなど、辛い中で多くの人々が求めているものを与えてくれました。ですから、日本だけでなく各国でとても良い評価を得られました。もちろん2012年のラ・グランダムの内容も充実していたことは言うまでもありませんが」。

また、「ソレール カルチャー」と言う命名には、もうひとつの意味があると言う。

「太陽の光は世界を照らしてくれますが、同時に境界を超えて新しい道を創り出すという役割も果たしていると思っています。それをキューレーターとデザイナーに伝えました。ブランドの持つ歴史の深さや豊かさを感じてほしい、そして展示会場を出る時には笑顔でいてほしい。さらに、過去の遺産を展示する博物館のような場所ではなく、人々をインスパイアし続け、若い世代にも繋げることができる空間。生きたアーティストによる、過去と現在の対話が可能になるような場所にしたかったのです」と、キャロルさん。

空間デザイナーのコンスタンス・ギセさん

では、100%女性で創り上げたことでどのようなメッセージを発信したいと考えたのだろうか。

「もちろん、マダム・クリコのレガシーへのトリビュートという意味があります。それに加えて女性の能力へのレスペクトも。ヴーヴ・クリコの『ボールド』プログラムと同じです。男性を排除しようとしているのではなく、まだ光が当たるのは圧倒的に男性が多いので、『何でも可能!』ということを、とくに女性に伝えたいと考えました。女性にハイライトを当てて、 『“Be Bold” (勇敢であれ!)、何でも可能だからダメだと思った境界もどんどん超えていこう!』そういうメッセージです」。

 

さて、ガエルさんは境界を超えた人の一人だ。ワインの世界でも醸造チームはまだまだ男性社会だが、彼女はヴーヴ・クリコで2人目の女性醸造家となった。今では4名に増えたと言う。

ワインメーカーで研究開発およびワインコミュニケーション責任者のガエル・グーセンスさん。

「ヴーヴ・クリコは、重要なポジションにおける男女バランスの大切さについていち早く気がついた会社だと思います。もちろん、プレッシャーも感じますがそれはハッピーなプレッシャーであり、楽しく仕事をしています。何よりヴーヴ・クリコは言動が一致している会社ですね」。

もともと国際政治に関わる仕事についたが事務作業は合わないと感じて転職したと言う。

「私の頭の中は半分科学的で半分アーティスティックなので、そういう意味ではワイン造りは完璧な仕事だと感じています。ピノ・ノワールが最も好きなブドウ品種だったので、ヴーヴ・クリコに入社して喜んでいましたが、当初2年間はシャルドネを担当することになりました。ただ、その後にまたピノ・ノワールを扱い始めると新たな発見があり、多くの学びがあると感じました。一生学び続けるのがワインの醸造家だと思っています。そういえば、マダム・クリコもピノ・ノワールを愛していました。『うちの黒ブドウは素晴らしいフィネスのある最も美しい白ワインを造る』と語ったと言います。当時はシャルドネがトレンドだったので、やはり先見の明がある人物だったのです」とガエルさん。

 

今回の展示は3部構成で盛りだくさんだが、個人的には最初のコーナーが最も印象的だった。複数のアーティストによるマダム・クリコの肖像画だ。マダム・クリコの肖像画は一枚しか現存していないと言う。若い頃のものはない。だからこそ、アーティストが自由に発想しそれぞれの手法で行った表現の違いが面白い。そして展示会場を出る時には明るい気持ちになっていることに気がついた。(Y. Nagoshi)

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