サン・トロペを象徴するプロヴァンス・ロゼ「シャトー ミニュティー」CO-CEOフランソワ・マットン氏に聞く

南フランスのサン・トロペは、誰もが憧れるフレンチリヴィエラあるいはコート・ダジュールにある。モナコからは車で2時間。カンヌからは1時間。映画スターもたびたび訪れているというこの場所で、最もたくさん開けられているプロヴァンス・ロゼは、サン・トロペの街を一望する丘の上にある「シャトー ミニュティー」。このワイナリーの3代目経営責任者となるフランソワ・マットン氏が来日し、シャトー ミニュティーの魅力を披露した。

<創業1936年のクリュ・クラッセ>

シャトー ミニュティーの始まりは1936年。ガブリエル・ファルネ氏が、小さな漁港であるサン・トロペの街を見渡せる丘の上で創業した。娘のモニークの夫、エティエンヌ・マットン氏が1960年に引き継ぎ、1990年よりフランソワ&ジャン=エティエンヌ・マットン兄弟が共同経営責任者を務めている。以前は南フランスだけで、しかも夏の間だけロゼワインを販売していたが、今では世界的なロゼワインのトレンドの影響もあり年間で900万本も販売しているそうだ。そして、その半分は輸出で115か国にも及ぶ。

シャトー ミニュティーは、プロヴァンスの中でもAO Pコート・ド・プロヴァンスに位置している。このコート・ド・プロヴァンスには、1955年に格付けされた「クリュ・クラッセ」が18ワイナリー存在し、シャトー ミニュティーはそのうちのひとつ(格付け当初は23あったが、その後の都市化などの影響で減少したようだ)。父エティエンヌ・マットン氏はクリュ・クラッセ協会の会長も務めていた人物なのだ。

実にトレンディーなワインで会社の規模も拡大したが、今でも「90%の仕事が畑だ」とマットン氏は断言する。

「プライマリーアロマと呼んでいる果実そのものの香りは、すべて畑に由来している。だから、畑を歩くのが最も重要な仕事であり、採れたての果実の美しさや複雑さを消費者の皆さんに伝えることが大切だと考えている」。

父の時代にまず行ったのは、「ロゼワイン」に適切な品種の選抜。最も重要なのがグルナッシュ、そしてサンソー、ティブランなどが挙げられる。次に、収穫量を一定にすること。それまでは年により収穫量が大きく異なっており、収穫量が低い年には香味が濃くなり過ぎ、豊作の年には複雑性を失っていた。そこで垣根仕立てを採用し収穫量が毎年一定になるように工夫した。さらに、温度調整を行いスキンコンタクトを防ぐことで淡いサーモンカラーを生み出した。

プロヴァンスのロゼワインが世界的に評価され今のような大きな潮流を起こした要因のひとつに、ここ10〜20年での品質向上が挙げられる。シャトー ミニュティーはじめリーダー的な存在のワイナリーが牽引し、プロヴァンスワイン委員会が全体の品質底上げのために調査研究した結果や情報を生産者と共有したことによるものだ。

「ロゼワインの世界でのプロヴァンス・ロゼの存在は、スパークリングワインの世界でのシャンパーニュの存在に似ている」と、フランソワ・マットン氏は言う。

 

左から「シャトー ミニュティー エム ド ミニュティー」、「シャトー ミュニティー プリスティージ」、「シャトー ミュニティー ロゼ エ オール」、「シャトー ミニュティー 281」。

 

<シャトー ミニュティーのラインナップ>

さて、日本に輸入されているシャトー ミュニティのラインナップは4銘柄。そのうち「シャトー ミニュティー エム ド ミニュティー」と「シャトー ミュニティー プリスティージ」は、契約栽培によるブドウを使用。一方で上級ラインの「シャトー ミュニティー ロゼ エ オール」と「シャトー ミニュティー 281」は自社畑のブドウだけで造られる、シャトーワインだ。

「シャトー ミニュティー エム ド ミニュティー 2022」は、最もピュアなスタイル。フルーティでアプローチしやすいのがこれ。フランソワ・マットン氏曰く、「シャンパーニュならブリュット・ノンヴィンテージの存在に近い」。

「シャトー ミュニティー プリスティージ 2022」は、フルーツの香りが増し口当たりがよりなめらかになりながら、余韻に塩っぽいミネラル感も。フランソワ・マットン氏は、「シャンパーニュならブラン・ド・ブランの存在」と言う。

「シャトー ミュニティー ロゼ エ オール 2022」は、シャトー ミニュティーのアイコン的な存在。凝縮感さえ感じられ、白い花や柑橘類、白桃などの香りが華やかで、豊かな口当たり、そして余韻のミネラル感が心地よい。こちらは自社畑の複数のグルナッシュのクローンをブレンドし、さらに15%のサンソーを加えている。フランソワ・マットン氏は、「シャンパーニュならヴィンテージクラス」と言葉を添えた。

「シャトー ミニュティー 281 2022」は、2015年から造り始めたガストロノミックなキュヴェ。フランソワ・マットン氏の言葉を待たずとも、「シャンパーニュならプレステージ・キュヴェ」だとわかる。<281>は、プロヴァンスから見える海を思わせる「青」のパントン番号を表している。そして、このキュヴェの85%は特別なグルナッシュ。創業者である祖父が1938年に植えたグルナッシュは、複雑性が高くストラクチャーが強いワインを生むが、今はどの苗木屋でも取り扱いがないクローンだとわかった。そこで、自社畑からマッサール・セレクションしてその遺伝子を継承している。その特別な区画のなかでも樹齢25年以上のグルナッシュだけ使用し、その相方としてシラーを15%ブレンド。香りが一段と複雑になり、花、白いストーンフルーツ、白胡椒などのスパイスが広がり、なめらかな口当たりで芯の強さも感じられる。まさにスパイスを振りかけた果実を食べているような感覚。グラスに注ぎたてよりも、少し時間が経過してからのほうがその真価を発揮する。

 

シャトー ミニュティー3代目経営責任者となるフランソワ・マットン氏(左)と、グローバル戦略・輸出担当ディレクターのセバスチャン・ノール氏(右)。

車だと5分でサン・トロペの街まで行けるのに、夏の間は渋滞して1時間以上かかるという。この賑やかで華やかなリゾート地サン・トロペで、そしてフランス国内で一番売れているブランドが「シャトー ミニュティー」。今では夏だけでなく年間通して販売されている。まさにサントロペを象徴するワインそのものである。

(Y. Nagoshi)

輸入元:MHD モエ ヘネシー ディアジオ

 

 

 

 

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る