
ビールが似合う日本の暑い夏がやって来た! さあ、この夏は何を飲もうか、と思案中の皆さんへお勧めしたい一品がある。それがJuicy Hop Light。
昨年、ビール業界の「オスカー」とも称され、世界5大審査会のひとつとしてその歴史を誇る ”The International Brewing Awards 2021” の”Special Hop Beer”部門で第1位に輝いたJuicy Hopは、スプリングバレーブルワリー東京でも人気が高い。当初は季節商品として出していたが今では堂々の定番入り。そのJuicy Hopの派生として生まれたのが、このJuicy Hop Lightだ。人気のJuicy Hop、そして生まれたばかりのJuicy Hop Lightについて、ヘッドブリュワーの古川淳一さんに聞いた。
クラフトビールの世界ではIPAが最大のカテゴリーで、そのサブ・カテゴリーとして ”Juicy (Hazy) IPA” が数年ほど前から人気急上昇だと言う。フルーティーな甘い香りがあることでビール特有の苦味を感じにくいジューシーな味わいで、濁って(Hazy)見えるものが多いのが特徴のようだ。
そして、今回の新たな挑戦はJuicy Hopの魅力のひとつであるトロピカルフルーツ的アロマを維持し味わいの満足感を保ちつつ、アルコール度数が低い商品を開発すること。暑い夏にはアルコール度数が低い方が飲みやすい。そしてクラフトビールの間口を広げることにも繋がると考えたからだ。その結果、Juicy Hopはアルコール度数が6.5%なのに対し、Juicy Hop Lightは約3%と半分以下に(スプリングバレーブルワリー東京で提供するJuicy Hop Lightは3%、京都で提供するのは2%)。
ただ、アルコール度数を低いビールを造るにはいくつかの壁があると言う。
「アルコール度数を低くすると味わいが軽やかになるので、その分苦味を強く感じやすくなるのです」と、古川さん。
最近ノンアルコールワインテイスト飲料を複数試飲して、アルコールがないとボリューム感が減り味わいも軽くシンプルになりがちだと感じていたので納得する。ノー&ローアルコール飲料の選択肢が増え、かえってアルコールのもたらす効果に気がつくきっかけにもなった。
さて、古川さんは香りや味わいの満足感を保つために複数の手立てを講じた。まず、Juicy Hopには使っていない乳糖を用いた。乳糖は甘いけれど酵母が食べられない糖分なのでアルコールを生成しない。そして、麦芽の量は少なめにしてその分解を抑えることで、アルコール度数は上がらないが麦芽の風味がそのまま残るようにした。そして、香りと苦味を醸し出すホップの量は維持をした。
「実は、アルコール度数が低いと味のバランスの取り方が難しく、低アルコールは難易度が高いカテゴリーです」と、古川さん。しかし「2〜3%のアルコール度数だからこそ楽しめる香味もあるということも伝え、ビールの楽しさを広げていく一環としてチャレンジしました」。

クラフトビールのJuicy & Hazy人気上昇はナチュラル・ワイン人気のトレンドとおよそ時を同じくしているようだ。外観からもわかる濁り具合、そしてフルーティーで飲みやすい味わいはナチュラル・ワイン好きにも訴求できそうだ。
今回の仕上がりについて尋ねると、「インパクトはあると思いますが、次のロットではもう少し苦味を抑えたいですね」と、まだまだ先を見つめている様子。
でも味見をさせてもらうと、個人的にはそれほど苦味が強いとは感じなかった。本当にトロピカルフルーツのようなフレッシュで甘い香りがして、言われなければ、一口飲んだだけではアルコール度数が通常の半分以下とは気がつかない。それに、旨みもある。確かにキレ味は良くほのかにオレンジビターのような苦味があるけれど、おつまみが進みそうだなぁ、と思うぐらいの好印象。グレープフルーツを薄皮も一緒に食べたような感じでしょうか。
「使っている麦芽が少ない分、穀物系の食べ物と補い合えるかもしれませんね」と言いながらも、やはり古川さんはさらに完璧なバランスを目指すクラフトマンであった。
(Y. Nagoshi)
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