ニーダーエスタライヒ州情報 PART2ドナウ・エリア、PART3パノニア・エリア

ディナーで提供された、熟成したドナウ・エリアのワイン。グリューナー・ヴェルトリーナーは5年ほど瓶熟成を経ると、ハチミツやジンジャーの風味をまとい芳醇になる。

 

取材・文 松木リエ 取材協力 オーストリア・ワイン・マーケティング協会(AWMB)

PART2 ドナウ・エリア

ドナウ川に沿って東から西へ吹く暖かい風の影響で寒暖差が生まれる、
ウィーンから西のこのエリアは銘醸地となっている。
おもにグリューナー・ヴェルトリーナーやリースリングが栽培され、
有名な小規模生産者が数多く存在するが、
シュタット・クレムスやドメーネ・ヴァッハウのような生産者協同組合も多い。
ドナウ川の両岸に5つあるワイン地域は、全てDACの認証を受けている。

●ヴァッハウDAC

早朝から始まったセミナーでは、ドナウ・エリアについて生産者から直接学んだ。

栽培面積1,291ha。世界遺産のヴァッハウ渓谷にあり、ドナウ川両岸には結晶岩石土壌の急勾配な段々畑が連なる。約6割の畑でグリューナー・ヴェルトリーナーが栽培されているが、生産者らは「岩の多いヴァッハウは高品質なリースリングの栽培に向いている」と主張する。1980年代半ばから生産者協会の「ヴィネア・ヴァッハウ」が独自の格付けを行なっており、辛口の白ワインはアルコール度数が低い方から高い方へ(つまりブドウの成熟度が低い方から高い方へ)、「シュタインフェーダー」「フェーダーシュピール」「スマラクト」と表示。単一畑のリート・アハライテンが銘醸畑として知られ、力強いグリューナー・ヴェルトリーナーまたはリースリングを生む。

●クレムスタールDAC

栽培面積2,256ha。ヴァッハウの東に隣接するクレムスタールは、黄土、原生岩、白亜などさまざまな土壌があり、一概に説明するのは難しい。パノニア平原からの暖かい影響を受けるので、黒ブドウのツヴァイゲルトも10%強栽培されているが、クレムスタールDACを名乗るにはグリューナー・ヴェルトリーナーとリースリングに限られる。リースリングはフラワリーで繊細な風味とやや細いストラクチャーなので、少しの残糖でバランスを取っている生産者が多い。両白ブドウ品種ともに、スモーキーさや塩味をワインに感じる。

クレムスタールDACにある、ドナウ川沿いに続く美しい段々畑。

●カンプタールDAC

栽培面積3,582ha。クレムスタールとヴァーグラムに挟まれたドナウ川北岸の地域。パノニア平原の暖かい風と北部チェコからの冷たい空気の影響を受ける。そのため日較差が大きく、ワイン中の酸が高く維持される。単一畑のリート・ハイリゲンシュタインは特級畑に相当すると言われ、ここで栽培されるリースリングからは、グレープフルーツや花の蜜、白桃の華やかな香りと、高い酸味を持つ、非常に高品質なワインが造られている。

●ヴァーグラムDAC

栽培面積2,439ha。ウイーンの北東部に接するヴァーグラムは、ドナウ川の北岸と南岸の穏やかに起伏する丘陵地にブドウ畑が広がる。パノニア平原からの温暖な影響と黄土の堆積土壌により、グリューナー・ヴェルトリーナーのワインはオレンジやアプリコットのような熟した甘やかな風味を持つ。標高が高く、岩がちな畑にはリースリングが植えられ、アカシアの蜜やアプリコットの華やかな風味がワインの特徴に表れる。そして現在、ヴァーグラムにしかほとんど残っていない品種がローター・ヴェルトリーナー。この地のテロワールと相性がよく、レートを筆頭とする生産者らがそのPR活動を行なっている。

●トライゼンタールDAC

DACごとにリースリングとグリューナー・ヴェルトリーナーを、計25種類テイスティング。

栽培面積851ha。4000年以上の古いワイン造りの歴史を持つ。東のパノニア平原からの暖かな気候と、南にあるアルプス山脈からの冷たい風が合わさり、ドナウ・エリア内では南に位置しながらも冷涼な気候だ。トライゼンタールは石灰岩が優勢の土壌で、そこに混ざる鉄や小石などの違いでリートが分かれている。グリューナー・ヴェルトリーナーはリンゴやハーブの香り。酸の強いタイトな味わいとなり、リースリングは白い花と桃の強いフレーヴァーを持つ。

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