PART3 パノニア・エリア
ウィーンの南に広がるテルメンレギオンや、
南東部のカルヌントゥムを包括するパノニア・エリア。
温暖なパノニア気候の恩恵を受けてブドウがよく熟す。
白ブドウの栽培比率が76.8%のニーダーエスタライヒ州において、
このエリアは高品質な黒ブドウで注目されている。
ウィーンからドナウ川に沿って東へ車で1時間足らずにあるカルヌントゥムの単一畑リート・シュピッツァーベルクは、ブラウフレンキッシュから高品質な赤ワインを産する畑として注目されている。畑のある丘から見渡すと、東に隣国スロヴァキアの街並み、南には風力発電機が並んでいるのが遠くの方まで見え、遮るもののない日当たりの良さや、年間を通して強風が安定的に流れることが分かる。年間2,000時間以上というヨーロッパでもトップクラスの日照時間と、雨が極端に少ない乾燥した大陸性気候で、年較差と日較差がオーストリアの産地で一番大きいと言われている。また、ブラウフレンキッシュが好む石灰質土壌だ。南のミッテルブルゲンラントDACなどは少し保水性のある黒土なので、ワインの味わいがスパイシーで少し黒系果実の味わいだが、シュピッツァーベルクは赤系果実の風味で酸もあり、繊細なブラウフレンキッシュとなる。
カルヌントゥム全体のブドウ栽培面積はニーダーエスタライヒ州最小の836ha。その55%に黒ブドウが植えられている。代表するのはツヴァイゲルト(28%)とブラウフレンキッシュ(11%)だが、メルロやカベルネ・ソーヴィニヨンといった国際品種にも適している。カルヌントゥムDACは、グリーュナー・ヴェルトリーナー、ヴァイスブルブルグンダー、シャルドネの辛口白ワインと、ツヴァイゲルト、ブラウフレンキッシュの赤ワインが認証されている。
栽培面積1,901haのテルメンレギオンは、ブルゴーニュと良く似た緯度と土壌で、高品質なピノ・ノワールやザンクト・ラウレントで知られる。ちなみに在来品種のザンクト・ラウレントはピノ・ノワールの自然交配による品種で、聖ローレンスの日あたりにヴェレゾンすることからこの名が付いた。ピノ・ノワールに似た赤系果実の風味と中程度のタンニン、ミディアムボディの赤ワインとなる。
北部では白ワインも注目されている。在来品種のロートギプフラーは桃の風味をもつ重厚感のある味わいとなり、シャルドネに対抗する品種として推されている。ツィアファンドラーもアロマティックで桃や蜂蜜、スパイスの香りを持つ品種だ。この2つを混醸したオフドライのワインは、ハプスブルク家の宮廷でも飲まれていたという名産品だ。
なお、生産者の取り組みとして、このエリアでもブドウ畑の格付けが始まった。単一畑を表すリート名の後に記される「1ÖTW」は1級畑を指す。1992年に発足した生産者団体「Traditions weingüter Österreich(オーストリア伝統的ワイナリー協会)」が、従来、ドナウ・エリアの協会員の畑の中で認証してきた。この動きはニーダーエスタライヒ州全体に広がり、さらにシュタイヤーマルク州でも広まりつつある。
またカルヌントゥムには、「Rubin Carnuntum(ルービン・カルヌントゥム)」という協会がある。各ワイナリーがワインを持ち寄り、全会員がブラインド・テイスティングを経て「ルービン・カルヌントゥムとして良い」と判断されたツヴァイゲルトのワインのみ名乗ることができる。当時、立ち上げに参加したワイナリーはわずか25社。現在、会員数はほぼ倍増している。
続きは、WANDS 9月号
【特集】オーガニックワイン2022 さらなる旨さを求めて こだわりのビールで活性化へ
をご覧ください。
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