ドメーヌ・ラ・クロワ・モンジョワ(ヴェズレイ)

2009年にヴェズレイに入植。古い農場を取得してゼロから醸造、熟成施設を造った。

 

text&photos by Toshio Matsuura (Paris) 取材協力:ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)

2009年に入植したばかりながら
ヴェズレイの模範的ドメーヌに

ドメーヌ・ラ・クロワ・モンジョワはマチュー・ヴォワレ氏が、モンペリエ大学で農学、醸造学を一緒に学んだソフィー夫人と2人で、2009年に始めたドメーヌ。2018年の秋に訪問した際、買い取った農場を改装し、醸造設備と熟成庫を建設していたが、それらがほぼ完成し、個人醸造家らしい体裁が整っていた。

当初10haだったブドウ畑は、新植したり、畑を賃貸して少しずつ増やし、現在、15haを耕作。2018年にオーガニックに転換し、全ての畑で認証を取得した。

2021年の霜害でドメーヌは全収穫の80%を失った。そのため、昔から良く知っているリムーの生産者からワインを購入し、あえて産地を表示せずヴァン・ド・フランスで販売。不足を補っている。

ドメーヌ・ラ・クロワ・モンジョワは、オーナーのマチュー・ヴォワレ氏(右)を家族全員が支え、名声を築いてきた。

シャルドネを使った白ワインをこれまで中心に作ってきたが、フランス南部で働き、赤ワインの醸造に精通しているヴォワレ氏は、2012年からイランシーの栽培家から約2ha分のピノ・ノワールを購入し、赤ワインの自家醸造を始めた。ヴェズレイとイランシーは約40km離れているが、質を管理するために、ドメーヌのスタッフが出向いて収穫し、ケースに入れてトラックで運ぶ。醸造をタンクで行い、その後1年間樽熟成するクラシックな造り。ピュアで繊細なピノ・ノワールの果実味が良く表現されている。

このほか、ピノ・ノワールを使ったAOCブルゴーニュの赤、クレマン・ド・ブルゴーニュ、さらにラタフィア・ド・ブルゴーニュ、マール・ド・ブルゴーニュなども生産している。しかし、主力の製品はAOCヴェズレイの3つのキュヴェ、「アンパシヤント」、「エレガント」、「ヴォリュプトゥーズ」だ。生産量は年によるが、順に3万本、2万本、1万本。

ヴェズレイの一部とイランシーの熟成に228lの樽を使っている。地下の階段が狭く、大きなフードルは今のところ使っていない。

地下カーヴには228lの伝統的なブルゴーニュ樽が並べられている。樽材は比較的木目の荒いもの選び、ヴァニラやトーストのニュアンスがあまり強く出ないように軽く、やわらかい炙り具合で仕上げている。少し大きな容量の樽も検討しているが、古い農家の建築の構造上、大きな樽の移動には限界があるという。

ヴェズレイは観光地として知られ、年間100万人のツーリストが訪れる。ドメーヌの販売の1/3は、評判を聞いてドメーヌに立ち寄る観光客が持ち帰るもので、ワイン・ツーリスムが大きく寄与している。さらに1/3が輸出、1/3がレストランとワイン専門店だ。

今後、区画ごとに醸造し、区画名を付けた新しいキュヴェを造る計画を立てている。また、ドメーヌに客を迎え、ワインの文化的な側面、ガストロノミックな価値、歴史などを伝えるために、試飲を充実させる計画だ。

●ヴェズレイ アンパシアント 2020/ステンレスタンク発酵、ステンレスタンク熟成。シャブリと同じシャルドネを使った白ワインだが、シャブリは主として石灰質土壌、ヴェズレイは粘土質土壌で、ミネラルでキレのあるシャブリに対し、ヴェズレイは果実味、丸みが感じられる。とくに、アンパシアントはヴェズレイの特徴をストレートに表現するため樽は一切使わず、ピュアに仕上げてある。柔らかいアタックを経て、最後にヴェズレイの特徴であるわずかな苦味が感じられる。これがフレッシュさをもたらす。

●ヴェズレイ エレガント 2020/少し樹齢の高い、石灰質土壌のブドウを選んでいる。3/4がタンク発酵、1/4が樽発酵。新鮮さと味わいの持続性を求めているので新樽は使わず、5年以上使った古樽だけを使用。今のところアンパシアントに比べると表現は少し控えめだが、味わいの持続性が感じられる。グレープフルーツなどの柑橘とともに、少し塩のニュアンスがあり、個性が感じられる。

●ヴェズレイ ヴォリュプトゥーズ 2020/収穫率を切り詰めた、南向きの畑のブドウを使う。100%樽発酵。新樽率20%。1年間樽熟成。まだ樽香が溶け切っていないが、内容があり、味わいに深みが感じられる。

 

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