コルチャグアのコイレ ウンドラーガ家の新プロジェクト

ウンドラーガ家の新しいプロジェクト、コイレKoyle が軌道に乗っている。

ウンドラーガ家6代目の醸造家クリストバル・ウンドラーガがこのほど来日して現況を語った。ビニャ・コイレは2006 年にチリのロス・リンゲス(コルチャグア・アンデス)に設立された新しいワイナリーだ。ウンドラーガ家はボックスボイテル(昔の皮袋を模した丸いボトル)の瓶形で長らくワインを販売してきたチリの名門だが、近年、マイポのワイナリーなどを売却し、ロス・リンゲスで家族経営ワイナリーを始めた。

 

ブドウ畑のあるロス・リンゲスはアンデス山脈の麓で、コルチャグア・ヴァレーでは最もアンデスに近い。アンデスのなだらかな西南向き斜面に80haのブドウ畑を開墾している。斜面は3 段階のテラスになっており、最も低い一段目は粘土質に野球ボール大の小石が混ざっている。2006 年に6,000本/ha の植樹をしており、その収量は1.5kg/ 本である。二段目のテラスは粘土質が15~20%でここにサッカーボール大の石が混ざっている。植樹密度は7,000 本/haで収量は約1kg/本。そして最上段の三段目は粘土質が5~10%と薄くなり、大きな玄武岩の塊がたくさんある。最も開墾に手間のかかった区画で2009 年に植樹した。第三テラスの植樹密度は8,000 本/haで、収量は800g/本。耕作法はビオディナミ農法を採用している。

 

鉄分をたくさん含んだ玄武岩の多い第三テラスのブドウ(モナストレル、ガルナッチャ、カリニェーナ、シラー)で造ったのが「セロ・バサルト」。400 ℓ樽、エッグタンク、フードルなどを使って熟成している。スパイスやラズベリーなどのアロマ、滑らかなタンニンときれいな酸味のバランスがとれている。アルコール分は14%。

 

トップ・キュヴェはアウマAuma。このワインは父・アルフォンソへのオマージュ。Alfonso Undurraga Mackenna の頭文字をとってつなげたもの。こちらはカベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール、マルベック、プティ・ヴェルドのボルドー品種にシラーを13%ブレンドした。アルコール発酵が終わってから澱とともにエッグタンクに入れて9か月。自然に澱の成分を抽出している。プラム、白胡椒、鉛筆の芯などの香り。口当たりはやさしく滑らかで、深みと厚みがある。これは2010 年のヴィンテージだが、もう少し待つともっと優しいタンニンになると思う。

 

2011 年からは南部のイタタとコルチャグア・コスタのパレドネスに目を向け、それぞれ優秀な栽培家と契約してブドウを入手し始めた。イタタはブラルコの栽培家カンデラリオ・イノホサ(ドン・カンデ)からマスカットとサンソーを購入している。いずれも非灌漑地の古樹のブドウだ。「コイレ・ドン・カンデ」のブランドで、マスカット(辛口白)、サンソー(辛口ロゼ、赤)

のワインを造る。近年、チリ南部マウレ、イタタの非灌漑地で栽培するパイスやサンソー、マスカット、カリニャンなどに注目が集まっており、多くのワイナリーがここからブドウを買うようになっている。

 

一方、コルチャグア・コスタのパレドネスからはソーヴィニヨン・ブランを購入している。パレドネスは海からわずか9km のところにあるブドウ畑。コイレはコルチャグアの東端(ロス・リンゲス)と西端(パレドネス)のブドウでワインを造っているわけだ。

パレドネスは海岸山地のただ中にある畑で、その土壌は痩せた崩積土である。赤色粘土にクオーツが混ざっていることが特徴だ。ソーヴィニヨン・ブランのブランド名は「コイレ・コスタ・クアルソ」で、クアルソはクオーツ(水晶)のスペイン語。玄武岩の赤ワインと水晶の白ワインが対になっている。

 

コイレのワインには、「レセルバ」という名のスタンダード・クラス(シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール)と、プレミアム・レンジの「ロヤール」(こちらもシラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カルメネール)がある。輸入元はヴィレッジ・セラーズ。(K.Bansho)

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