産地徹底取材イタリア/風がめぐる丘陵地アブルッツォ

写真/伝統的なペルゴラ・アブルッツェーゼ仕立てのチャボリックの畑。遠くにグラン・サッソの山頂を望む。

2022年6月、アブルッツォ州ワイン保護協会主催のプログラム「アブルッツォワイン・エクスペリエンス」に参加した。
赤の一強はモンテプルチャーノ、白はトレッビアーノほか固有品種が複数あり、多彩なワイン体験が待っていた。
自然への尊重を第一とし、伝統と革新のバランスの中で、さらに良いワインを世に届けようとする人たちの姿を追った。

取材・文 宮田渚

ローマから北東へ150km。目指すはアブルッツォ州。車で3時間半。巨大な山が目の前に迫ったかと思えば去る。イタリアを貫くアペニン山脈だ。国土の80%が山であると思い知らされる。州を東へ抜ければアドリア海。対岸は異境アルバニアだ。

タラモンティの「トラボケットペコリーノ」のラベルデザインは、伝統漁業で使われる網「トラボケット」とかかったタコ。

アブルッツォ州は土地の65%が山岳地帯で、内陸部を2,500m級の山々が縦走する。春、山側ではスキー、海側では海水浴ができ、その狭間で羊が育ってチーズも肉も地産だ。ブドウ畑のほとんどは、切り立った山と海との境、標高500m以下の裾野に広がる。沿岸部は温暖な地中海性気候。内陸の盆地は大陸性気候で夏は暑く冬は寒い。畑の総面積は3万6,000ha。うち、黒ブドウ品種モンテプルチャーノが半分以上、1万7,000ha。18世紀からこの土地に現存する固有品種だ。ワインの年間生産量は350万hlで、トスカーナ州やピエモンテ州を凌ぐ。生産はキエティ県に集中し、州全体の83%を占めている。丘を照らす太陽、吹き抜ける風、十分な昼夜の寒暖差、水分を保つ粘土質土壌と、ブドウ栽培の好条件が揃う。

グラン・サッソを望むマッラミエロの畑。

 

続きは、WANDS 10月号
【特集】ワイナリー数は400場超に 日本ワインの行方/深淵に触れる ウイスキーの新たな潮流
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