ヴィーニャ・カサ・シルヴァの挑戦 第2回

第2回

《対談》井黒卓× マルセロ・ピノ

チリ富士・オソルノ山麓 ラゴ・ランコのワイン

レストラン・ロージエ(東京・銀座)のソムリエ・井黒卓は、去る4月、ワインズ・オブ・チリに招請されてチリのワイン産地を訪ねた。そこで見たものは、アンデスの麓、アタカマ砂漠の近く、寒風吹きすさぶ海辺、そしてパタゴニアへと続くアウストラル。いずれもブドウ栽培の極限へと突き進むチリワイン産業の新しい動きだったという。

 

マルセロ・ピノ

マルセロ・ピノ

一方、マルセロ・ピノは2016年世界最優秀ソムリエコンクールのチリ代表である。カサ・シルヴァのブランド・アンバサダーを務めるマルセロが、マリオ・パブロ・シルヴァとともに来日した。カサ・シルヴァの新プロジェクト「パタゴニアへの挑戦」を料飲店に勤めるものの視点で日本市場に紹介するためである。日本とチリを代表する新進気鋭のソムリエがラゴ・ランコと新しいチリを語った。

 

マルセロ・ピノ 10年前、DOアウストラルにブドウ樹を植えようと決めた時、多くの人々から狂気の沙汰だと言われました。いまではアタカマ砂漠の南端ワスコでもブドウを栽培しているように栽培の極限へ向かう動きはたくさん見られます。しかし当時は考えられませんでした。ラゴ・ランコは、涼しいだけでなく雨の多い地域です。チリは多雨の条件下でブドウを栽培した経験はありませんでした。過去10年の収穫のうち、3年は雨にやられてまともな収穫になりませんでした。

一方、ここには有利な条件もあります。それは本格的なスパークリングワインを造るために必要なベースワイン用のブドウ、きれいな酸味のあるブドウが育つことです。シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、ピノ・ノワールなどです。

 

井黒卓

井黒卓

井黒卓 どうしてカサ・シルヴァはここにブドウを植えようとしたのですか。

 

マルセロ オーナーのマリオ・シルヴァはこの湖の近くで夏の休暇を過ごします。彼はポロが大好きで馬の飼育もしており、ここは放牧地のひとつでした。ある時、ここにブドウを植えてみたらどうかと思い立ったのです。ラゴ・ランコは火山性土壌で、小石がたくさん混ざっていて水捌けがとても良いのです。雨は多いけれどブドウは水分ストレスをもって育ちます。2006年に初めてブドウ樹を植え2007年に終えました。2010年、2011年と試験醸造を重ね、2012年産をスパークリングのベースワインとして使うことに決めました。翌2013年にはソーヴィニヨン・ブランがファースト・ヴィンテージを迎え、アルコール分が控えめでしっかりした酸味のあるワインを多くのジャーナリストが評価しました。

 

井黒 ラゴ・ランコでブドウを栽培しているのはカサ・シルヴァだけですね。今後、他の生産者がこの地域に入植してブドウを栽培するという可能性はありますか。

 

マルセロ 大いにあると思います。すでにラゴ・ランコよりさらに南でブドウ栽培を始めた生産者もいます。カサ・シルヴァが刺激になって興味をもち栽培計画を立てている人は多いと思います。

 

井黒 私はラゴ・ランコのワインに興味があります。私だけでなくワインを消費する側、サーヴィスする側からいうと、現在の世界的な傾向はデリケートなワインを探すことにあるからです。人々の嗜好は重いワインから軽快なワインへと変化しています。日本食が世界中で注目されているのもその一環だと思います。人々の嗜好が軽快なもの、食事に合うものへと変化しているから、アルコール分の控えめなワインは世界的に評価されるのです。

 

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