1月、OIV登録品種協議会がマスカット・ベーリーAのセミナーを開催

 OIV登録品種協議会は、1月20日、マスカット・ベーリーA(以下MBA)に特化したセミナーを新潟で開催した。MBAは1927年、新潟・岩の原葡萄園の川上善兵衛が品種交雑で生み出した日本固有品種であり、2013年にOIVに登録された。

 MBAは100年ほど前に新潟で生まれ、今では山梨、山形をはじめ、日本全国で栽培されている。新潟では、同県での生産量と他県からの受入数量を合算すると、ワイン用品種ではMBAが最多となる。

 セミナーは前半で、新潟の3軒の造り手が登壇し、MBAの特性や市場の課題について意見を交わした。西蒲区角田浜の新潟ワインコーストを代表するカーブドッチ、同じく新潟ワインコースト内にあるルサンクワイナリー、そしてMBAのふるさと、岩の原葡萄園だ。

 カーブドッチの取締役兼醸造責任者の掛川史人氏は言う。「MBAはブドウの粒が大きいので搾汁率が大きいうえ、アメリカンオーク樽との相性も良いので、樽香のワインを短期間で製品化できる。他の品種との競争力は、MBA単体ではなく、デラウェア、キャンベルなどとともに”食用ブドウのワイン”と銘打って勝負ができる。生食用ブドウの品質は、日本が世界一高い」。

 ルサンクワイナリー代表取締役の阿部隆史氏は、川上善兵衛に感銘を受けて、2015年から新潟でワイン造りに挑戦し、現在、MBAで赤とロゼのキュヴェを造り、将来に向けMBAの自社栽培も検討中だ。「MBAは単一、ブレンド、補助品種など様々な姿で活躍する。一方で、甘ったるい、などの先入観がまだあるが、MBAワインを積極的に紹介すれば、イメージは改まる」と、阿部氏。

 岩の原葡萄園の醸造責任者の上野翔氏も「MBAの魅力は多様性。全国で、それぞれの造り手の想いをのせたMBAが造られている」と、MBAの汎用性の高さを強調する。なお1890年に創業した岩の原葡萄園では、MBAを含めて5種、川上善兵衛が開発した品種を保有している。MBAはベーリーとマスカット・ハンブルグの交雑だが、同じくベーリーを母に持つブラック・クイーンやベーリー・アリカントAとは、ブレンドでも相性が良いという。同社の栽培責任者の和田弦己氏は「川上善兵衛は、本物のおいしいワインを造ろうという想いで品種開発を始め、MBAの苗木を全国へ無償配布し、農家を助けた。この利他の精神を我々も継承していく」と力説する。なお、岩の原葡萄園では有機栽培でMBAを造っている。カエルやヘビなど、生物が多様な土地で樹齢70年超の古木も若木もすくすく育っているという。

 セミナー後半では、ソムリエの岩田渉氏(THE THOUSAND KYOTOシェフソムリエ)と佐々木あかね氏(ソムリエ協会新潟支部長)が登壇、カーブドッチ、ルサンクワイナリー、岩の原葡萄園の計6種のワインとペアリングを解説した。岩田氏は、「造り手が指摘する通り、MBAはスタイルが多様。スパークリング、ロゼ、軽やかな赤から、少し重厚感のあるタイプまでさまざまある。汎用性がじつに高い。またMBAの特徴香のフラネオールは、味噌や醤油にも含まれているので、和食との相性も良い」と概説した。

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