シャトー・レ・トロワ・クロワ フロンサックの土が育むメルロとカベルネ・フラン

AOCフロンサックは、ボルドー右岸の都市リブルヌから北西5kmのワイン産地だ。ドルドーニュ川の北岸にあって、リブルヌを挟んでポムロールやサンテミリオンと接している。パトリック・レオン氏は、1995年、この地で一家のワインを造ろうと決めた。氏はシャトー・ムートン・ロートシルトの元醸造長を長年務めていた。フロンサックを選んだのは、「この土地の土壌と気候にグラン・ヴァンの可能性を見出した」からという。氏が購入したシャトーは、シャトー・レ・トロワ・クロワ。三つの十字架、という響きだが、これは畑が広がる3つの村の、3つの教会にちなんでいる。

2018年にパトリック氏は惜しまれながら逝去したが、氏の3人の子供が家業を継いでいる。「父がワイン造りのすべてを教えてくれた」と、息子のベルトラン氏。

ベルトラン・レオン氏。

畑は標高86mの高台に19.5haある。土壌は、“フロンサックのモラッセ”(砂岩・石灰質砂岩)を含む、粘土質の台地。土壌と栽培品種の相性を非常に重視するベルトラン氏は「粘土質がワインにストラクチャーやまろやかさを、石灰質がミネラル感やフレッシュ感を与える。栽培品種はメルロ80%、カベルネ・フラン20%で、メルロは粘土質と、カベルネ・フランは石灰質と見事に調和する」と説明する。

区画は45あり、区画ごと、丹念に世話をする。収穫は手摘み、選果は2回、完全除梗。熟成にはオーク樽を使用し、新樽比率は全体で、毎年3分の1程度である。

「レ・トロワ・クロワ・ロゼ 2022」は1995年から造り続ける伝統の作品だ。味をフレッシュにするため、粘土質ではなく石灰質区画のメルロを使う。醸造はダイレクトプレスなので味がしっかりと詰まる。柑橘や赤い果実でみずみずしく、フルーティでありながら塩味も感じる。

赤ワインはメルロとカベルネ・フランのブレンド。
「シャトー・レ・トロワ・クロワ ルージュ」の2018年は、先代のパトリック氏が関わったラストヴィンテージ。ブドウがほぼ完璧に熟し、バランスに秀でた年となった。ベリーやダークチェリーの果実味が生き生きとし、タンニンも酸もしっかりとしている。アルコール度数は14.5%だが、酸が高いので重さを感じない。

2011年は、9月以降、悪天候に見舞われた年で、完熟を待たずして収穫したため、タンニンの抽出にはとくに気を配ったという。柔らかく膨らみのある黒い果実味で、余韻も大変長い。果実味の溢れるメルロが持ち味になっている。

ベルトラン氏は言う。「グラン・ヴァンになれるワインは、若いうちに飲んでもバランスが秀でている。バランスのとれたワインを造るのはとても難しい。たとえば力強いワインがあっても、バランスが良くなければ、その強さが長所とならない」。

 

「ヴィラ・マリー」は樹齢80年以上の古木から良年のみ造られる特別なキュヴェ。2016年と2012年を垂直試飲したが、味の違いが明確で実に印象的だ。

2016年はメルロ86%、カベルネ・フラン34%。香りはスモーキーで、熟したタンニンが特徴。カベルネ・フランの比率を増やすことで、ミネラル感と繊細な果実味を加え、エレガントに仕上げた。

2012年はメルロ92%、カベルネ・フラン8%。新樽で17か月熟成。メルロは完熟したが、カベルネは良いものが少なかった年。口当たりがなめらかで、タンニンは細やかで、まだ若々しく、さらに熟成できる。

「単一品種の赤を造ろうと考えたこともあったし、マルベックやプティ・ヴェルドをスパイスのように少量ブレンドしようと思ったこともある。しかし我々にとって大切なのは、メルロとカベルネ・フランが互いに補い合って生まれる味。それをこれからも造っていきたい」と、ベルトラン氏は述べた。

輸入元:ミレジム

 

(N. Miyata)

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