類い稀なプロジェクト ”Ao Yun” シャングリ・ラ 2500mの高地で

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< ”Ao Yun” の特異性>

マクサンス・ドゥルー

マクサンス・ドゥルー

まさに陸の孤島で、すべてを仕切る人とは一体どんな人物なのかと尋ねた。冒険心とチャレンジ精神のあるその人は、ボルドーで生まれ育ったマクサンス・ドゥルー。妻子と共に理想郷へ向かった。

初ヴィンテージとなる2013年を試飲した。まず、色がとても濃いのに驚いた。透き通る部分がまったくなく、濃い黒い赤色でグラスの向こう側が見えない。

香りは閉じているが、明確なスパイシーさが感じられる。ほんのり青さもあるが、芯のある深みのある香りだ。全体に上品な味わいで、酸がしっかりとしてミドルパレットに凝縮感が感じられ、タンニンは豊かだがとても細やかでシルキー。とても濃いが、上品な仕上がりで、今までに出会ったことのないスタイルだった。

しかも、アルコール度数が15%もあるという。通常アルコールがここまであれば、口中でたっぷりとしたボリューム感があるが、繊細なテクスチャーでpHも3.5だという。

「アルゼンチンのカファジャテのほうが、ここより少し標高は低い。この高さだと酸素が平地より20%薄いため、マセレーションや熟成、SO2の加減についても、通常とはまったく異なる条件にある」。アルゼンチンでの低緯度・高高度の経験が、ここでも生きそうだ。

そして他にも特殊な条件が揃っている。

decanter一般的には、開花から収穫まで100日が目安となる。しかし、ここでは160日もかかる。理由は「ボルドーは成長期の日照時間が14時間もあるが、ここでは朝10時から夕方4時頃まで6〜7時間しかない。6,000m級の山も控え、最高気温28〜30℃まで上がるが、夜間はすぐに15℃まで下がる」。しかも、雨が降らないからじっくり成熟するまで待てるのだ。

発芽は4月末から5月初めなのでボルドーと同じぐらいだが、収穫は11月。「長い成長期を経ること、標高が高いため蒸発が多いことから小粒になり(紫外線などの影響も加わり)その分果皮が厚くなることから、豊かでシルキーなタンニンが得られる」というわけだ。

2013年は、カベルネ・ソーヴィニヨン78%、メルロ22%のブレンドで、24,000本だけ造った。選果台もない。温度管理もできない。一応樽は買ったが、白酒用の甕(かめ/西洋風に言えばアンフォール)なども駆使して造った。

「ここならワールド・クラスのワインが造れる!」と、3年のリサーチの末に下した決断は、確かなものだった。日本での発売は、今年9月を予定している。(Y. Nagoshi)

トップ画像:撮影のため、まだラベルのない空き瓶をもらって帰った。ボトルにはわずか1cmにも満たないワインが残っていたので、抜栓から3日も経過していたが味見してみた。まったく酸化していなかった。これも開花から160日のマジックかもしれない。

(一部画像提供:MHD モエ ヘネシー ディアジオ)

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