■2015年はカリピノ年になりうるか?
今年ほど日本でカリフォルニアのピノ・ノワールに注目が集まった年はない。一年の折り返し地点を過ぎたばかりで、こう言いきってしまうのも気の早い話だが、過去にこんな例はなかったように思う。
毎年4 月と5 月にワインインスティテュートが展開するバイザグラス・プロモーションのマストアイテムは、一昨年のソーヴィニヨン・ブラン、昨年のロゼに続き、今年はピノ・ノワール。3 月にその仕入れのための試飲商談会があり、このタイミングに合わせて複数のメディアでカリフォルニアのピノ・ノワールについての記事が掲出したから、その方面にアンテナを張っている人には否応なく目に飛び込んできたに違いない。
バイザグラス試飲商談会に遅れること1 か月ちょっとの4 月中旬、同じ大阪と東京で、カリフォルニアのピノ・ノワールとシャルドネに特化した生産者団体IPOB の海外初のイベントが開催された。今年の春はまさにこの二つのエリアにカリフォルニアのピノ・ノワールの洪水が押し寄せた形だ。そしてカリフォルニアを含むピノ・ノワールが飲めるイベントとしては、この雑誌が出る7月上旬には「 ピノ・ノワール・セレブレーション・ジャパン」が開催。同日に展開されるチャリティイベント「ワインエイドfor East Japan」も、毎年の来場者からの人気に応え、今年はピノ・ノワールを多めに用意した。
同じ週に開催のオンラインワッシーズ東京試飲会ではカリフォルニア・フランス・NZ・オレゴン・チリから20 種類を超えるピノ・ノワールをオンリスト、その前日はカリフォルニアでピノ・ノワールづくりを極める醸造家アキコ・フリーマンの来日イベントと、これまた凝縮したピノ・ノワール週間となった。
日本のワイン愛好家間でのピノ・ノワール好き人口比率は高い。赤のメジャー品種の中ではタンニンが軽く我々の食生活に寄り添うし、昔からブルゴーニュ赤はボルドー赤と並び高級ワインとして贈答品にも用いられて来たから、選ばずして口に入る機会の多かった馴染み深い品種だ。
ただ、ここに来て大きく変わって来たのは、必ずしもピノ好き=ブルゴーニュ好きとも限らなくなっていることだ。勿論、ワインコニサーには、依然としてブルゴーニュしか認めない「ブルヲタ」が多いが、一方で「カリピノ」という言葉に共感し、高額の対価を支払って楽しむ人は増えている。他国の優れたピノ・ノワールも数多く流通しているが、このように略称が定着するだけの認知と人気を獲得している点で「カリピノ」は一歩先を行っている。(S.Kondo)
写真;マウント・エデン。畑の下に広がる霧
つづく/これ以降の内容につきましては、「ウォンズ」本誌「7・8月合併号」の米国西海岸のワイン特集をご覧下さい。WANDS本誌の購読はこちらから
<これ以降の内容>
■IPOBこぼれ話
■カリフォルニア現地では
■オールド・ファッションの優美なピノ
■異色のニューカマー
■モードは繰り返すのか?
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