- 2017-8-22
- Wines, イタリア Italy
地中海最大の島シチリアは、多くの民族の影響を受けてきた複数の文化の坩堝だ。そしてある生産者はこう言っていた。「シチリアはまるでひとつの大陸のようだ」。つまり、地域により気候や土壌などの条件が異なるため、多様なワインが生まれる、という意味だ。本当にエキゾチックな島だ。
バルクワインの源から、国際品種による洗礼を受けてイタリアの新世界と呼ばれるようになった後、皆がこぞって伝統的な地元品種を尊重する方向へ動いている。
国際品種で一世を風靡した造り手は「世界的に知られている品種を使うことで、この島のワインのクオリティに目を向けてほしかっただけ」だと言っていたことを思い出す。最終的には地元の品種で世界舞台に立ちたいが、まずその前に量ではなく品質の高さで注目を浴びる必要があり、そのための前座で国際品種に演じてもらったということになる。とすれば、いよいよメインの舞台が始まった。4月末に開催されたシチリア・アン・プリムール14回に参加し、その現状を垣間見た。
エトナの名声を確立したベナンティが創業した1988年当時、ワイナリーは4社しかなくほとんどの栽培家は葡萄を販売していた。ところが、現在では約140社にも増えたというから驚く。ちょうどこのプリムール試飲会のスピーチでジュゼッペ・ベナンティは「バルバレスコのガイアもすでにエトナで畑を購入すると決めた」と、最後に嬉しそうに付け加えた。エトナワインの生産量は、シチリアワインの4%にすぎず小さな産地に変わりはないが、内外からの投資が相次ぎエトナはさらに活気づきそうだ。
+++
<エトナのワイナリー訪問記>
シチリア各地に合計500haの畑を所有し、すべて自社畑だけでワインを造る方針のクズマーノは、2008年から新天地を探していた。そしてようやく2013年に心は決まった。ベナンティからのアドバイスもあり、エトナ北部5か所のコントラーダに畑を購入した。
<エトナは化粧なしで>
そのひとつ、コントラーダ・ヴェルツェッラにワイナリーを構えた。地下のワインセラーの壁はこの地の土壌がむき出しになって見える。選果した葡萄は優しく除梗され、地下のステンレスタンクへ移動する。
「5か所で標高が800〜1000mと異なり収穫も15日違うから、すべて区画ごとに醸造する」と、ディエーゴ・クズマーノは説明する。
42のタンクでの醗酵は、収穫の10日ほど前にあらかじめ培養し始めたピエ・ど・キューヴを使用する。「エトナは美人だから、なるべく化粧しないようにしている」。
垂直式圧搾機を用い、白は17℃で醗酵し半年ほどタンクで貯蔵したのちに軽くだけフィルターをかけて瓶詰めする。赤は15-18日タンクで醗酵させデレスタージュのみ行い、マロラクティックが終了してからトノーと大樽で熟成させる。
高い茶色、という意味の「アルタ・モラ」と呼ばれるエトナのプロジェクトは始まったばかりだ。「エトナは赤で有名だが白も素晴らしい。友人に白を飲んでもらったら『塩水を入れたのか?』と聞かれた。それだけ個性が秀でている」とディエーゴは笑っていた。
Alta Mora Etna Bianco 2014 カリカンテ100%。ピエトラマリーナとミロ。(ピエトラマリーナは、3haに3品種を栽培)。標高600mにあり深い砂岩土壌で、アロマが豊か。フレッシュな夏で、10月初めから湿度が低く日較差が大きく、10月15日から収穫開始。素晴らしい収穫だった。熟したシトラスの香りが豊かで、オイリーさもあり酸もフレッシュで、塩気も感じられる。
Alta Mora Etna Rosso Guardiola 2014 コントラーダ・グアルディオーラは、800〜1000mの半劇場形の斜面の畑。すべてネレッロ・マスカレーゼの7haのうち3haは樹齢150年だが、残りはテラスを造成から始め、株仕立てで植樹した。北東向き。「開くのが遅い」。閉じているが厚みがありほんのりスパイスも。アタックはまろやかでボリュームもあるがタンニンもしっかり、フェウド・ディ・メッツォと比べると上品さが秀でている。
Alta Mora Etna Rosso Feudi di Mezzo 2014 標高650m。北東向き。古木もある。グアルディオーラと2km離れている。より果実の熟度が高くボディが強い。赤い果実の香りが立ち上り、力があり収斂性もしっかり。(Y. Nagoshi)
そのほかの記事 <シチリアの象徴的な赤 ネロ・ダーヴォラNero d’Avola – The signature red by Mark Pygott MW> <エトナのワイナリー訪問> ベナンティ Benanti、バローネ・ディ・ヴィッラグランデ Barone di Villagrande、グラーチ Graci、コッタネーラ Cottanera、カンティーナ・トルナトーレ Cantina Tornatore、パルメント・コスタンツォ Palmento Costanzo
につきましては、WANDS 2017年7&8月合併号をご覧ください。 ウォンズのご購入・ご購読はこちらから デジタル版もできました!
最近のコメント