- 2018-1-5
- Wines, イタリア Italy
ピエモンテといえば、まずバローロやバルバレスコなどネッビオーロの赤ワインを思い起こすが、歴史的に忘れてはならない品種にモスカートやバルベーラがある。そして近年注目されているスパークリングワインの生産も見逃せない。
「チェルッティ」は、1930年代にエンリコ・チェルッティが興したワイナリーで、アスティとモンフェッラートの間に拠点を置き、6haの畑はカネッリからカッシナスコに所有している。カネッリという地名に聞き覚えはあるだろうか?
最上のモスカート・ダスティの産地のひとつがカネッリだ。モスカート・ダスティに使われるブドウ品種は、フランス語でいえばミュスカ・ブラン・ア・プティ・グランなのだがその同義語のひとつがモスカート・ディ・カネッリなのだ。つまり、それほど昔からモスカートとカネッリは切っても切れない関係にある。
正直なところ、甘口ワインはそれほど試飲する機会が多くない。モスカート・ダスティは何度か味見をしたことがあるけれど、それほど惹きつけられたこともなかった。だから「最上のモスカート・ダスティの産地」と言われても、頭の中では「そうですか」と思うのだが、実際にどれほど品質に差があるのだろうか、と疑問に感じていた。
しかし、チェルッティのモスカート・ダスティを試飲して溜飲が下がる思いがした。理由は、アロマティックな香りが単にアロマティックなのではなく、そこには複雑性も感じられたからだ。
そこで、カネッリの畑の条件を少し調べてみた。
急斜面の畑で、基本的に石灰質土壌で、収穫量が低い。加えてカネッリのモスカートの生産者は厳しい品質基準をもち、他との差別化をしているようだ。その結果「しっかりとしたアロマと酸」を備えたモスカート・ダスティができあがる。加えて、チェルッティの畑は砂が多いため、香りが華やかになる。
また、チェルッティではピノ・ノワールとシャルドネによるスパークリングワインを造り始めている。おそらく今の当主のジャンマリオの時代になってからだと思う。現在は24ヶ月瓶内熟成のBrut Traditional Method V.S.Q.だが、いずれはアルタ・ランガ(瓶内熟成30ヶ月以上)へ転換する予定だという。
さらに、今回は試飲していないが標高が低い畑ではバルベーラも栽培しておりバルベーラ・ダスティを造っている。これはいずれバルベーラ・ダスティの中でも最も厳しい条件を課せられたニッツァへ昇格するようだ。
このピエモンテの南側の地域で生まれるワインは、バローロやバルバレスコのような威厳があるわけではない。むしろ、日常に近い親しみやすい雰囲気のある、しかしそこに丹精込めた手の温もりがあるワインが見つかる。もちろんその分懐にもやさしい。
日々の食卓で、あるいはトラットリアやリストランテで仲間とともに楽しみたいワインたちだ。
Piemonte Chardonnay “Riva” 2014
一部ステンレスタンクで、一部樽で醸造。9ヶ月シュール・リー。瓶詰め後20ヶ月熟成させてから出荷(BB&R用のRivaは、チェルッティの通常のRiva Grandaより1年長く瓶で熟成させてから出荷している)
ミラベルや生の杏のようなストーンフルーツ、柑橘類など、熟した果実の香りには粘性も感じられる。なめらかな食感で、酸はフレッシュ。塩レモンのような、柚子のようなあまり鋭角的ではない酸のある、ジューシーで生き生きとした味わい。
Enrico Cerutti Brut Metodo Classico
ピノ・ノワール90%、シャルドネ10%。24ヶ月瓶内熟成。
桃、ラズベリー、はちみつ、ほんのりとトーストなど、丸みのあるやさしい香り。ふっくらとしたアタックで、柔らかな香りと味わい。後味はフレッシュ。
Moscato d’Asti Canelli “Suri Sandrine” 2016
マスカット、スパイス、オレンジ、白桃、蜜など、複雑性のある香りで、森や草原など自然の風景を思い起こすような香り。甘いが酸もフレッシュで、ほどよい軽快感。フルーツタルトやおせち料理にも良さそう。イワシなどの南蛮漬けにもとてもよく合った、という情報も得た。 (Y. Nagoshi)
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