ProWein 2018 成長続ける世界最大の国際ワイン・アルコール飲料展 日本産酒類パビリオンの成功に見る出展の極意

ProWeinが今年も記録を更新した。3月18日からの3日間の総来場者数は133か国から6万人超と過去最多。昨年の130か国5万8500人から大きく飛躍した。総出展者数も64か国から6870社と、前年の62か国、6615社から数字を伸ばしている。来場者3人のうち2人が購買決定権を持ち、2人に1人が新規開拓できているという点は昨年と変わらず。95%弱の来場者がProWeinで目的を達成できたと回答している。安定的な評価と伸びを見せ、ワイン展示会として世界一の地位を誇るProWein。昨年は来場者目線で豊かな国際色や会場の使い勝手の良さをレポートしたが、今年は出展者の視点にも立ち、プレゼンテーションの工夫や成功の秘訣などを分析してみる。

 

大成功のジャパン・パビリオン

 

 日本産酒類プロモーションブース“ジャパン・パビリオン”は、今年は国税庁からの特別予算が付き、180㎡の大規模なブースを構えた。出展は25社と、9社が出展した昨年の共同ブース“テイスト・オブ・ジャパン”より大幅に拡張。提携したジェトロによれば、商談件数680件、成約件数22件、成約見込み件数210件。独創的なテーマ設定のセミナーによる集客が功を奏し、ともすると収束ムードになりがちな最終日の午後まで、このパビリオンは賑わいを見せた。出展者のうち11社が来年も出展したいと早くも意欲を見せている。

パビリオンをプロデュースしたメッセ・デュッセルドルフ・ジャパン代表取締役社長Dr.アンドレアス・メルケは、成功を振り返ってこう語る。

「セミナーでは、ProWeinでは前例のない新奇性あるコンテンツを作ることに砕身した。ボルドーで開催のヴィネクスポやパリで開催の日本酒を中心とした日本の飲料交流イベント『サロン・デュ・サケ』を視察。フードペアリングの講師として、パリ在住のサケサムライで サロン・デュ・サケ主催者であるシルヴァン・ユエに白羽の矢を立てた。今日ヨーロッパで日本酒がよく売れているのは、カジュアルな和食店よりも星付きレトランなどの高級店。ヨーロッパの食との相性を魅力的に訴求できる中立的な日本酒有識者として、ユエを起用した」

「セミナー5回の内訳は、日本産ワイン1回、日本酒ベーシック2回、日本酒上級としてフードペアリング2回。ペアリングはフィンガーフード編(スモークハム・スモークチーズ・15時間燻製アンガス牛のブリスケッタ) と、スイーツ編(マカロン、チョコレート、イチゴ・マンゴー・メレンゲをあしらったフルーツサラダ)とがあり、後者がとりわけ好評だった。ユエは、日本酒の持つアミノ酸由来の旨みについて解き、ワインとは一般的に合わせにくいと言われる食材、例えば卵やフルーツなどにも合う万能性をテイスティングで立証。各国からのセミナー参加者にはインパクトあるものとなった」。

メルケが次に思い描いているのは、高級店のソムリエやシェフなど対象を上級者に絞ったワークショップ。例えば日本の製法で作ったドイツ産味噌があるが、このような素材を使ってペアリングを試みるなど。

一方、日本ワインのセミナーはサッポロビール・グランポレールワイナリー工場長の工藤雅義とアンソニー・ローズMWとの二人三脚で甲州とマスカット・ベーリーAを試飲させ

ながら地域・気候・品種などの基礎情報を講義した。日本の生産者からの発信と外国の専門家の分析という形で説得力を持たせる分かりやすい構成。受講者に印象を聞いた。

甲州を初めて飲んだというイタリアの女性ソムリエは、繊細でフレッシュ、微かにフローラルな味わいはアペリティフに良く、12℃くらいで供出すると魚料理にも合うだろうとサービスのシーンをイメージ。イタリアのワインファンサイトを運営する男性は、アロマの余韻は長いが、控えめで柔らかな味わいはイタリア料理より遥かにデリケートな料理に合いそうで探求心をくすぐられる、とコメントした。

パビリオン内にひしめき合う出展者は、それぞれのスタイルで自社の商品をアピールしていた。菊正宗酒造はチロリを使って燗酒で温度帯による味わいの違いを訴求した。熱燗とコンテやブルーチーズと合わせる提案も。甘みと旨みが増す熱燗は欧米人の口に合う、特にグリューヴァインやヴァンショーなどワインを温めて飲む国の人々には抵抗がないそうだ。(中略)

 

輸出好調なドイツワイン

ドイツワインの輸出は伸びている。ドイツワインインスティトゥート(以下DWI)によれば、昨年1年間、世界124か国に輸出され、数量・金額ともに前年比7% 増。4番目の市場である英国が伸び悩みの長いトンネルを抜けて増加に転じたことが牽引している。生産者とインポーターと専門店3者のマッチメイキングで実施したリースリング・ウィークが成功。公園でのピクニックなどアウトドア消費を促す施策がリープフラウミルヒを知らない世代にうまくはまった、とDWI プレス部門の部長エルンスト・ビューシャーは分析する。

大幅に伸びている中国は5位に上昇、ポーランドでの販売量は倍増。最大輸出国は変わらず米国で、輸出収入の約4分の1を占め安定的。日本は数量減だが金額は9%増と、成熟市場としては安定的な伸びだと評価する。今年11月に日本でRiesling & Co. の実施を計画している。

 

次世代消費を促すクールなドイツワイン

DWIのProWeinパビリオンではクールであることをファクターに集めた“Germany’sCoolest Wines”のラインナップを披露。エントリー385件のワインの中から専門家による

ブラインドでの味覚審査やビジュアル及びコンセプト評価を行う。最終選考に残った20アイテムがDWIのウェブサイト上で公開され、3週間のオープン投票を実施した。国内外

8500以上の投票結果を集計した結果、モーゼルの若手生産者集団リースリング・カルテルの“カルテル・キュヴェ”が勝者に。メンバー6ワイナリーのキュヴェで、マフィアの麻薬カルテルを想起させるビジュアルでありながらも、アプローチャブルな味わいで国内価格8.9ユーロのリーズナブルなワイン。

 

つづきはWANDS 2018年5月号をご覧下さい。
ウォンズのご購入・ご購読はこちらから
紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!

WANDSメルマガ登録

関連記事

ページ上部へ戻る