昨年5月に第1回が開催されたクラフトカクテル体験イベント「東京カクテル 7 デイズ 」は、今年は期間を若干延長し5月18日から27日まで行われた。ウエッブマガジン「ドリンク プラネット」を運営するセロリによる主催だ。メイン会場の「Village」では18日から3日間にわたり、8つのブランドカクテルのポップアップバーが設けられたり、カクテルマルシェやセミナーも行われた。
「ヘネシー・カクテル・ショー」座談会 バー・カルチャーにおけるサステナビリティ
プロフェッショナルを対象にしたセミナー「ヘネシー・カクテル・ショー」は、ヘネシー・ブランド・アンバサダーのランドル・マカナキ氏が講師を務め、ゲストバーテンダーはスピリッツ&シェアリング代表の南雲主于三氏と、ヴィーノジャパン代表の清崎雄二郎氏の両名だった。
セミナーはマカナキ氏によるヘネシー・コニャックの歴史と概要の説明に始まり、ゲストバーテンダーを交えたトーク、さらにはヘネシーを使ったカクテル・ショーへと展開した。この中でゲストバーテンダーが語った最新バー・カルチャー事情、とりわけ南雲主于三氏が語ったサステナビリティへの取り組みについての話が興味深かった。南雲氏が語ったバー・カルチャーにおけるサステナビリティについての話の一部を紹介しよう。
まずはゴミを減らす取り組み
「先日私が参加したシンガポールのバーイベントでも、最初に出た話題はサステナビリティについてでした。まずは環境へのインパクトを考慮して、ゴミを出さないこと。そのためにレモンやライムを使わないでカクテルを作ろうという議論があります。クエン酸や酒石酸をレモンやライムの代わりに使えば酸味は得られるわけですから。もう一つの方法としては、果実の皮などの捨てる部分を発酵させたり、乾燥したりして、それを再利用するという方法です」
シンガポールの人気バー「ネイティブ」ではゴミの減量に取り組み、すでに1日100g以下を実現しているという。
「しかし、私が述べたような方法で生ゴミを減らすためにはストックや作業のためのスペースが必要になりますよね。つまり、お金がかかるわけです。そこをどうするか? 行政に支援を仰ぐか、そのための法律の整備はどうするのかというところまで議論は行っていました。ヨーロッパでは水の再利用についても真剣に取り組んでいるようです」
“廃棄物”のカクテル
こういった動きは「美味の追求」というバー本来の姿とは逆行するところがあると南雲氏は認める。しかし、その姿勢に賛同する人が顧客になるという動きが遠からずメインストリームになり、最終的には店側にとっても利益になるだろうと読む。「ヴァン・ナチュールを好んで飲む人がいるように、バーに行くなら環境に配慮した店に行くという人が増えると思います。ゴミや水の問題以外にも、卵白など動物性の材料を使わないとか、そういうことをアピールする店もすでに出てきています。シンガポールで“ハスク”というカクテルを飲みました。ハスクとは殻や外被のこと。このカクテルには、果物の皮などをシェリーに漬け込んだものが使われていました。果肉ではなく、これまでは廃棄されていた部分から香りを取るという発想で、それがそのカクテルのメインコンセプトになっていました」
日本でも酵素作りがブームになるなどすでに下地ができている、と南雲氏は言う。「この10年ですごく変わってくるだろうと予想しています。発酵について、みんながもっと勉強せざるを得なくなるでしょうね」(つづく) (Yasuyuki Ukita)
つづきとカクテル7days関連ページ(麹文化のスピリッツ WAPIRITS TSUMUGI)ははWANDS 2018年7&8月合併号「夏のスピリッツ 特集」をご覧ください。
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