- 2018-9-21
- Wines, その他 Others
メルシャンは、ポリフェノールを多く含んだワイン「ボン・ルージュ・シリーズ」に、8月28日、数量限定のボン・ルージュ・プレミアムを新発売した。このワインにはスーパーポリフェノールのレスベラトロールが通常の3倍(同社比)の1.2㎎/100ml、天然ポリフェノールが2倍の300mg/100ml含まれているという。
このワインの発売に先立って、スーパーポリフェノール(レスベラトロール)とは何か、またレスベラトロールを効率的に取り入れる方法について、キリン社R&D本部ワイン技術研究所の矢内隆章さんと管理栄養士の浅野まみこさんによるメディア向けセミナーが開かれた。今さら聞けないポリフェノールの基礎的な話からレスベラトロールなど専門的な話まで、ていねいに説明してくれた。その概略を紹介する。
家庭の食卓に並び、日常的に親しまれるようになってきた赤ワイン。食事と一緒に楽しむというだけでなく健康機能性のうえでも注目されて、様々な研究が行われている。この研究の鍵を握るのはポリフェノールという成分だが、赤ワインに含まれるポリフェノールは4,000~7,000種類あるともいわれる成分の総称であり、一つ一つの成分の働きやメカニズムには未解明の部分が多く残されている。
メルシャンは、長年にわたって赤ワインの成分研究に取り組んできており、スーパーポリフェノールのレスベラトロールについても20年に渡って研究を続けてきた。
古代ギリシャ時代からワインは民間療法として医療目的にも使われていた。1989年にフランスでは動物性脂肪の消費が多いにも関わらず、心臓疾患による死亡率が低いという調査結果をWHOが発表した。これには赤ワインの消費量が関係しているという、いわゆるフレンチ・パラドックスが良く知られている。さらにフランス人の心疾患による死亡率が低いのにはレスベラトロールも関与しているのではないかとの報告もある。
レスベラトロールは、1940年に北海道帝国大学の高岡道夫教授が、バイケイソウ(毒草)の根から単離・命名したフィトアレキシン(植物がカビや細菌から身を守るために生成する抗菌性物質)のことである。これは数ある赤ワイン・ポリフェノールの一種で、黒ブドウの果皮に多く含まれている。厳しい自然環境で育つ中でブドウ樹が自らを守るために創り出す希少な成分である。
レスベラトロールの研究を開始してから20年、メルシャンはその抗糖尿病作用、血管や心筋細胞の保護、動脈硬化の進行抑制、食餌性肥満の抑制、脳の海馬に依存する記憶力の改善、不安情動の緩和など、心身の健康に作用していることを突き止めた。また、欧米諸国の中でもワイン消費量の多いフランスでは成人肥満率が低いというWHOの報告をもとに、三重大学と共同研究も進めている。そして2015年に「レスベラトロール摂取と内臓脂肪蓄積抑制の関連性」という研究結果をまとめ、レスベラトロールは食事カロリー制限と同様、抗老化遺伝子を活性化し内臓脂肪蓄積を抑える働きがあることを解明した。
このような研究結果から、レスベラトロールを多く含むワインの開発を目指して、その原料ブドウを海外で探すことになった。そして、果皮だけでなく果粒にもたくさんのポリフェノールが含まれているブドウ品種を見つけ、それを安定供給できるサプライヤーも探し出した。これが今回のボン・ルージュ・プレミアムに結びついた。
レスベラトロールを多く含む食品には、黒ブドウ、ピーナッツの果皮、ダークチョコレート、虎杖根(イタドリ)などがある。そして、ブドウ(日本産メルロー)の段階では120㎍/100gのレスベラトロールを含んでいるが、これを発酵して赤ワインにするとその含有量はブドウの3倍以上の400㎍/100mlになる。ワインになると増えるのは、発酵過程でアルコールに溶けやすいポリフェノールが抽出されるほか、育成樽から抽出されるポリフェノールもあるからだ。
赤ワインをどのくらい飲むと健康効果が期待できるのだろうか。厚生労働省の推進する適正飲酒量は1日にグラス1~2杯(125~250ml)だが、この適正飲酒量で十分なレスベラトロールを摂取することができるという。グラス1杯分の赤ワインに含まれるレスベラトロールを他の食材で摂ろうとすると、ダークチョコレートなら1,428g(板チョコ29枚!)、ピーナッツだと5kgも食べなければならない。
さらに嬉しいことに、レスベラトロールは加熱安定性と酸安定性が高いという研究結果もがある。つまり煮炊きをしてもレスベラトロールには変化がないから、ワインを飲めない人でもワインを使った料理から摂取することができるわけだ。また、ワインを使った調理過程で肉類に付着したレスベラトロールは、食事とともに腸管から体内に吸収される可能性があるといわれている。さらに、肉料理といっしょにワインを飲むと、レスベラトロールの体内吸収が促進される可能性も示唆されている。つまりワインを使った料理をワインと一緒に楽しむことでレスベラトロールの吸収効率はぐーんとアップする。
浅野さんがレスベラトロールを摂れる簡単な秋のメニューを2つ教えてくれた。
①「秋刀魚とキノコのソテー 赤ワインソース」
小麦粉をまぶした秋刀魚とキノコをソテーし、赤ワイン、レモン汁、醤油、バターで作ったソースをかける。見た目にもリッチなお料理だ。
②「梨のコンポート」
梨を赤ワイン、砂糖、レモン汁で5分間煮込むだけ。
抗酸化作用、抗糖化作用、内臓脂肪蓄積抑制などに優れた効果が期待できるレスベラトロール。いずれにせよレスベラトロールを効率的で簡単、手軽に摂る方法は、赤ワインを適量飲むこと。「おいしく楽しく赤ワインを飲んでレスベラトロールを摂ってほしい」と浅野さんが締めくくった。(K.Hosogai)
つづきはWANDS 2018年9月号をご覧ください。
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