オートクチュールのネゴシアン ローラン・ポンソ

ドメーヌ・ポンソの名声を築き上げたローラン・ポンソが、2017年にドメーヌを離れネゴシアン「ローラン・ポンソ」を立ち上げた。なぜドメーヌではなくネゴシアンを始めたのか。多くのファンは驚きを隠せなかったのではないだろうか。今春、来日した際その思いを熱く語った。

 

ネゴシアンの理想像とは

実は、10年ほど前から「ネゴシアン」の立ち上げを考えていたという。ローラン・ポンソは、その理由をこう説明した。

「今、ネゴスという言葉は必ずしも品質の高さと結びついていない。だから、それを変えたいと考えている。ブルゴーニュワインが名声を確立するために、長い歴史の中でネゴスが大きく貢献してきた。かつてのネゴスの栄光の時代には、優秀な栽培家から自由にブドウを購入することができ、それぞれのアペレーションを代表する典型的なスタイルを造ってきた。今、私はそれを再現したい」。

ローラン・ポンソは、ご存知のようにブルゴーニュの中でも最高品質のワインの造り手のひとつとして知られる「ドメーヌ・ポンソ」の中心的存在であった。高い品質のブドウを生み出す畑や栽培家の情報もふんだんに持ち合わせ、醸造・熟成、さらにその後の品質管理についても敏感な、いわば完璧主義者とも言える。そのローランが目指すのは「オートクチュールのネゴシアン」だ。

自身でも「ブドウの根から吸収された液体がグラスへ注がれるまで、(息子の)クレメンとともに知恵を使いピュアなワインを造りたい。そのためには完璧なブドウが必要だ」と言う。

2015年から少量造り始めており、2016年は17のアペレーションを、2017年では20と徐々に増やしている。そして、ネゴスであるためのルールをこのように決めている。「すべてのアペレーションにおいて、必ず複数の栽培家から(ブドウ、圧搾果汁、あるいは発酵果汁)を購入する。あるいは、ひとつのAOCで大きな畑を所有している栽培家から買う。例えばコルトン・シャルルマーニュであれば面積が広く多くの生産者がいるが、東・西・南・北と様々な場所から購入する」。これまで多くの生産者が単一畑・単一区画のキュヴェを盛んに生み出してきたのと逆の方向だ。

ドメーヌの時代にはほぼグラン・クリュのブドウだけを扱ってきた人物が、AOCブルゴーニュからヴィラージュ、そしてプルミエ・クリュ、グラン・クリュと、ブルゴーニュ全体をカバーすることになる。

2016年ヴィンテージは合計で47.000本を生産し、2017年は80,000本となった。「私と息子とシェフ・ド・カーヴの3人でできる量まで、最大で20〜25万本までだと考えている」。シェフ・ド・カーヴを務めるのは、14年間ドメーヌで共に働いてきた人物だという。

 

父子でのタッグ

このネゴシアンのプロジェクトは、ローランの3人の息子のうちクレメンが参画し、2018年1月に彼が当主に着任した。ローランは自分名義の畑を6つのアペレーションに所有しており、実際にはそれだけでも生活できるぐらいだったが「より大きなことをしたい」と考えた結果の大きな決断だった。すると、ドメーヌ時代には一緒に仕事をしたいと言ったことがなかったクレメンが助力を申し出たという。それまでは、車の塗装などを行うデザイナーで、「ドリフト」ドライブの選手やミュージシャンでもあった。その感性を生かして製作したのがモダンなラベルだ。

ブドウの若葉の緑が上から降りてきて、カーヴの薄暗いダークグレーが下から上っていくようなイメージで、LとPを組み合わせたロゴで映える。

 

 

最新鋭の技術を駆使

ポンソといえば、ワインの品質を守るために最新鋭の技術を用いることでも知られている。ローラン・ポンソのボトルにも、そのこだわりが現れていた。

「20年かけて最良のコルクを再現できる材質を探してきた。4000以上のコルクの密度、弾力、通気性を分析し、劣化せずブショネにもならないものをようやく見つけた。人工の心臓にも使用している材質だ。私のアイデアを元にイタリアのメーカーと共同開発して完成し、特許も(イタリアの会社で)取得済みだ」。

「アルデア・シール」という名称で、イタリアやボルドーではすでに多くのワイナリーが使っているようだ。コルクスクリューを栓の下まで突き抜けるように差し込むのがうまく抜くためのコツだと言う。ちなみに、天然コルクの最高峰はひとつで1.5ユーロするのに対し、こちらは55セントと随分節約できる。

造りについては、「祖父から衛生管理が重要だ、と強く言い聞かされてきたから」発酵はすべてステンレスタンクで行い、熟成は「テロワールを表現したピュアなワインを造るため」新樽は一切使用しない方針だ。そして今年の収穫から最新の機器が導入される。白にはアンフォール型のステンレスで、温度コントロールができて自然にオリが循環する。赤もステンレス製だが形はトロンコニックで。上部の直径は90cmと小さい。新しい機器を使うのが待ち遠しい様子だった。

Bourgogne Blanc Cuvée du Peree-Neige 2016

オークセーデュレス南からリヨンの北までの間の、AOCブルゴーニュの畑から選りすぐりのブドウを探して。フレッシュで柑橘類や梨などの少し硬めの白い果実が香り、なめらかだがミネラルを感じさせるテンションのある味わい。

Geverey-Chambertin Cuvée de l’Aulne 2016

しっとりとしたラズベリーの香りで、果実味が充実しなめらかなテクスチャー。酸はとてもフレッシュだが丸みも感じられる。

Clos St. Denis Grand Cru Cuvée du Merisier 2016

1905年に植樹した0.4haの自社畑のブドウを使用。厚みがあり複雑で深みのある香りで、まだ大変若々しく、味わいもタイトで酸のバックボーンがしっかりとしている。

 

グランクリュのキャップシールにはNFCチップが貼り付けられて、それぞれのボトルの温度変化の履歴をスマホアプリで検証できる。これをブテイユ アンテリジャントと呼んでいる。

どの銘柄にも特別なキュヴェ名が付けられている。白ワインには花の名前、赤ワインには木の名前が与えられているが唯一シャンボール・ミュジニー・プルミエクリュのシャルムだけは花の名前にしたという。ローランは、ディジョンで日本語を学んだときに俳句もたくさん詠んだそうだ。その独特の感性が、ここにも表現されている。(Y. Nagoshi)

輸入元:ラック・コーポレーション

 

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