サヴィニー・レ・ボーヌのドメーヌ・セリニー テロワールを映し出すピュアな造り

幼い頃からブドウ畑で遊ぶのが大好きだったというマリー・ロールは、自然と祖父から多くのことを学んでいたようだ。ふたり姉妹の長女で、ボーヌの醸造学校を卒業するとともに、1988年から父のもとでサヴィニー・レ・ボーヌを拠点とするドメーヌ・セリニーの仕事を始めた。

一方、妹のフランシーヌは薬学を学んでいたが、いつからかワイン造りの道を目指し始め1994年からボーヌの醸造学校へ通っていた。その矢先、父が1995年に亡くなり姉妹でドメーヌを継ぐことになった。まだ25歳、23歳の若さだった。じつはその後、2016年に今度はフランシーヌも急逝してしまい、マリー・ロールはすべてを担うことになった。

曽祖父が始め、祖父から父へ3haの畑が、そして1995年に父からフランシーヌ&マリー・ロール姉妹に5haの畑が引き継がれた。2012年に待望のコルトン・シャルルマーニュもポートフォリオに加わって、今では自社畑は7haになり、10のアペラシオンをカバーしている。

今回、そのうち6つのキュヴェを試飲した。2018年は、暑く乾燥し、ブドウも健全な状態で平年より3週間早く収穫が始まった年だった。しかし、ドメーヌ・セリニーのワインはいずれも「暑さ」はそれほど感じられない、むしろピュアでテロワールを綺麗に映し出していると感じた。それは、畑の立地なのか、古木の畑が多いからか、あるいはセンスの良さからくるものか。

6つのキュヴェを紹介するとともに、ブルゴーニュのクリマに精通するワインジャーナリストの柳忠之氏にもいくつか印象を聞いた。

 

ブルゴーニュ シャルドネ 2018 Bourgogne Chardonnay 2018

平均樹齢30年の0.3928haの畑。丘の中腹に位置する粘土石灰質土壌の畑。リュー・ディは、”Les Perrières”。2〜3年使用樽により発酵・14か月熟成。

素直な香りで、少しトロピカルフルーツのニュアンスも感じる。なめらかなアタックで、粘性もありトロリとした食感ながら、とてもフレッシュで今おいしく飲める。パイナップル系の熟した果実の香りと引き締まった酸の余韻。

 

サヴィニー レ ボーヌ 2018 Savigny-Les-Beaune 2018

平均樹齢25年の0.1712haの畑。リュー・ディは”Les Bas Liards”。もう一つは平均樹齢10年の0.3331haの畑で、リュー・ディは”Les Pimentiers” 。どちらも村の入り口に位置する粘土石灰質土壌。2〜3年使用樽により発酵・14か月熟成。

丸みを感じるトロピカルな香り。バニラ風味と熟した果実が融合した優雅な香り。なめらかなアタックで、酸はソフトだがまとまりのあるバランスの良い味わい。ボリュームもあり後味に若干の苦味あるいはうま味が感じられ、引き締まる。余韻はミネラリー。新世界の冷涼産地のシャルドネ好きにも勧めたい。大変バランスよい。

 

コルトン・シャルルマーニュ2018 Corton Charlemagne 2018

0.06haのアン・シャルルマーニュ区画から、1樽分300本のみ生産。

「コルトン・シャルルマーニュの中でもアン・シャルルマーニュのようですね。この区画はコルトンの丘の南西向き斜面にあります。朝日がなかなか当たらず、夕方はペルナンの丘の陰が早くからかかるので涼しい環境です。なので、2018年のような暑い年にはむしろ有利ですし、気候変動を考慮すれば今後も条件が良いかと思います」(柳・談)。

清楚な香り。熟した果実の上品な香り。なめらかなアタックで、しっとりとしたテクスチャーがとても心地よい。ミネラル感が味わい全体を引き締める。今でもおいしく飲み始められるが、香りがもう少し開いてくるまで待てばさらに優雅になるに違いない。

 

ブルゴーニュ ピノ・ノワール2018 Bourgogne Pinot Noir 2018

平均樹齢30年の合計0.3584haの2つの畑。リュー・ディは、サヴィニー・レ・ボーヌの上方に位置する”Les Chevrières”と、アロース・コルトン村に近い”Les Boutières” 。100%除梗し、破砕せず発酵。キュヴェゾンは約25日。熟成は14〜16か月。生産量がとても少ないブルゴーニュ・ルージュ。

「アロース・コルトン村に近いから、サヴィニー・レ・ボーヌよりもタンニンがしっかりしているのですね。納得しました」(柳・談)。

グラスに注ぐとすぐに香りが立ち上る。ラズベリーなど小さな赤い果実とフローラルな香り。しなやかなアタックで、酸はソフトに感じる。タンニンが味わいを引き締めてフレッシュさを感じさせる、ストラクチャーのしっかりした味わい。後味はジューシー。清楚なラズベリーの香りが余韻に残る。上品だがしっかり筋が通っている。シャルキュトリーや肉料理が食べたくなる味わい。

 

サヴィニー レ ボーヌ セリニシム2018 Savigny-Les-Beaune Serrignyssime 2018

サヴィニー・レ・ボーヌの畑から、最高の区画のブドウだけを選び2011年より生産開始。平均樹齢60年。合計1.2252haのリュー・ディ、”Aux Foumaux”, “Les Pimentier”, Les Grands Picotins”, “Les Petitts Picotins”より。5,400本の生産。100%除梗し、破砕せず発酵。キュヴェゾンは約25日。熟成は14〜16か月。

「ブルゴーニュが意外なほど力強いのでこちらも同じようなスタイルかと思いましたが、こちらはやはりサヴィニーらしいしなやかさですね」(柳・談)。

香りは少しまだ閉じているが、赤い果実の凝縮感ある香り。とてもなめらかなテクスチャーで、酸もいくぶんソフト。細やかなタンニンが味わいを引き締めている。なめらかながら芯はしっかりとして、上品な余韻にはスパイシーさも感じる。

 

サヴィニー レ ボーヌ プルミエ クリュ ラ ドミノード 2018 Savigny-Les-Beaune 1er Cru “La Dominode” 2018

樹齢90年。北東向きの砂質土壌の畑。2,500本の生産。100%除梗し、破砕せず発酵。キュヴェゾンは約25日。熟成は14〜16か月。

香りはまだ少し閉じている。赤い果実とスパイスの凝縮感ある香り。とてもなめらかなテクスチャーで、さらに厚みも増すが上品。しっとりとしている。タンニンは細やかで豊か。余韻に涼やかな風を思わせるニュアンス。大変きれい。

「この1級畑の本当の名前はジャロンと言うようですが、多くの人がラ・ドミノードと呼んでいるとのこと。北東向きですが急斜面で、サヴィニー・レ・ボーヌの最高の畑のひとつとジャスパー・モリスMWは言ってます。ボーヌの近くにあり、マルコネなどと同様に砂を含む土壌で、さらりとしたテクスチャーですね。特に2018年のような暑い年には、こういうクリマは有利です」(柳・談)。

(Y. Nagoshi)

輸入元:ラック・コーポレーション

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