ピーター・ゲイゴがワイン造りの基本哲学を紐解く「ペンフォールズ・マスター・クラス」

「私はこれまでに26 年間ペンフォールズに在籍していますが、(ワインチームも含めて)まだまだ若手に属しています。それほど、ペンフォールズで働く人々にはロイヤルティがあるのです。だから、私はこれから、ペンフォールズについてブランドしてではなくカルチャーとして話をしたいと思っています」と、ピーター・ゲイゴ氏は話を切り出した。

2002年からオーストラリアを代表するワイン『グランジ』をはじめとするペンフォールズのチーフワインンメーカーを務めてきたピーターは、2012 年にマスターオブワインインスティチュートから“ワインメーカーズ・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤー” に選ばれた逸材だ。そうした輝かしい実績は、ワインの造り手としての確かな技量はさることながら、決しておごったところを感じさせずに人を引きつけてしまう謙虚でフレンドリーなパーソナリティによっても裏打ちされてきたのだろう。

 

“ペンフォールズ・マスター・クラス” と銘打って行われた試飲セミナーで、ピーターはさらに話を続けた。

「大改修を終え、二つのレストランとワインセラーなどを併設するペンフォールズのオリジナルワイナリー、マギル・エステートは、アデレイドの街の中心地から車でわずか10〜15 分。住宅地のまっただ中にワイナリーと畑が存在しているのは、シャトー・オーブリオンを除けば世界でも他に無い。アデレイドの街がつくられたのは1836 年、クリストファー・ローソン博士によってペンフォールズのワイン造りがはじめられたのはそれからわずか8年後の1844年のことだった。シャンパン・フリークでもある私が大好きなクリュッグでも、それに先立つこと数か月前に始まったばかり。ペンフォールズには171 年の歴史が脈々と息づいているのです」

 

「かつてワインと言えば、まずはフランスというのが常識だったが、今ではヨーロッパの伝統的なワイン産地だけでなく、世界の様々な地域で良いワインがつくられるようになっている。バロッサもその一つだ」。

「皆さん、音楽でも『これは聴いたことの無い音だ』という経験をされたことがあるだろうが、それと同様にワインの世界でも1 年、2 年も経てばこれまでに味わったことがないような新しいスタイルのワインがどんどんと生み出されている。今やワイン造りの世界は極めて複雑で多様だ。しかし、一口に良いもの(good)とは言っても、そこにはごく普通に良いもの(ordinary) から、偉大(great)と呼ばれるものまで様々ある。我々の仕事は、それらの違いをきちんと見分け、純粋に品質の高いものだけを選び、作り上げていくことにこそあるのです」

 

“異なる地域から収穫された異なる葡萄をブレンドし、最高峰のワインを造る”というのがペンフォールズの一貫したワイン哲学であり、それを体現しているのが、1948 年~1975 年までチーフワインンメーカーを務めたマックス・シューバートによって1951 年に初めてつくられたアイコンワイン「グランジ」だ。

また、グランジに匹敵する白ワインというコンセプトのもとに開発された「ヤッターナ」も、タスマニアとアデレイド・ヒルズという冷涼地の葡萄を使ったマルチリージョナルブレンドのワイン。

そしてこれらのアイコンワインを頂点に、ペンフォールズでは様々なティアのワインを造り出している。“ラグジュアリー”と位置づけられる、RWT バロッサ・ヴァレー シラーズやセント・アンリ シラーズ。各種のヴァラエタルブレンドワインで構成される“BIN”シリーズ、品種の個性をワインに反映させた入門編の「Koonunga Hill」シリーズ、さらに、ピノ・ノワールやサンジョヴェーゼなど特別な畑の特別な葡萄を使い手作り志向の限定生産品としてピーターが初めて作り上げた「セラー・リザーヴ」シリーズなどがある。

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