南フランスのビオディナミ農法 220haで22年間実践し続けるドメーヌ・カズ

雨の多い土地でビオディナミ農法を実践するには大変な労力が要る。だからフランスのビオディナミ実践農家のブドウ畑はとても狭い。一方、灌漑地でブドウを栽培するニューワールドでは100ha単位でビオディナミ農法に取り組むことができる。

「ロワールのブドウ畑では、湿気の多い年にミルデュー(ベト病)からブドウを守るために膨大な人手がかかる。わずか1haの広さだって完全に防除するのは難しい。だからビオディナミの畑は小規模にならざるを得ない。その点、ブドウ生育期の降水量はほんのわずかで、常に乾燥した風の吹いているルーションは、理想的なブドウ栽培環境である。おかげでドメーヌ・カズは、220haもの広大な畑で、1997年以来22年間にわたってビオディナミ農法を続けることができた」と、ドメーヌ4代目のエマニュエル・カズは語る。6月27日の南フランス・ペルピニャンは、朝から気温がぐんぐん上がり、日中のブドウ畑は37℃を超えていた。

ドメーヌ・カズは南フランス・ルーションのリヴザルトにある。スペインと国境を接するフランス・ルーション地方は、三方を山に囲まれ、西側が地中海に面している。スペイン北東部のバルセロナやジローナとおなじカタルーニャ文化圏に属し、人々はフレンチ・カタランのアイデンティティに誇りをもち、独自の文化を築き上げている。ただスパニッシュ・カタランがカタラン語を復活し、独立に向けて騒動を繰り広げているのとは対照的に、ここではフランス語を常用し、若い世代はすでにカタランの言語が分からなくなっているという。

ペルピニャンのすぐ北に位置するリヴザルトは、古くからヴァン・ドゥー・ナチュレルの産地として内外にその名を馳せてきたが、ドメーヌ・カズは、ミュスカで造るヴァン・ドゥー・ナチュレルはもとより、ドライワインのカノン・デュ・マレシャルの品質の高さで世界に知られるルーション随一のワイナリーである。

クロ・ド・ポリーユの海辺にたつレストラン

1994年からブドウ畑に除草剤、殺虫剤、合成肥料を一切使わない栽培法を採用し、2003年にエコ・セールから有機栽培認証を得ている。また1997年にはビオディナミ農法を採用し、現在はフランス最大のビオディナミワイン生産者でもある。

ルーションは1年のうち310日以上が晴れ、年間降雨量は約500ml、温暖な冬と暑くて乾燥した夏をもつ典型的な地中海性気候の土地柄だ。山から海に向かって吹き下ろす乾燥したトラモンタンの風が地表面の水分を蒸発させるので、うどん粉病やベト病などの害がない。そのかわり近年は旱魃の被害が大きく、ブドウの単位当たり収量は平均25~30hl/haで、年々減少する傾向にある。

 

ドメーヌにビオディナミ農法を導入した先代(3代目)ベルナール・カズは、その経緯を次のように語っている。

「かつての私は化学を信じ、畑に農薬を撒いていた。ある時、畑の土壌分析をして驚いた。畑の土がすっかり活力を失い、ブドウ樹は私の与えた栄養だけで生きていた。その窮地を救ってくれたのはフランソワ・ブーシェだった。1997年、フランソワと私は15haでビオディナミを試したが大失敗に終わった。取り組みの規模が大きすぎて隅々まで目が行き届かないからだと指摘されたけれど、生来、頑固者のわたしは、さらに30haの区画を追加して再びチャレンジした。何とか管理できるようになった頃、息子のエマニュエルが所有畑すべてにビオディナミ農法を広げた。そして10年がかりでようやく土地の潜在力をブドウに伝えることができるようになった」。

土中の微生物が増殖して土がしなやかになり、ブドウ樹は根を深く張るようになった。抵抗力のある健全な樹は、収量を抑えることよって以前よりも早く実を熟させ、秋分の日を待たずに収穫できるようになった。秋分を過ぎるとこの地方には激しい暴風雨がやってくるが、それを自然の力で避けることができた。

 

つづきはWANDS 9月号をご覧ください。
WANDS 9月号は「オーガニックワイン2019」特集、
「WANDS BUYER’S GUIDE ガメイ の本質を探れ!」
「産地徹底レポート シチリア」、その他新連載も始まり情報満載です。
ウォンズのご購入・ご購読はこちらから
紙版とあわせてデジタル版もどうぞご利用ください!

関連記事

ページ上部へ戻る