ガルダ湖畔で生まれるルガーナ  飲み飽きることのない、食卓で真価を発揮する品格ある白ワイン

北イタリア、ミラノとヴェネツィアの中間にあるガルダ湖はイタリア最大の湖だ。その南湖畔に広がる平野と丘陵で造られる優美な白ワインがルガーナで、世界中で高い人気を誇っている。

 

<ルガーナの特徴>

ルガーナは酸とミネラルが堅固なワインで、フレッシュで、味わい深い。華やかな果実のアロマを持つ濃厚なワインではないが、生き生きとした柑橘類のアロマを持つフレッシュなワインだ。後口に塩っぽさを感じさせるミネラルが心地よく、食欲をそそる。しみじみとした味わいで、飲み飽きることがない。食卓で真価を発揮するワインで、明確な個性を持ち、厳格で、とても品格がある。長期熟成能力が高いことも特徴で、ベースのルガーナでも5年、スペリオーレやリゼルヴァだと10~20年は見事に熟成する。

ルガーナのブドウ畑は2000ヘクタールで、年間生産量は1750万本。生産量はこの10年で倍増していて、その70%が輸出されることからも人気の高さがうかがえる。

<ブドウ品種> 

トゥルビアーナはトレッビアーノ・ディ・ルガーナとも呼ばれ、トレッビアーノ・ディ・ソアーヴェに非常に近い品種で、ヴェルディッキオにも似ているとされるが、独自の明確な個性を持つ。イタリアで広く栽培されているトレッビアーノ・トスカーノとは全く別の品種で、ブドウが成熟しても若々しい緑色のトレッビアーノ・トスカーノに対して、トゥルビアーナは収穫近くになると果皮が茶色っぽくなる。第一アロマはそれほど華やかでなく、どちらかという地味だが、酸とミネラルが強い品種で、独自の旨みがある。生産規則はアロマティックでない他の白ブドウ品種を10%まで使用することを認めていて、少し前まではトゥルビアーナの酸を和らげて、やさしい味わいを持たせるためにシャルドネをブレンドする生産者もいたが、今はほとんどの生産者がトゥルビアーナだけでルガーナを造り、この品種の魅力を引き出している。

 

<テロワール> 

ルガーナの産地はロンバルディアとヴェネトの2州にまたがっていて、ロンバルディア州ブレーシャ県の4村(シルミオーネ、ポッツォレンゴ、デセンツァーノ、ロナート)とヴェネト州の1村(ペスキエーラ・デル・ガルダ)だ。

産地の中心となるのはガルダ湖畔に広がる平野部(標高50-80m)で、ミネラルを多く含む粘土土壌だ。粘土は乾燥するとかたまって硬くなり、雨が降るとやわらかい泥になるので耕作は簡単ではない。また水を吸い込まないので、雨が降ると水たまりができてしまうため、それを避けるために、畑に緩やかな勾配をつけ、畝間に水路を作って、雨が湖の方向に流れて行くように工夫をしている。それにより絵画のように整然とした美しいブドウ畑が緩やかな勾配にそって波打ち、優しく魅力的な風景を生み出している。この粘土土壌こそがルガーナ独特の「塩辛く感じる味わい」を生む。ただ、このあたりはガルダ湖畔ということで観光業が盛んで、ホテルや別荘が多く、ブドウ畑を拡大させるのは簡単ではない。

その南側には標高100-130mの丘陵地帯があり、こちらは丸い小石や砂利の多い典型的氷堆石土壌だ。チャーミングな果実味を持ち、よりヴォリュームを感じさせるルガーナが生まれる。平野部の強いミネラルと酸は感じられないが、親しみ安い味わいだ。

ガルダ湖の北東に連なるドロミティ山塊が寒い北風を防ぎ、大きなガルダ湖が温度差を和らげるので、温暖で安定した地中海的気候で、北イタリアには珍しい檸檬やオリーヴも見られる。午前中はガルダ湖から南の丘陵地帯に向かって風が吹き、午後には丘陵地帯からガルダ湖に向かって風が吹くので、風が通りやすいようにブドウ畑の畝は南北方向に造られている。常に風が吹いているので、ブドウは乾燥し、病害の危険が少なく、じっくりとブドウを成熟させることができる。

このような様々な要素が組み合わさり、ルガーナ独自のテロワールが形成される。

<歴史> 

ガルダ湖南湖畔に広がるルガーナの産地は、昔は沼地が多い深い森に覆われていて、近づきがたい場所だった。15世紀からヴェネツィア共和国が干拓を始め、農地化に取り組んだことにより、穀物畑が増えた。現在私たちが目にする庭園のように美しく、豊かで、居心地がいい風景は長年にわたる人間の努力の産物である。

ただこの地におけるブドウ栽培の歴史は古く、少なくとも青銅器時代に遡り、ペスキエーラ・デル・ガルダの湖上家屋では古いヴィーティス・シルヴェストリスの種子が発見されている。この地に別荘を構えていた古代ローマの著名な詩人ガイウス・ウァレリウス・カトゥルスもワインに言及しているし、東ゴート王国のテオダハド国王の伝説にもワインが登場する。イザベッラ・デステ・ゴンツァーガはガルダ湖に旅した時にシルミオーネにある古代ローマの屋敷の廃墟で「素晴らしいブドウ」食べたと伝えられている。この地の白ワインについての最初の明確な歴史的記録は、アンドレア・バッチの「De naturali vinorum historia(ワインの自然誌)」(1595年)に登場する「とても美味しいトレブラーニ」やオッタヴィオ・ロッシの「ブレーシャの記憶」(1693年)に登場する「屈強で優美な」ワインとなる。20世紀初頭にドン・ジュゼッペ・レノッティが書いた「ポッツォレンゴの歴史と統計について」には「昔は森に覆われていたルガーナは今では肥沃な平野で、そのほとんどにブドウが植えられ、造られる白ワインは品質が最高で、商業においてもとても名声が高い」と記され、すでに高品質白ワイン産地としての名声を確立していたことがわかる。

 

<5つのタイプのルガーナ> 

 ルガーナ

ベースのルガーナは生産量の90%を占める最も重要なワインで、柑橘類、白い花、アーモンドのアロマと軽やかでフレッシュな味わいを持つ。ステンレスタンクでシュールリー熟成という醸造が主流である。酸とミネラルがしっかりしているので、魚料理、生ハム、サラミ、リゾット、パスタなど幅広い料理にマッチする。

ルガーナ・スペリオーレ 

1998年に導入されたルガーナ・スペリオーレは、最低1年熟成させたルガーナで、それによりさらに複雑なワインとなる。アロマが華やかになり、果実(リンゴ、マンダリンオレンジなど)にヘーゼルナッツ、野生のハーブ、葉緑素などが混ざり、トゥルビアーナならではの酸が活気溢れる味わいを保持する。樽熟成をさせる生産者もいるが、その場合は小樽より大樽が主流になりつつある。トマトを使った魚料理、鶏や兎の料理、ラグーを使ったパスタなどに合う。

ルガーナ・リゼルヴァ

さらに熟成期間が延び、最低2年(うち6ヶ月は瓶熟成)となる。香りはより複雑になり、熟した果実(洋梨、パパイア)にスモーク香や火打ち石のニュアンスが混ざる。味わいは包み込むようになめらかで、温かさを感じさせるが、ルガーナならではの強靱な酸とミネラルは健在で、果実の奥に感じられる塩っぽさが実に魅力的。濃厚な魚のスープ、クリームを使った煮込みなどに合う。

ルガーナ・ヴェンデンミア・タルディーヴァ

ルガーナ・ヴェンデンミア・タルディーヴァは10月末から11月初めに遅摘みしたブドウを使って造られるが、収穫後の陰干しは行わないので、甘さは控えめだ。アルザスのヴァンダンジュ・タルディヴやドイツのシュペートレーゼに近い優美なワインだ。食後にこれだけを楽しんでもいいし、熟成させたハードチーズとの相性も抜群だ。

ルガーナ・スプマンテ

爽やかで心地よいシャルマ方式のものと、複雑で品格のある瓶内二次発酵方式がある。泡立ちが繊細で、香ばしく、シトロン、アーモンド、焼きたてのパンの香りを持つ。アペリティフとしても食中酒としても楽しめる。1975年に生産規則に導入され、生産量は少ないが、ルガーナの伝統的ワインだ。

(Isao Miyajima)

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