- 2015-12-16
- Wines, オーストラリア Australia
かつてローズマウントのデンマン・ワイナリーでリザーヴ・ワインメーカーとして活躍していた女性醸造家アツコ・ラドクリフさんが、第二の故郷ともいえるアッパーハンターで自らのワイナリーを立ち上げ、2014 年に初ヴィンテージとなるワインを創り出した。
ワイナリーの名前は敦子さんの旧姓、小林にちなんだ「SMALL FOREST(スモールフォレスト)」。ワインのラベルには、実家の家紋でもあるという紫の藤の花のスケッチが描かれている。今春からこのワインはバイ&カンパニーによって日本市場で紹介されている。
アッパーハンターはシドニーから260Km、車で4時間の内陸部に入ったところにある。ローワーハンターに比べて降雨量は少なく、気温は高い。適度に肥沃で、アルカリ性の粘土質の上をシルトが覆った土壌は主に白葡萄の適地と見られている。
自社畑マートンヴィンヤーズ22.7ha では、以前はシャルドネ、ヴァデーロ(ヴェルデーリョ)、そして黒葡萄ではシラーズ、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランが植栽されていたが、今年カベルネ・ソーヴィニヨンの半分はシャルドネに接ぎ木、さらに来年にはカベルネ・フランもシャルドネに切り替える予定だ。
しかし初ヴィンテージとなる2014 年、アッパーハンターではブッシュファイアーの被害から防ぐためのバック・バーニングと呼ばれる人為的な野焼きの煙により収穫前の葡萄畑にも深刻なダメージが発生した。スモークテイント(煙汚染)の影響は葡萄の状態ではなかなか分からないが、ワインにすると香味にははっきりとして顕れてくる。アツコさんは小さなバッチテストを行って、本来は自分の初ヴィンテージを祝ってくれるはずだったアッパーハンターの葡萄を使っての醸造を断念。急遽、車で5 時間離れた冷涼地オレンジの葡萄を使って仕込むことにした。
この日、披露された2014 年産のワインはChardonnay Orange 2014、Shiraz rose 2014、Shiraz Orange 2014 の3 本。いずれも冷涼地オレンジの特徴を生かし、繊細で引き締まった味わいが心地良い。さらにもう1 本がVerdelho Upper Hunter 2015。 ハンターの白と言えばセミヨンやシャルドネが有名だが、「ヴァデーロは辛口だが香りに甘さがあり、単独でも楽しめる。ボーメが上がっても酸が落ちず、病害にも強い」といった特徴がある。
酸は中ぐらいのレベルだが、白い花やハーブの香り、滑らかで厚みをもった味わいは、和食との相性もよさそうだ。
「果実の風味を前面に生かしつつ、バランスがよくテクスチャーとストラクチャーのあるワインを造りたい」というアツコさん。
2015 年、アッパーハンターの葡萄を使ったシャルドネやシラーズがどのように仕上がるのか。本当のファーストヴィンテージは今年造ったワインから始まるのかも知れない。 (M. Yoshino)
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