- 2020-7-29
- Wines, フランス France, ブルゴーニュ Bourgogne
「ブルゴーニュ・アリゴテ・レ・シャニオ2018」緻密で厚みのあるボディだが、アリゴテならではのフレッシュさが全体をキュッと引き締める。試飲したのはマグナムボトル。
サヴィニー・レ・ボーヌを拠点とするプチネゴス「シャントレーヴ」から、初のドメーヌもの「ブルゴーニュ・アリゴテ・レ・シャニオ2018」がリリースされた。ご存知の読者も多いと思うが、シャントレーヴは日本人女性醸造家の栗山朋子さんと、ご主人でドメーヌ・シモン・ビーズの醸造長を務めるギヨーム・ボット氏の共同事業。2010年が最初のヴィンテージになる。
2017年まではブドウを購入してワインに仕上げるネゴス専業だったが、2018年、ラドワのシャニオという区画に植わるアリゴテの畑を0.17ha入手。いよいよ自社畑からのワイン造りが始まった。
7月中旬、栗山さんはフェイスブックのライヴ配信機能を使い、ブドウ畑の様子を披露。注目すべきはアリゴテの丈の高さだ。これは新梢の先端を切る摘芯作業をしないためで、ブドウの丈に合わせて杭を高さ170cmのものに打ち替えている。伸びた新梢はくるっとまとめて針金に通す。いわゆるルロワ方式である。摘芯は樹勢の調整に行われるが、新梢に傷をつけることが問題。ブドウは自己治癒力を傷口の回復に費やし、病害に対する免疫力の低下につながるという。
また今年からボルドー液の散布を止めたと栗山さん。代わりに発酵させた薬草エキスを使用している(ライブ中の話ではかなり臭うらしい)。さらに牛乳を畑を撒くことで相乗効果が得られる。牛乳は葉から吸収されブドウの栄養になるとともに、ウドン粉病の予防にも効くそうだ。ちなみにここには樹齢100年以上という古木のアリゴテも育つ。
さて、2018年のアリゴテ・レ・シャニオを試飲する。色調は「えっ、これがアリゴテ?」と思うほど深みのあるイエロー。穏やかなレモンや蜂蜜、蜜蝋の香り。口に含むと心地よい酸味がストレートに感じられ、しかし、粘着性のあるテクスチャーが全体の風味を丸く包み込む。アリゴテらしからぬボディの厚みながら、ピュアな酸がつねに背骨を形成。余韻の伸びも素晴らしく、美しいハーモニーが感じられる。2018年は暑い年と聞いていたが、フレッシュさも見事に保たれていた。
ところで、シャントレーヴは今年になってさらに畑を買い増した。オート・コート・ド・ボーヌを中心に、ショレイ・レ・ボーヌとサヴィニー・レ・ボーヌの区画も含めて全部で約4.8ha。以下が現在、シャントレーヴが所有する畑である。
Gamay (Vin de France) 0.15ha
Bourgogne Hautes Côtes de Beaune Blanc 1.48ha
Bourgogne Aligoté Les Chagniot (Ladoix) 0.17ha(2018年入手)
Bourgogne Aligoté (Hautes Côtes de Beaune) 1.38ha
Chorey-Lès-Beaune Rouge Champs Longs 0.21ha
Savigny-Lès-Beaune Blanc Dessus de Montchenevoy 0.15ha
Savigny-Lès-Beaune Rouge Dessus de Montchenevoy 0.7ha
未耕作地(Hautes Côtes de Beaune)0.72ha
前オーナーはオート・コート・ド・ボーヌに住む夫婦で、10haほどのブドウ畑を所有し、半分は自分たちで耕作。もう半分は他の造り手に貸し出していた。法律により、すでに借地契約のある畑が売りに出される場合、借主に買い取りの優先権が与えられる。そのため、半分は元の借主が買い取り、夫婦が耕作していた残りの半分をシャントレーヴで買ったそうだ。
「ビオの畑ではありませんでしたが、とてもよい健康状態でした。今後はビオディナミで栽培していく予定です」と栗山さん。ビオディナミについては従来のフランソワ・ブーシェ式ではなく、植物学者のエリック・ピティオの方法を採用。ディナミザシオンは水の電荷を下げ還元状態にするのが目的で、1時間ではなく20分で十分など、非常に科学的なアプローチのビオディナミという。
年を追うごとに造りの精度を高めるシャントレーヴ。新しい自社畑のワインが日本に上陸するのは少なくとも2年先の話だが、ドメーヌもの第一弾となるアリゴテ・レ・シャニオの質がすこぶる素晴らしかっただけに、その出来を期待せずにはいられない。また一方、ニュイ・サン・ジョルジュ・プルミエ・クリュ・レ・ダモードやシャサーニュ・モンラッシェ・プルミエ・クリュ・レ・モルジョ・ブランなといった、従来のキュヴェのファンもご安心を。シャントレーヴでは引き続き、ネゴス・ビジネスも続けるという。
(Tadayuki Yanagi)
最近のコメント