スティングがトスカーナでバイオダイナミクスで造る「イル・パラジオ」

スティングが妻のトュルーディとともに、トスカーナのイル・パラジオを初めて訪れたのは1999年のことだった。フィレンツェから車で30分ほどのフィリーネ・ヴァルダルノにある広大な敷地には、貴族が栄華を誇った館や、オリーブや葡萄畑や果樹園などがあった。

音楽活動の打ち合わせのために来日したスティングを囲むワインの披露の会で、次のようなエピソードを語った。

「ここを買うと決めたのは、前のオーナーが飲ませてくれた赤ワインが気に入ったからだった。ところが、後でそのワインはバローロだったとわかった。このリベンジをするために、絶対にいいワインを造ると固く決心した」。

その後、カリフォルニアで有名ではないが素晴らしいワインを飲み、そのワインにアラン・ヨークが関わっていることがわかった。南北アメリカをはじめ各国で、バイオダイナミクスのコンサルタントをしている人物だ。スティングの妻トュルーディはヨガのエキスパートで、自身もヨガを実践しているというから、多いに共感したに違いない。すぐさまコンタクトをとり、イル・パラジオをみてもらうことにした。

前オーナーがあまり手入れしいなかったため、5〜6年かけてすべて植樹し直した。醸造コンサルタントはこの地で20年の経験をもつパオロ・カチョーニャへ依頼した。

「人の声は、その人の署名のようなもの。ワインも同じで、この土地の署名、指紋のようなユニークなワインを造りたい」という言葉通り、サンジョヴェーゼを主体とした上品な赤が出来上がっていた。

サンジョヴェーゼ主体のロゼ「ベッペ・ロザート」、ヴェルメンティーノ主体の白「メセージ・イン・ア・ボトル ビアンコ」は未輸入だが、以下の赤4アイテムはすでに日本でも流通している。キアンティ以外はすべてIGT。

自らの有名な曲を命名したフラッグシップの「シスター・ムーン」はじめ、詩的な銘柄名とセンスのよいラベルも目を引く。

Message in A Bottle 2015 サンジョヴェーゼ70%、シラー15%、メルロ15%。醗酵はステンレス。フエンチオークで12か月樽熟成。赤い果実が香るとてもフルーティな素直なタイプで、親しみやすい。

When We Dance Chianti 2013 サンジョヴェーゼ主体+カナイオーロ、コロリーノ。チェリーや梅、グミ、スパイスが香る、落ち着きのある香りで、しっとりとした上品な味わい。こちらも親しみやすい。

Casino delle Vie 2012 サンジョヴェーゼ主体+カナイオーロ、コロリーノなど。赤い果実のエキスがスパイスとともに香り、滑らかな舌触りで、タンニンも細やか。

Sister Moon 2012 サンジョヴェーゼ40%、メルロ30%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%。2日間10℃で低音浸漬。28〜30℃で4〜6日間ステンレスタンクで醗酵ののち、マロラクティックからフレンチオークの新樽で15〜18か月熟成。このキュヴェだけはオークの影響が感じられ、ロースト香やスパイシーさが先立ち、熟した黒い果実の香りも広がく。味わいは強すぎず、丸みやボリューム感はあるが、酸がほどよくバランスを取っている。(Y. Nagoshi)

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