大橋健一MWが解説 第2回「ワイン産業におけるサステナビリティ」マスタークラス

6月20日、メルシャンは「ワイン産業におけるサステナビリティ」マスタークラスを開催し、大橋健一MWが解説した。本テーマのマスタークラスは、昨年に引き続き2回目の開催だ。

「業界は今こそサステナビリティにフォーカスすべき。だが、世界の中でその動きをもっとも感じないのは日本」と、大橋MWは警鐘を鳴らす。日本は水が豊かな国であるが、その反面、水の節約意識━━ひいては、サステナビリティへの意識が低い。海外のワイン産地の多くでは水不足が深刻化し、干ばつあるいは局地的な大雨による洪水などの異常気象が各地で発生している。
これ以上の環境破壊を止めるために、水をはじめとする資源を節約し、CO2排出量を減らすこと。その上で、経営面でも社会・倫理面においても持続可能なワイン産業を発展させていくこと。それが喫緊の課題だ。

大橋MWによるなら、海外の有識者らの間でも「ボトルの重いワインは評価対象から外れる。試飲を拒否する」という動きが広がり、企業がこれからの事業を発展させていくためには、サステナビリティにフォーカスしなければ「非常に厳しい時代」が到来している。かつ、「認証を取っているかどうかの確認も重要。サステナブルな取り組みの実績が確実に明示でき、かつクオリティの良いものを見極めて店頭に置くこと。それが消費者への大きな信頼につながる」と、念を押した。

本セミナーでは、サステナブル経営の模範例として、大橋MWがブランドコンサルタントを務めるシャトー・メルシャンとコンチャ・イ・トロの2社の事例が紹介された。

1)コンチャ・イ・トロ
アメリカの大手スーパーマーケットチェーン、ウォルマートは、サステナブル認証の商品しか扱わないことで知られる。このウォルマートの提携企業として、一番最初に選ばれたのがチリのコンチャ・イ・トロだ。B Corp認証(環境や社会に配慮した公益性の高い企業)、FSC認証(森林認証制度。責任ある森林管理のための原則と基準を満たし、そうした森林からの生産品であることを証明するもの)など、10以上のサステナブル認証を取得している。

 

シャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャー、小林弘憲氏。

2)シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤード(長野)
2021年のG7サミットによって約束され、環境省が推進する「30by30(サーティ・バイ・サーティ)」。2030年までに国土(陸と海)の30%以上を自然環境エリアとして保全し、「ネイチャーポジティブ(自然再興)」をゴールとする目標である。
椀子ヴィンヤードは、その「認定相当」を受けた唯一の畑。100以上の畑ーがノミネートした中で、唯一選出された。
シャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャー、小林弘憲氏は、次のように解説する。
「地球の環境変化にどう取り組んでいくのかという課題は、世界中のジャーナリストからも問われている。椀子ヴィンヤードはじつは、ワイナリー設立時は、何も無いところだった。植物を再生することで、昆虫、鳥、猛禽類、と食物連鎖が戻ってくる。最近は鳶も見かけるようになった。その生態系の回復が、今回の『30by30』で大きく評価された点だと思う」。

椀子ヴィンヤードでは現在、絶滅危惧種の蝶・オオルリシジミの保護プロジェクトにも取り組んでいる。また次世代に繋いでいくサステナビリティとして、隣の塩川小学校と協働し、土地の多くを畑にせず、小学生の野菜栽培、食育のために提供している。そして畑においては、可能な限りオーガニック農法へ転換し、シルバー人材を活用している。

上の事例のほか、シャトー・メルシャンは、各地の畑で環境保全活動に取り組んでいる。山梨県甲州市塩山の天狗沢ヴィンヤードは、2017年に開かれた畑。開墾と同時に生態系の回復のプロジェクトを進め、この5年間で、植物の種類は36種から108種に、蝶の数は13種から30種にまで回復したという。

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