ヴィーニャ・カサ・シルヴァの挑戦 第1回

第1回  マリオ・パブロ・シルヴァCEOに聞く

 

カサ・シルヴァは、私たち家族にとって人生そのものだ。ワインは自然と関わりながら、自然の中で生まれる産物と考えているため、常にテロワールにフォーカスしたワイン造りをしてきた。工業的なワインを造りたくはない。だから、コルチャグア・ヴァレーのアンデスの麓にあるロス・リンゲス畑ではカルメネールを、コルチャグア・コスタのロロル畑ではシラー、シャルドネ、ヴィオニエを、さらに海岸寄りのパレドネス畑ではソーヴィニヨン・ブランなど、その土地に合ったブドウ品種を選んで栽培している。チリ南部のパタゴニアでラゴ・ランコ畑を開拓し、シャルドネとピノ・ノワールを植えたのもひとつの挑戦だ。

 

カサ・シルヴァが特に注力してきたブドウ品種はカルメネールで、ゲノム・プロジェクトを2005年からチリ政府と国内外の大学の協力を得て立ち上げた。目的は、将来カルメネールを世界中に普及させる可能性を探るため、また栽培や醸造技術に生かすためである。タルカ大学が持っていたコレクションやチリ各地から収集した苗木など、特性の異なる70種類のカルメネールで実験した。ロス・リンゲスの畑に植樹して、その特性やDNAなどを調査分析した。葉の色や樹勢など様々だったが、大きく分けると2種類に分類されるとわかった。気候や土壌による違いが大きかったようだ。

 

これらは全て接木をしないで植えている。カルメネールは、ボルドーで台木に接いだらミルランダージュが出てうまくいかなかった。台木との相性が悪かったようだ。ちなみに現在自社畑で栽培している品種はカルメネール30%、カベルネ・ソーヴィニヨン30%、メルロ10%、ソーヴィニヨン・ブラン8%、シャルドネ8%、シラー8%、残りがピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・グリ、プティ・ヴェルド、ゲヴュルツトラミネール、ヴィオニエ、リースリング、サンジョヴェーゼと多彩だ。

 

カサ・シルヴァのフラッグシップ「マイクロ・テロワール・カルメネール」は、コルチャグアの北東端に位置するロス・リンゲス畑のカルメネールだけで造っている。ロス・リンゲスは今年5月28日に原産地呼称(村名DO)が認められた(アパルタ、リカンテン、ロ・アバルカの3か村も同時に認可された)。午後になるとアンデスから冷涼な風が吹き降りてくる。この冷風がなく夜も暑いままだと、水分が蒸発して糖分は上がるが十分に成熟しない。水は多すぎてもダメだが少なすぎてもダメ。グリーンな香りが残ってしまう。

 

カベルネ・ソーヴィニヨンは比較的どこでも育つが、カルメネールは場所を選ぶ品種だ。ペウモ、アパルタ、マルチウエはカルメネールに適した場所でとてもよく熟す。ロス・リンゲスのカルメネールはもっと上品で長期熟成が可能だ。1998年から単独でワインに仕上げているが、だいたいカベルネ・ソーヴィニヨンよりもタンニン量が多い。しかしそのタンニンはソフトだ。また、色が濃く紫色がかっているのが特徴だ。ブドウは熟しすぎると品種の個性が損なわれると考えている。だから、山からの風、海からの風が暑さを緩和してくれるこのロス・リンゲスの立地がカルメネールに最適だと考えている。

 

パタゴニアはサンティアゴから904kmも南に位置している。カサ・シルヴァは自社畑のブドウだけでDOアウストラルのワインを造った。チリのワイナリーでは初めてのことだ。とはいえ、最初は家族の休暇のために購入した土地だった。20年ほど前にポロやロデオのために購入した。馬や牛も飼っている。

そしてまずソーヴィニヨン・ブランとシャルドネを1haずつ植樹して、ピノ・ノワールも植えてみた。4年間はほんの少量を試験醸造しただけだった。ラゴ・ランコのブドウ樹の成長速度は遅く、コルチャグアの半分、つまりコルチャグア1.5年がラゴ・ランコ3年に相当するとわかった。ちょうど3年前に14haの植樹が完了した。ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネを主体にリースリング、ピノ・ノワールという構成だ。丘陵地帯のため霜は回避できるし、ブドウの生育期の降雨量は1,800mmと多いが、火山灰や腐植土、赤みを帯びたトゥルマオ(黒ボク)土壌なので水はけがよく、黴や腐敗などの問題はない。(Y. Nagoshi)

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