“The Farm Voice” NZセントラルオタゴ「リッポン」のニック・ミルズがバイオダイナミクスを語る

セントラルオタゴといっても、ニック・ミルズの「リッポン」は孤立した地域ワナカレイクにある。ブルゴーニュで修業したニックは、この地でバイオダイナミクスを行い、土地の声をワインに反映しようとしてきた。その熱い思いを語った講演をまとめてみた。

 

セントラルオタゴのワナカレイク

ニュージーランドのピノ・ノワールの産地として現在最も注目されているセントラルオタゴの、ワイン生産者協会会長も務めるニック・ミルズは、1992年から5年間スキーのフリースタイルでニュージーランド代表選手だったが、大怪我のためスキー人生を諦め、98年より家業を継ぐことを決心した。

セントラルオタゴでの葡萄栽培が少しずつ増えたのは1980年からで、90年代からようやく花開き始めたのだが、父ロルフ・ミルズはこの地のパイオニアとして1974年から葡萄栽培を始めていた。当時既に50歳で、30種類ほどの品種を一畝ずつ植え、残ったのが6品種。ピノ・ノワールとリースリングが主体で、ゲヴルツトラミネール、ソーヴィニヨン・ブランなど。この土地の可能性を最大に引き出せる、バランスのよいものを選んだという。

ところが、ワイン人生を始めるにあたり、ニックはまず一路ブルゴーニュへ向かった。語学を学び、ワインの専門学校を卒業した後に、ワイナリーで研修をした。4年目で最後となる2002年の1年間は、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティで仕事をした。

 

ニュージーランドのピノ・ノワールの栽培面積は、現在5000haあり、そのうちの1360haがセントラルオタゴにある。ここは世界最南端のワイン産地としても知られ、南緯36度にある。雨量は年間300〜400mmと少なく、ニュージーランドで唯一の内陸性気候のワイン産地だ。

その中に7つのサブ・リージョンがあり、リッポンがあるワナカレイクは最北端に位置する。ワナカレイクは山に近く湖があるため、比較的温暖で穏やかな気候にある。

「ワナカの西側は雨が降り冷涼だが、東は気温が高く乾燥している。日較差があればあるほど、肉付きのよい豊満な葡萄、ワインとなる。ワナカは、ちょうど穏やかでフィネスを感じられ、密度や繊細さのあるワインができる」。

土壌はセントラルオタゴの他の地域と同様に、母岩がシスト=片岩で、これは風化した後に圧縮された堅い岩。畑は丘の斜面にある。

セントラルオタゴのサブ・リージョンについてはこちらを参考に
バイオダイナミクスとは

これがシスト=片岩

これがシスト=片岩

ミルズ家は、100年以上4世代に亘ってこの土地を引き継いできた。

「バイオダイナミクスは、土地と人の絆を強めていくためのものでもある。バイオダイナミクスとは何か、ということを言葉で表現するのは困難ではある。人の個性が様々であるように、土地と人もそれぞれだから」。

「妻、両親、妹2人、弟、4名のフルタイムのスタッフと共に皆でこの農場を守っている」。

ニック・ミルズは、「ワイナリー」と言わず「ファーム」という言葉を使うのが印象的だ。あくまでも、彼の中ではワイン造りは農業だ、と考えているのだろう。

1902年に、曾祖父がここに土地を購入した。総面積180haの孤立した農場だ。馬を使って耕し、総合農業を始めた。自分たちで水を通し、発電もした。家畜を飼い、家畜の肥料もつくった。小麦を育て、小麦を挽き、パンを焼いた。何から何まで、すべてを自分たちで行った。もちろん、堆肥も自分たちでつくってきた。本当の自給自足で、ほぼすべてがその中で賄われ、循環してきた。

だからワインも、この土地のアイデンティティをもったひとつの産物であり、「農場の存在そのもの」なのだという。

以前聞いたことのある「リトライ」のテッド・レモンの話とリンクする。

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