サブゾーン画定で多様化するカバ/DOカバ プロフェッショナルセミナー開催

スペインワインを原産地呼称別で比較すると、日本への輸入で最も大きな割合を占めるのはカバ原産地呼称(D.O.CAVA)で、2021年の輸出量は1074万本(前年比+7.94%)であった。また、カバの海外市場の第5位が日本となっている。D.O.CAVAでは2020年に重要な改定があり、コムタッツ・デ・バルセロナ(カタルーニャ)とバリェ・デル・エブロ(リオハ近辺)、ビニェドス・デ・アルメンドラレッホ、レバンテ地域(正式名未定)の4つの産地が承認され、うち2つには計7つのザブゾーンが承認された。7月5日、カバ原産地呼称統制委員会はプロフェッショナルセミナーを開講し、広報ディレクターのパトリシア・コレイア氏が現行の規定を解説した。

カバで認められているブドウは9品種ある。そのうち土着品種の白ブドウのマカベオ、チャレロ、パレリャーダの3品種がカバの主要品種とされている。ほかに白ブドウでは、シャルドネ、スビラ・バレン(マルバジア)がある。黒ブドウはモナストレル、ピノ・ノワール、ガルナッチャ・ティンタ、トレパットの4つ。トレパットはカタルーニャの土着品種で、主にロゼのカバに使われる。

カバの4つのカテゴリー:
①カバ・デ・グアルダ(熟成9か月以上)
②カバ・デ・グアルダ・スーペリオール・レセルバ(熟成18か月以上)
③カバ・デ・グアルダ・スーペオリール・グラン・レセルバ(熟成30か月以上)
④カバ・デ・グアルダ・スーペオリール・デ・パラヘ・カリフィカード(熟成36か月以上)

セミナーでの報告によると、瓶内の最低熟成期間によって区分されるカバの4つのカテゴリーのうち、2021年に最も成長したのは②③④のカバ・デ・グアルダ・スーペリオールだった。2025年には同カテゴリーは100%オーガニック化が義務付けられるが、「環境保全や世界のニーズに応えるべく、D.O.CAVAにとっても重要なカテゴリー」とコレイア氏。消費者がカテゴリーごとのカバを見つけやすいよう、色分けした品質保証スタンプをボトルに貼って識別する。最高級の④グアルダ・スーペリオ オリール・デ・パラヘ・カリフィカード(熟成36か月以上)に承認されたものは現在、6ワイナリーの10アイテムのみ。

4つの産地とサブゾーン:
A)コムタッツ・デ・バルセロナ
サブゾーン:バイス・ダノイア・フォシュ(面積最大)、セラ・デ・マル、コンカ・デル・ガイア、セラ・デ・プラデス、プラ・デ・ポネント
B)バリェ・デル・エブロ
サブゾーン:アルト・エブロ、バジェ・デル・シエルソ
C)ビニェドス・デ・アルメンドラレッホ
D)レバンテ地域 *名称未定

A)のコムタッツ・デ・バルセロナは95%のカバがここで生産される最大の産地だが、サブゾーン画定により、それぞれの土地ごとの特徴から味わいを吟味できるようになる。

セミナー後半では、イスルンのマネージャー兼ソムリエ菊池貴行氏によるペアリング講座が開かれた。異なるカテゴリーと産地から5種のワインを、イワシやサーモンなどの一品に合わせて試飲。酸や果実味、熟成香の特徴ごとに、菊池氏は各カバと組み合わせる食材と調理法を紹介した。5種のワインのうち2種は内陸のバリェ・デル・エブロ産。日本に流通しているのはほとんどがコムタッツ・デ・バルセロナ産のため珍しいが「内陸のカバは酸がよりやわらかく鮎などの川魚に合う。さらに熟成香のあるタイプには、山菜の出汁煮やパエリアのように出汁が効いたものを」と菊池氏。また品種ごとの特性についても触れ、南のビニェドス・デ・アルメンドラレッホで造られるガルナッチャのロゼは「果実味が豊かで口当たりもクリーミー。地鶏の炭火焼などと。炭の香りのスモーキーさと、ロゼのタンニンで調和が取れる」と紹介。5番目のコムタッツ・デ・バルセロナ産の「ヌリア・クラベロル・オメナヘ・グラン・レセルバ 2014」はチャレロ100%、40か月以上熟成で「チャレロは長期熟成に向くタイプ。熟成香が酸と調和してふくよかになる。おすすめは魚介の香を活かした生のウニ、伊勢海老、鰻の白焼きなど」と解説した。

解説するイスルン(三重県多気郡多気町ホテルヴィソン内)ソムリエの菊池貴行氏。

カバは食前酒のスパークリングとして消費されるシーンが多いが、セミナーでは熟成の長さによって様々な料理との組み合わせが示され、とくに熟成香のしっかりしたものであれば、風味豊かな、時には脂のしっかり乗った魚にも合わせられる食中酒としての実力を見た。品質保証シールによっておおよその熟成の見分けがつきやすくなったことから、より多様に楽しめるお酒として、今後のカバ文化のさらなる発展に期待したい。(N. Miyata)

TOP写真:セミナーで紹介された5種のカバ。ジョゼップ・マサッチ・オーガニック・ブルット(カテゴリー①、産地A)、レジェス・デ・アラゴン・ブルット(カテゴリー②、産地B)、ディオロ・バコ・ブルット・レセルバ(カテゴリー②、産地B、48か月熟成)、プエルタ・パルマ・ブルット・ロゼ(カテゴリー①、産地C)、ヌリア・クラベロル・オメナヘ・グラン・レセルバ(カテゴリー③、産地A)

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