栗山朋子、マイクロ・ネゴス「シャントレーヴ」の6年を振り返る

2010年ヴィンテージから、栗山朋子はブルゴーニュで、シモン・ビーズの醸造長を務める夫のギヨーム・ボットの協力を得ながらワイン造りを続けている。栽培家から葡萄を購入して造る小規模なネゴシアン、マイクロ・ネゴスという形だ。日本への輸入はラック・コーポレーションが行っており、現在市場にある2013年は合計で57樽分を醸造し、2012年の倍ほどの量となった。「シャントレーヴ」ならでは、を追求してきたこの6年を振り返り、その変化を語ってもらった。

 

<白ワインの造り>

常々、自分が飲みたいワイン造りを目指している栗山にとって「白は好きなタイプに迷いがない」。一貫して「若いうちは堅めながら、時と共に少しずつほぐれて花開いていく、芯が一本通った白」を造り続けてきた。フランス語ではドワdroit(まっすぐ)と表現するようだ。

確かにどのキュヴェを試飲しても、キリッとして媚びないニュアンス、あるいはピュアな果実とテンションが感じられる。このスタイルをより確かなものにするために、2013年から新たな試みを始めていた。

以前から、樽熟成中にバトナージュは一切していない。ブルゴーニュでプレマチュア・オキシデーション問題が起こってから、多くの造り手がバトナージュの回数を減らしたり、一切行わなくなったりしており、シャントレーヴでも同様の考え方だ。

更に、発酵前に少量行っていた亜硫酸添加もやめた。「ジュースの段階で酸化させてタンニンを落とし、苦み成分を減らしてしまう」ためだ。ただし、白の場合は亜硫酸ゼロでの醸造は困難だと考えているため、ブレンド時と瓶詰め前には少量使用している。

また、樽出ししてブレンドする際に澱引きはせず、澱ごとタンクに移し熟成を続けるようにした。こうすることで、大きなバトナージュを一度行ったことになり、その後はまた澱との接触が続くため、還元状態になり、果実味がまた一旦引っ込むのだ。近隣の造り手との交流も頻繁に行っているため、どこかでアイデアを得たようだ。善は急げで取り入れると、思い通りの結果が得られた。

毎年のマイナーチェンジで、より理想的なスタイルへと近づいている。

 

<赤の方向性>

一方、赤については好きなピノ・ノワールのタイプはあったが、白とは異なり「ゼロからのスタートだった」という。ギヨームと共に、多くの造り手のワインを味見しながら、着地点を模索してきた。2010年は、ギヨームの経験を参考にしながら造り、2011年には自分の考えも取り入れ始めた。

そして次第に「エネルギーを感じるもの。端正できめ細やかで、決してグラン・ヴァンではなくとも、人として共感できるもの。フランス語でいうエステティックなワイン」に標準を当て始めた。それらの共通点を探すと、亜硫酸が少なく、ミニマル・インターベンションの造りが多いことに気がついた。

 

<醗酵の面白さ>

kuriyama「多くの微生物の中で、酵母が他のすべてを凌駕して糖分を独占していく、醗酵のプロセスが本当に面白い」と、嬉々として語る。

2013年は90%除梗し、亜硫酸は果帽に振りかける程度で、ピジャージュもなにもせず、毎日30ℓだけ液抜きして果帽を濡らしておくと、2日目には醗酵が自然に始まった。スタックしないように、少しずつ葡萄を潰す程度にし、醗酵をゆっくりと進めていった。

朝晩テイスティングすると、果汁が徐々にワインに変わっていく様子が手に取るように感じられる。まるで、子供が元気に成長しているかどうかを確認しているような楽しさだ。

果帽とタンクの底の比重に、随分差が出てくる。果帽の比重が1.0になってはじめてピジャージュを行った。すると、それまで薄いピンク色だった液体が、赤色に一変した。その時の驚きを、今でもギヨームと思い出すという。

実は、2014年からは180度の転換で、100%全房醗酵に変えた。ギヨームが醸造長を務めるシモン・ビーズでは、全房醗酵が普通だ。それでも、どうしても踏み切れなかった。全房醗酵の場合は梗の間に酸素が入る余地が多いにあり、亜硫酸を使用しなければ揮発酸の前駆体である酢酸菌が増えるため、通常ルモンタージュを行う。しかし、亜硫酸も極力少なくしたいし、抽出を促すピジャージュもルモンタージュも行いたくなかったからだ。

しかし、ある友人の赤ワインが栗山の背中を押した。糖分が上がりにくかった2013年の100%除梗と100%全房の赤を、ブラインド試飲させてくれた。すると、前者はそつのないワインだったが、後者はアルコール度数11%abvにも関わらず、明らかにスケールが大きく感激した。

ピュアな果実とフローラルな香り、スケール感、テクスチャー、余韻の長さなど、全房醗酵によって得られるものに魅せられている。

2015年はpHが低く、酵母が働きやすかったため、ストレスフリーな年だと喜んでいた。この年の話は、また次回聞くことにする。

真摯に、純粋に、そして楽しみながら造っている様子が、ワインにもよく表れている。(Y. Nagoshi)

参考:2013年ヴィンテージについてインタビューした記事

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