斬新なるボルドーの顔 その2 Château Recougne Cuvée Carménère シャトー・ルクーニュ キュヴェ・カルメネール

シャトー・ルクーニュは、右岸のポムロールやフロンサックに近いボルドー・シューペリウールに属する地区にある。1930年代は複合農業を営んでいたが、今では100%ブドウ栽培とワイン造りを行なっている。自社畑は100haに及び、栽培している品種はメルロ主体で、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、カルメネール、プティ・ヴェルド、マルベック。その中でも、父グザビエ・ミラドの代からカルメネールの保護に大変熱心で、今ではマルク・ミラド(写真右)がそれを引き継いでいる。

 

この地では、フィロキセラ前の1850年代以前はカルメネールが広く栽培されていたようだ。しかし、より栽培しやすいメルロへ移行してしまった。カルメネールは花ぶるいを起こしやすく収穫量が低い上に、晩熟のため完熟が難しい品種だったからだ。

 

そもそも、父グザビエがブレンドの幅を広げたいと考えて複数品種を2000年から植樹し始めた。中でもカルメネールの出来に注目し、カルメネールの再生事業に乗り出した。サンテミリオンの苗木屋とともに、ボルドーの気候に合ったクローン選抜を行なったのだ。エレガントで、きちんと成熟する苗木を選び、さらに剪定の工夫をしたり、除葉して風通しをよくするなど栽培技術も改良した。

そして、2008年からこのカルメネール100%の「キュヴェ・カルメネール」を造り始めた。製品のラインナップを広げることだけでなく、温暖化で問題になっているアルコール度数の上昇に歯止めをかけるのにも貢献している。

それでも「毎年できが良いわけではありません。2017年は、凍結してしまったから造れなかった」という。これまでの最高傑作は「2008年にもとても良い思い出がありますが、個人的に気に入っているヴィンテージは2016年です」。

 

ところで、カルメネールに最も合うのはどのような土壌なのだろうか?

「カルムネールは温かい土壌に向いています。南斜面で、粘土質で小石混じり、粘土石灰質土壌です」。

山椒のような綺麗な香りが印象的だったと伝えると、とても喜んでいた。

「まさに適切なご意見で、スパイスの香りを感じます。香りが炸裂するとでも言うべきワインで、このワインを飲みながら旅をした気分になります。多彩なアロマパレットと飲み心地の良さを楽しんでいただきたい。ボルドーの力強さではなく、しなやかさ。ストラクチャーが余韻を長くするのではなく、アロマが後味の余韻を長くします」。

 

2014年のシャトー・ルクーニュ キュヴェ・カルメネールは、山椒のようなスパイシーさと赤い果実の上品な香り。しなやかなアタックと柔らかなテクスチャーで、スパイシーだが青さはない。酸もタンニンも程よくバランスして素直。熟成に樽も用いておらず、アルコール度数12%という点も親しみやすさに繋がっている。(Y. Nagoshi)

取材協力:ボルドーワイン委員会

斬新なるボルドーの顔 前置き

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