第160オスピスドボーヌ競売会 2020年12月13日開催(+ブルゴーニュワイン主要国への輸出速報)

第160回、オスピスドボーヌ競売会が12月13日、恒例のボーヌ中央市場で開催された。当初は11月第3日曜日の開催を予定していたが、コートドール県からコロナ感染拡大の恐れが払拭できないとして中止要請が出され、オスピスドボーヌを管理するボーヌ市、ボーヌ市を管轄するコートドール県、オークションを主宰するクリスティズの3者の間で前日の夜までギリギリの調整が行われたが結局中止となった。

その後、ボーヌ市からコロナ禍が一段落するまで先送りすることも止むを得ないとする意見が出される一方、地元ネゴシアンからは、できるだけ早く、マロラクテック発酵が始まる前に落札キュヴェを引き取りたいとする意見などが出され、それらを考慮しつつオスピスドボーヌの理事会が競売参加主要25社にアンケートを行ったところ、3社から2021年1月以降の開催、17社から年内、12月開催を希望する旨の回答を得た。これを元に開催条件を県側と調整した結果、12月13日に、入場者を大幅に制限し、接触距離を十分空け、4時間毎にマスクを代えるなど感染対策に万全を期して開催することになった。

主催者の発表によると、会場で競りに参加したのは80人。これに加えて、電話による参加者42人、クリスティズ競売専用回線による参加者が170人で、従来通り世界20か国から競売への参加があったという。落札の行方については、世界の経済状況が見通せない中で危ぶむ声もあったが、総落札金額は手数料込みで14,333,209ユーロと2018年の記録に続く史上2番目の落札金額となった。特に今回注目を集めたのは、落札額全てが寄付に回される特別慈善キュヴェ(今年はグランクリュ、クロ・ド・ラ・ロッシュ1樽=228リットル)が、匿名中国人によって660,000ユーロで落札されことだ。これまでの最高額は、パリで大規模テロがあった2015年の競売会で、テロ犠牲者援護団体の支援のために落札されたグランクリュ・コルトン・ルナール1樽(228リットル)480,000ユーロで、この記録を大きく上回った。今回は、これに2人の篤志家の120,000ユーロの献金が加わり総額780,000ユーロ(約9800万円)と1樽当たりの落札金額として記録的なものになった。

2020年の高額ロット

2020年の高額ロット

落札額がこのように暴騰したのは特別慈善キュヴェの落札金全てがフランス医療従事者全国連合会(FHF)を通じて、コロナに感染したフランスの医療関係者とその家族の支援ために使われることになったためだ。

競売会に先立って行われた記者会見の発表によると、フランス全土でコロナビールスに感染した医療従事者はこれまでに5,500人を上回り、18人が亡くなった。また、競売会を行っているボーヌ市民病院でも100人以上が感染し、その内の一人の看護師が亡くなっているという。

今回落札された赤ワインは前年比3樽増の計474樽、白ワインは前年比38樽増の計156樽、合計で前年比41樽増の630樽。一樽当たりの平均落札金額は赤ワインが20,321ユーロ(前年比マイナス1.04%)、白ワインが25,797ユーロ(前年比マイナス4.5%)。一般のキュヴェは前年に比べやや下がったが、バタール・モンラッシェ、絵シェゾー、コルトン、マジ・シャンベルタンなど7つのグランクリュとムルソー・プルミエクリュ・ジュヌヴリエールなど8つのキュヴェの落札価格は過去最高となった。

1986〜2019年までの取引価格

今回の競売会でもボーヌのネゴシアン、アルベール・ビショが、慈善特別キュヴェを含む計98樽、金額にして2,974,000ユーロ、全落札金額の22%を落札し存在感を示した。

今年の特別慈善キュヴェ、グランクリュ、クロ・ド・ラ・ロッシュはロワール・シャンボール城に付属する5400haの広大な森に育った樹齢250年を超す樫の木を使い、ブルゴーニュ、ラドワ・セリニー村の樽工場、カデュスで特別に製作された樽で熟成されている。

1851年から開催されているオスピスドボーヌの競売会は第2次大戦中の1939年から1942年に中止になったほか、戦後も1956年と1968年に天候被害で十分な収穫が得られず中止になっている。この時は、いずれも、翌年、郵送書面による入札が行われた。

 

ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)はこのほど、2019年1月~9月の国別輸出量をまとめ発表した。

総輸出量は6238万本で前年同期比マイナス3.9%。金額で同マイナス9.3%、6億8700万ユーロ。国別では、トランプ政権の25%報復関税により、首位米国向けがマイナス21%と大きく落ち込んだ。一方、2位の英国、2位カナダ向けは大幅に増加。日本向けは561万本で、前年同期比4.5%のマイナス。日本はカナダに次ぐ第4位の輸出相手国だが、金額ではカナダを大きく上回り、英国に次いで3位の輸出相手国になっている。

対日輸出を項目別にみると、赤ではAOCブルゴーニュが数量で8.2%、金額で5.5%増加している。また、コート・ド・ニュイ、コート・ド・ボーヌのグランクリュが数量で28.6%、金額で3.6%増加している。また、白ではAOCシャブリ、プティシャブリが数量で1.6%、金額で29.4%増加している。また、AOCブルゴーニュ白も数量で44%増加している。

ブルゴーニュ輸出状況
数量1000本 金額1000ユーロ
2000年
1月~9月
前年同期比(%) 2000年
1月~9月
前年同期比(%)
合計 62,380 -3.9 687,075 -9.3
米国 11,229 -21 128,548 -28.9
英国 11,128 11.6 101,832 1.3
カナダ 6,214 8 45,581 7.7
日本 5,613 -4.5 82,573 -6.4
ベルギー 5,213 -1.8 30,015 1.2
スエーデン 4,652 17.1 25,171 9.7
オランダ 3,009 28.3 17,876 21.6
デンマーク 1,993 15.7 21,499 21.1
ドイツ 1,965 -26.4 19,208 -13.6
スイス 1,232 2.5 37,475 8.2
中国 965 -41.3 15,286 -28.7
オーストラリア 927 -30.4 11,693 -21.1
香港 786 -10.4 42,898 -11.6
アイルランド 675 31.6 3,915 16.1
韓国 650 20.3 10,591 23.8
イスラエル 481 35.3 4,253 49.8
イタリー 460 -11.2 7,868 -8.0
台湾 459 -6.3 19,202 6.7
シンガポール 308 -19.4 11,123 -10.6
ブラジル 304 6.1 2,760 6.1
リトアニア 293 44.5 2,038 26.4
スペイン 250 -29.4 4,075 -28.8
フィンランド 244 40 1,559 16.8
ラトビア 238 30.5 2,086 36.5
アラブ首長国連邦 228 -43.4 2,728 -55.4
ポーランド 219 12.9 1,877 45.4
リュクセンブルク 207 9.9 3,483 19.4
モロッコ 191 100.7 1,130 44.4
チェコ 190 62.7 1,483 12.7

 

2020年のブルゴーニュは、春先から暖かく、好天に恵まれたため発芽、開花、収穫共に記録的に早く、クレマンの一部の収穫は8月上旬に始まった。夏に干ばつの影響があったが、開花が順調で、春の霜害、夏の雹害、病害虫の被害も少なく、収穫量は155万hlの見込みで、少収穫だった前年の122万hlだけでなく、過去5年の平年収穫量を上回る見込み。

シャブリ、ボーヌ、マコンに建設予定の「ラ・シテ・デ・ヴァン・エ・デ・クリマ・ド・ブルゴーニュ」は2022年春のオープンを目指して、いよいよ来年早々から建設に着手する。

(Paris/ Toshio Matsuura)

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