- 2021-2-8
- Beer
今、代官山のスプリングバレーブルワリー東京(SVB)で、この冬限定のバーレーワインが楽しめる。ワインのようでワインでないビール。SVB初のバーレーワインについて、醸造を担当したヘッドブリュワーの古川淳一さんに話を聞いた。
ちなみに、数量限定なのだが今のところ3月までは確実に飲んでいただけそうだという。
ビール通ならご存知だろう。バーレーワインはワインではなく、れっきとしたビールである。でも、なぜ「麦のワイン」と命名されたのだろうか。
「一般的には、イギリス発祥とされています」と古川さん。寒くてブドウ栽培が困難なためワインが造れない地域で、麦を使いワインと同程度のアルコール度数のビールを造ったのが始まり、という説が強いようだ。
そして現在、ブルワーズ・アソシエーション(米国ブルワーズ協会)が出しているビアスタイルガイドラインによれば、2つの系統に分かれているという。
*イギリス系バーレーワイン:伝統的なスタイル。モルトや酵母の醸すフルーティな香りが特徴。
*アメリカ系バーレーワイン:アメリカの近年のクラフトビールの流れを汲んだスタイル。ホップが多めで香りが華やか。
そして、このどちらにも共通するのがアルコール度数の高さで、およそ8%以上ある。
この、アルコール度数の高い点が「技術的なポイント」なのだという。確かに普通のビールは5%前後。だからビール用に選抜された酵母は、途中でスタック(発酵停止)してしまうこともあるそうだ。そんな難しいビールにも関わらず、今回トライしたのには理由がある。
「今までにアルコール度数が高いビールを造ったことは何度かありますが、バーレーワインは初めてです。バーレーワインは、麦芽を通常の何倍も使う贅沢なビールです。だから、この冬にワインのような感覚でゆっくり楽しんでもらえたら、という思いで造りました」。
加えて、技術的な研鑽も兼ねているという。発酵を健全に進めることだけでなく、味わいのバランスを取るのもなかなか難しく、一般的には濃くて苦味・エグミ・雑味が出やすく、重たくなりがちなので、結構飲みにくい味わいになってしまうようだ。
だから古川さんが最もこだわったのは「飲みやすさと味のバランス」。
「リッチな味わいでありながら、バランスよく綺麗な味わいを目指しました。これは、京都でも同じ方針です」。
SVB東京のバーレーワインを、ちょっとお味見。明るいアンバーカラーで、オレンジの果汁や果皮を思わせる華やかな香りで、香ばしさも感じる。まろやかな口当たりで、ほのかな酸と苦味が味わいを引き締める豊かな、ゆったりとした味わい。ほろ苦い後味には金柑のような余韻が残り心地よい。
クラフトビール好きはもちろん、ワイン好きにも勧めたい、深い味わいだ。もしかすると、オレンジワイン好きの人たちにも喜ばれるかもしれない。(Y. Nagoshi)
最近のコメント