- 2016-12-30
- Beer
クラフトビールの先進国である米国では、酸っぱいビールとしてのランビックや、レッド、ブラウンビールという“サワーエール”の人気が高まっている。
WANDS11月号でランビックビールの造り手であるブーン醸造所フランク・ブーン社長の来日セミナーの内容を紹介したが、輸入元の小西酒造は、春季限定商品『BOON BLACK LABEL』『BOON VAT 109』の受注販売を開始した。それぞれ6.4%、750ml、税別1510円、8.3%、375ml、1640円。いずれもグースでベルギー国内においても限定商品となる。
ランビックは、ラガーやエールの製法と異なり、野生酵母を使い、オーク樽の中で自然発酵・熟成させたベルギービール。グースは熟成年数の異なるランビックをブレンドしたビールのこと。
ブーン醸造所の代表銘柄「ブーン・グース」は、1年熟成の若いランビックと2年熟成のランビックをブレンドしている。
ランビックビールはビール用の大きなオーク樽で熟成する。このオーク樽はフーデル(オランダ語でFoeder、フランス語でFoudre)と呼ばれ、最大3年間かけてビールを熟成させることで、ビールに独特の特徴を与える。
『BOON BLACK LABEL』はオーク樽で熟成した1年、2年、3年熟成のランビックビールをブレンドし、2016年に初めて瓶詰めされたグース。今年5月に米国で開催されたWBCで金賞を受賞している。
また、フーデルごとの個性を楽しむことができるのがVATシリーズ。ブーン醸造所には現在175個のフーデルがあり、それぞれに個体番号が付けられている。フーデルの個性は樽材の違いをはじめ、使っている間にできる野生酵母の微生物層が異なることで生まれる。
VATシリーズとして既に発売したフーデルには44番、77番、79番があり、109番は最も新しい商品となる。
『BOON VAT109』は、フーデル109番で2年熟成させたランビックを90%使用し、残り10%は若いランビックをブレンドしている。若いランビックを少しだけ加えるのは、瓶詰後、醸造所から出荷されるまでに、少なくとも6か月間かけて瓶内熟成させ、きれいな泡立ちになるようにするためだ。
それぞれのフーデルには生育履歴がある。フーデル109番について、フランク・ブーン社長は次のように説明する。
「もとは1910年頃にドイツでビールを入れるためにつくられた樽で、1935年からコニャックを貯蔵するために使用された。2009年からブーン醸造所でランビックビール用に使い始めた。フーデルとして使用するに当たり、醸造所内の製樽作業所で樽の内側を削った。このため新樽の風味がする、とても分かりやすいビールに仕上がっている」。
セミナーでは、市販品としては昨年10月に売り切れたVATシリーズ「BOON VAT79」を試飲させてもらった。
古いランビックビールの特徴であるウイスキーのスモーキー感とオーク樽から来るバニラの味わいに、柔らかな酸味が心地よく仕上がっている。
現在、ブーン醸造所にある最も古いフーデルは130年以上前のものだという。樽材は加工される前に少なくとも200年の樹齢が必要となる。「VAT79」は1883年につくられた樽なので、その材料となる木は1683年より前に植えられたもの。気の遠くなるような長い歴史が刻まれていることになる。
ランビックビールはフーデルで最大3年間熟成させる。すべてのフーデルを管理しているフランク・ブーン社長は、ランビックを2年熟成させたところでビールを試飲する。その時にあと1年熟成させるか、グースのブレンドに使うかを決める。その判断はマスターブレンダーとしてのセンスに委ねられている。
ちなみに、1回使い切ったフーデルは、その日のうちにきちんと掃除し、もう1回ランビックビールを入れる。この作業を繰り返し、10~15年に1回は樽の内側を削ることで、付着したカルシウムを除去し、樽を若返らせる。(A.Horiguchi)
画像:フランク・ブーン社長と息子のジョス・ブーン。マスターブレンダーの父の下で、醸造マスターとして毎日ブレンドの修行に明け暮れている
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