冷涼栽培地タスマニアの今を伝える マスタークラスを初開催

↑タスマニア州のウィル・ホッジマン首相、ジェニファー・ドイル、通訳を務めた高橋佳子の各氏 ↑

 ヨーロッパの主要なブドウ産地がすっぱりと入ってしまうほど広大なオーストラリア大陸。その南に位置するタスマニアは総面積68,401㎢、北海道よりわずかに小さい島だ。この地で初めてワイン用ブドウが栽培されたのは1823年。ヴィクトリアや南オーストラリア両州よりも古い歴史を持つが、今日、冷涼ブドウ栽培地のなかでとりわけスパークリングワイン用ブドウの栽培適地として最も熱い注目を集めるようになったのはここ20年ほどのことだ。

タスマニアにおけるブドウ栽培とワイン造りの現状を伝えるべく、タスマニア州政府がこのほど、アカデミー・デュ・ヴァン東京で初めての「タスマニアワインマスタークラス2019」を開催した。セミナーの講師を務めたのは、「Jansz(ジャンツ)」で2008年以来栽培責任者を務めているジェニファー・ドイル女史。

タスマニアでは、西側は降水量が多いものの山稜にさえぎられた東側の降水量は低い。ブドウ栽培地は北東部ランセストンの街を起点としたテイマーリッジとパイパースブルック沿い、および南部ホバート近郊のダーヴェントリバー、コールリバー、ヒューオンの3 か所と、比較的海沿いの一帯に集中している。

これらの地域は概して、穏やかな海洋性気候で、気温は南氷洋からの卓越偏西風によって冷却される。ブドウ生育期にあたる10 月~4月にかけての降雨量は357mm で、長く穏やかなブドウの生育期が続き、良質な酸味を保持しながらゆっくりとした成熟を可能にしている。年間の積算温度はオレゴンやニュージーランドとほぼ同じ。とはいえ、気候条件は近距離でも異なり、マイクロクライメットを反映したブドウが産出されている。

土壌は多様で、堆積岩由来の水はけのよい砂質土壌や砂礫ローム、粘土ローム、肥沃な沖積粘土質などがあるが、ジュラ紀の粗粒玄武岩(ドレライト)の堆積物が世界でもっとも多く分布している。ブドウは一般に北向きの穏やかな斜面に栽培されているが、スパークリングワイン用ブドウは南向き斜面で栽培されることもあるという。

タスマニアのブドウ畑は約2000haで、栽培される主要なブドウ品種はピノ・ノワール41%、シャルドネ18%、ソーヴィニヨン・ブラン17%、ピノ・グリ10%、リースリング8%。全品種を合わせたワイン生産量の35%(特にシャルドネの76%、ピノ・ノワールの45%)がスパークリングワインとして造られ、ほとんどMLFを実施。

「タスマニアでは現在、160の生産者が年間平均88万5000ケースのワインを産出しているが、これはオーストラリアワイン総生産量の0.9%に過ぎない。しかしタスマニア産ブドウのt当たり平均取引価格は2707豪州ドル(約21万6000 円)と、豪州産ブドウ全体の平均価格526ドルより5倍以上高い。また、タスマニア産ワインはオーストラリア国内においてすべて15 豪州ドル以上(オーストラリアワイン全体でみると、15ドル以上のワインのシェアはわずか7%)で販売されており、平均販売価格は22.44 ドル。豪州ワイン全体の平均価格より3倍近く高い。希少なプレミアムワインだ」と、ドイルさんは語っている。

 

JANSZ Vintage Cuvée 2013

北部パイパースリバーのシャルドネ53%、ピノ・ノワール47%を使い、最低でも3年以上瓶熟させてからデゴルジュマン。50%を占めるベースワインは古い500ℓホグスヘッドで8か月熟成。ドザージュは6.4g。シャルドネ由来のレモン風味をもった酸、円いマウスフィールが特徴。1986年創業のジャンツはタスマニアで初めて瓶内二次発酵によるスパークリングを造ったワイナリー。現在はヤルンバの一員で、ここでつくられるスパークリングワインは“Méthode Tasmanoise”と呼ばれている。

 

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