華麗なる「ラ・トランスミッション」 シャンパーニュのリーダー的存在9名が結成

2016年に、シャンパーニュで「ラ・トランスミッション」と呼ばれるグループが結成された。それは、シャンパーニュの北から南まで、規模の大きさも拠点も異なる生産者の女性たち9名によるものだ。シャンパーニュの未来へ向けて、ともに手を携えて活動を継続していくという。

 

<9人のメンバー>

「ラ・トランスミッション」のメンバー9名は、以下の女性たち。メゾンあり、レコルタンあり、年齢も様々で仕事の範囲も異なると想像されるが、きっと何らかのインスピレーションによって、磁石に引き寄せられるように自然に集まったのだろう。

シャンパーニュ ボワゼルで2018年までC.E.Oを務めた、エヴリーヌ・ボワゼル

シャンパーニュ クロード・カザルスのオーナー、デルフィーヌ・カザルス

シャンパーニュ ドラピエの共同オーナー、シャルリーヌ・ドラピエ

シャンパーニュ フィリップ・ゴネの共同オーナー、シャンタル・ゴネ

シャンパーニュ クリュッグのC.E.O、マギー・エンリケス

シャンパーニュ A.R. ルノーブルの共同オーナー、アンヌ・マラサーニュ

シャンパーニュ ブルーノ・パイヤールの共同オーナー、アリス・パイヤール

シャンパーニュ テタンジェの共同オーナー、ヴィタリー・テタンジェ

シャンパーニュ タルランの共同オーナー、メラニー・タルラン

 

 

<ラ・トランスミッションの始まり、活動、ゴール>

27年前、醸造経験もない状態で父の仕事を引き継ぐことになったA.R. ルノーブルのアンヌ・マラサーニュさんは、「常々女性のグループを作りたいと思い続け、5年ほど前に(シャンパーニュ クリュッグのC.E.O)マギー(・エンリケスさん)に話をしたことが、このラ・トランスミッションが始まるきっかけになりました」と言う。バックグラウンドも年齢も異なりながらその多様性を大切にし、しかしエゴを戦わせることも比べることもなく、シャンパーニュの未来をともに考え、互いに切磋琢磨しサポートし合っていきたい。「ラ・トランスミッション」と言う名前は「伝達」「送信」を意味し、伝えていくことが大切である、との考えから生まれた。

 

アリス・パイヤールさんは、「このグループの活動がシャンパーニュにもたらしたものは、ひとつの共通認識です。この地方に対する敬愛。そもそも、姉妹愛がベースになっているグループで、人間らしさを大切にしています。シャンパーニュの背後に、どのような人が関わっているのかを感じてもらえると嬉しいです。自分たちの視野を広げるためのグループでもあります。多様性も大切です。多様性があるからこそ、人間味にスポットを当てられるわけですし、それもシャンパーニュの魅力といえます」と言う。

 

シャンタル・ゴネさんは、活動の例を説明した。「シャンパーニュのテイスティングにおよび腰になる人がまだ多いように感じますが、様々なイベントを行い、気軽にボトルを開けるきっかけにしてほしいと思います。好奇心を刺激して、シャンパーニュを楽しんでほしい。オンラインでの各国とのイベントでは、自分のシャンパーニュだけでなく、他社のものを紹介するようにしています。そうすると、視点を変えることができるから面白いですね。それから、使うグラスの形状によって、大きく香りや味わいに影響することも伝えています」。

 

この「ラ・トランスミッション」のゴールについて、エヴリーヌ・ボワゼルさんはこう言及した。「まず、私たちが大切にしている価値を皆さんに伝えることです。それは、品質の高さであり、情熱。例えば、畑やテロワールの追求にどれだけ手間暇をかけているかということ。そして、シャンパーニュの歴史や人の営みを伝えることです。さらに、シャンパーニュの将来にコミットすることです。これまで数年間も団結して活動してきましたが、これからも継続していきます。この仕事への誇り、そして豊かでエネルギーと多様性に溢れたシャンパーニュを若い世代に伝えていきたいと考えています」。

 

<シャンパーニュの未来について>

未来を考える上で、畑や気候変動についてメラニー・タルランさんは言う。「森林、川、生物多様性を守ることが大切です。ブドウ栽培も機械に頼りすぎないこと。土の中の微生物、ミミズや菌類の理解も必要です。私は、ヴィニュロン・リサーチャーとして開花の時期はとくに忙しくしていますが、例えば、接木していないシャルドネにプティ・メリエやアルバンヌを受粉させています。昔からこの地方に存在している品種と国際品種を掛け合わせて新しい品種ができないかと考えてのことです。時間はかかりますけれどね」。

 

シャルリーヌ・ドラピエさんも、畑や気候変動について説明した。「今年の4月第2週は霜で大変でした。その前が暖かかったので、芽吹きが始まっていたからです。また、シャンパーニュ地方全体でここ20年間、より良い栽培に関して取り組みを継続しています。そして、サステイナブルやオーガニックなど、今急速に広まっています。うちでは、30haはオーガニックにしましたが、今後どのように規模を拡大するかを課題としています。一方で、有機認証がすべてではない、とも考えています。養蜂も好影響。新たな品種の選択も重要。(栽培の向上と)気候変動で多少ポジティブなのは、ドザージュ量を減らすことが可能になったことでしょうか。うちではゼロになりましたが、どこも醸造の現場でのカーボンフットプリント減少に努めています」。

 

ヴィタリー・テタンジェさんは、シャンパーニュの常識が今後変化するのではないかと語った。「お祝いの時だけではなく、ヴィジョンを広げて一歩踏み出して日常生活で楽しんでほしいですね。お庭でのランチや、窓から外の風景を眺めながらなど、気持ちを自由に解き放って。シャンパーニュを飲むときのたったひとつのルールは、楽しむこと。そして、シャンパーニュもワインのひとつなので、お料理と楽しむ人が増えるのではないでしょうか」。

デルフィーヌ・カザルスさんも、「シャンパーニュは偉大なワイン」だと認識されるようになるはずだと言う。「畑での栽培から瓶詰めされるまで、すべての段階で大変な手間がかかっています。収穫時期を決めるのもとても大切ですし、ベースワインの品質、そしてリザーブワインとブレンドし、世に出るまでにも数年かかります。すべての工程に細心の注意を払ってようやく出来上がるのですから」。

マギー・エンリケスさんは、こう言う。「シャンパーニュは、どのようなオケージョンでも、どんなひと時も素敵な時間になる魔法のような飲み物です。これは、シャンパーニュ地方の多様性の証でもあると思います。大きな白ワイン用のグラスで飲むことをお勧めしますね。そして、お料理と楽しんでいただきたい。シャンパーニュが食卓にあることで、あらゆる体験が楽しくなります。私たちは、ダイナミックにますます強い発信をしていこうと思っています」。

「ラ・トランスミッション」

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