父ミッシェル・シャプティエ渾身の作 セレクション・パーセレールを8代目マチルダが語り継ぐ

M.シャプティエ社が敬意を表するもののひとつが土壌であり地質だ。彼らのその哲学を体現した象徴的なキュヴェがセレクション・パーセレールで、ミッシェル・シャプティエが26歳にして父の跡を継いだ1989年に造り始めた。自社畑の中から選び抜いた単一畑シリーズだ。昨年、後継ぎとしてジェネラル・マネージャーに就任した娘のマチルダが初来日し、4つのキュヴェについて語った。

 

2007年ヴィンテージ

マチルダが披露したのはいずれも2007年ヴィンテージだった。「3月20日頃の芽吹きから開花まで成長が早い暖かい年で、最終的にシラーは開花から120日前後で収穫された」。10年経過したローヌが、これほど若々しいとは想像もしていなかった。

 

エルミタージュ白“ル・メアル”&“ド・ロレ”

エルミタージュ白の単一畑「ル・メアル」と「ド・ロレ」は、距離にして50mほど離れているという。「シャプティエでは、ミッシェルの意向で白にはエレガントなマルサンヌしか使わないと決めている」。ルーサンヌは苦味が出ると考えているからだ。

ル・メアルはエルミタージュの丘の中央上方に位置する南東向き2haの畑で平均樹齢50年以上の古木が植わっている。「砂利や丸石が多く、一番温かい区画でブドウがよく熟す。アロマが高くパワーがあるのが特徴で、最高の熟度を得てその特徴を強調するため、エルミタージュではここを最後に収穫する」。

ド・ロレは、レ・ミュレというクリマの中にある3.5haで、とても古い堆積土壌で小石と砂が多く、こちらは「冷たい」土壌だ。香りはより豊満になり、厚みやボリューム感がありながらフレッシュな酸やほのかな収斂性さえ感じられる、多面的な味わいだ。

どちらも同じように造られ同じ年月を経ているが、前者がふくよかでマンゴーを思わせるのに対し、後者は豊かで酸もしっかりし、個性が明確に異なっていた。さらに熟成させてから飲んでみたいと思わせたが、ゆうに30〜60年置いておけるようだ。

 

エルミタージュ“ル・パヴィヨン”&コート・ロティ“ラ・モルドレ”

 ミッシェルが初めてセレクション・パーセレールとしてリリースしたのが「エルミタージュ“ル・パヴィヨン”」の1989年だった。エルミタージュの丘の西側にある有名なエルミット畑のすぐ下に位置するベサールにある4haだ。古い花崗岩土壌で長方形の水晶が多く含まれており、長寿なワインを創り出す。

凝縮した果実やチョコレート、スパイスなど、熱さをも感じられる厚みのある香りがし、香りは開いているがまだ若々しく、味わいはエレガントだがストラクチャーがしっかりとしていた。平均樹齢65年の古木のエキスが丁寧に醸し出された結果の液体だ。

もうひとつの赤ワインは、ローヌの北部から。「コート・ロティは、1950〜60年代は忘れ去られていたが、シャプティエとギガルが復活させた」。1990年が初ヴィンテージとなった「コート・ロティ“ラ・モルドレ”」は、いわゆるコート・ブロンドの端に位置する3haの畑で緑泥岩と鉄分を多く含むミカシスト土壌で構成されている。M.シャプティエ社は単一品種主義でもあるため100%シラーで、こちらも平均樹齢は60年以上の古木だ。

香りはようやく開き始めたところで、エルミタージュよりさらに若々しくフレッシュな香りで、なめらかなアタックで始まり、酸やタンニンは穏やかだが、口の中がギュッと引き締まりエネルギーが感じられる。

どのキュヴェにも共通するのは、生命力あるいは勢いが感じられることだった。M.シャプティエ社が敬意を表するものの残りふたつは、気候と人だと記されている。彼らのワインは天地人によって創り上げられているのだ。

*****おまけの話*****

新作のサン・ペレはマルサンヌ100%

マチルダは、初リリースとなるスパークリングワイン「サン・ペレ エフェルヴェサン”ラ・ミューズ・ド・RW”」も披露した。コルナスに近いローヌ南部にある産地で、生産者は7社のみ、栽培面積はスティルワインも含めて78haだけのとても小さなAOCだ。

しかし「19世紀にはそのスパークリングワインの名声はシャンパーニュよりも高かった。そして各国の王侯貴族や芸術家にも評判だった」。リヒャルト・ワグナーもその一人で、サン・ペレからインスピレーションを得てパルジファルを作曲したと言われているそうだ。だから、ラベルには楽譜が描かれ、ワーグナーに因んだ名前がつけられた。

こちらもマルサンヌ100%で、ダイレクト・プレスし、ステンレスタンクと600ℓの木樽で醗酵し、瓶内二次醗酵と熟成で36ヶ月、ドザージュはしていない。2012年ヴィンテージで、太陽の恵みをたっぷり受けながら爽やかな仕上がりだ。蜂蜜、トースト、マンゴーや金柑を思わせる豊かな香りで、ふっくらしているが酸がフレッシュ。とても心地よい泡だが年間3,000本しか造っていない。日本では数量限定で輸入予定になっている。(Y. Nagoshi)

輸入元:日本リカー

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